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【短文】スージー・リー『せん』の印象

【短文】スージー・リー『せん』の印象

 絵に描かれたスケーターが滑る。

 一本の線が残る。

 そのとき、一本の線を描く(作者の)手自体がスケーターになっている。

 手によって、白い画布の上を滑る。どこまでも自由に、旋回する。

 画家とは、手のダンサー。

 わたしたちは? 地球上の画家。足跡の画家。スケーターはスケートリンクに線を描き、わたしたちは地上に線を描く。

 絵を描くとき、あるいは地上を歩くとき、白い画布の上を気持ち

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【短文】庭の一幕

【短文】庭の一幕

 庭のしずけさ。陽光をたっぷり吸った芝生。よく刈られた芝生が、ときおり吹く風にくすぐったそうに揺れる。ちょうちょが舞い、とんぼが飛び、犬が走り回る。風が吹くと、それらすべてがぐわんぐわんと波のように揺れに揺れる。そういうものを、青空が高いところからのんびりと見守っている。陽光はじりじりと顔を照りつけて暑いぐらいだし、ぼーっとしていると、次から次にとんぼが服にとまるので、なかなか読書に集中できない。

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【短文】編みもの

【短文】編みもの

人生は編みもの?
わたしはわたしの糸を編む。
こつこつと、ちゃくじつに、しっかりと目をこらして。
そうしないと、たいへんなことになっちゃうから。
でも、あれ、いつのまにか、こんがらがってきちゃった。
編み目と編み目の幅がどんどん広くなっちゃって。
気づいたら、調子はずれのテンポ。
糸たちがふぞろいのダンスをはじめちゃった。
このままじゃ、転んじゃうよ。
かってにどこにいくの? 
わたしの糸。
どう

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