マガジンのカバー画像

ニューヨークで考えた

8
ニューヨークの暮らしの中で考えたことなど
運営しているクリエイター

記事一覧

なればなる、ならねばならぬ、何事も?

毎日は金太郎あめのようにどこを切り取っても同じような表情で過ぎていく。そしてそれが普遍に続いていくような気がしてしまうものだけど、日用品が少なくなって、買い出しに行く道すがらなどに、あぁ今ここにある全てのものは少しずつ着実に「無くなる」方向へと向かっているんだなぁ、と当たり前のことにじんとする。 日用品は使ってるから無くなるのは当たり前なんだけど。物だけではなく、人や犬や建物や景色も、みんな永遠にここに存在しているような顔で座っているけれど、ベルトコンベアーの上に乗って少し

気付かずに差別に加担している

つい先日ニューヨークの地下鉄に乗ると、向いの席に座っていた泥酔状態の白人中年男二人組の一人が、なにやらごちゃごちゃともう一人の男に熱く語っていた。語られている側は寝落ちしていて無反応。それに業を煮やしたのか、ごちゃごちゃと語っていた方が、突然大声で、「Don’t fxxk with White Boys, right!?」と怒鳴り始めた。 つまり、白人至上主義的な思想を持った白人男性が、寝ている相棒と語っている体で「白人なめんなよ、ゴラァ!」と怒鳴散らしているというわけだが

アメリカで起きている中絶権問題:格下市民の女性

ずっと前、確か2000年前後に「神様に会いたい」というようなタイトルのNHK番組(うろ覚え)で、色々な信仰を持つ人々が紹介されていた中に、シバ神への信仰を示すため何十年もずっと右手を上にあげたまま暮らしている、というインドのおじさんを見た。 最近再びその方の話がネット記事になっていて、おぉぉぉっ、あの方はまだ右手を挙げておられるのか!となんだか古い友人にばったり再会した時のように嬉しくなった。右手にハイファイブしたい気分。 最初にテレビで観た時点で既に右手のこぶしのあた

自己紹介文「ニューヨークでたまたま出会い過ぎる説」

現在ニューヨークのマンハッタンで暮らしています。とはいえ、華やかな方のマンハッタンではなく、北部ワシントンハイツという超下町的な地域に住んでいます(2021年に映画化されたブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の舞台になっているあそこ)。 アメリカに移住したのは2008年。 ニューヨークにくる以前は、ノースカロライナ州で博士号を取り、バーモント州の大学で就職をして4年、その大学があまりにも沈みかけの船状態で、過労死がちらつく過酷な労働環境だったため、タイタニックか

誰もが等しく世界の中心に

開店を待つ人が店の前に列をなす(少なくともコロナ以前はそうだった)人気の焼き鳥屋がニューヨークの中心地にある。 その前に並んでいると、すぐ後ろに並んだ日本人の女が、並んだ途端から、わざわざ大声で「もう五時なのになんで開いてないのー?あり得なくなーい?」「こんな待たせてまずかったら怒るわ。」「早く入れろって」などなどうるさい。 歩き回って疲れておなかも空いてイライラしているんだろうと寛大な心で気にかけないようにしていたものの、しばらくその宛のない愚痴を聞き続けているうちに、

キャンドルライトでエイミー・ワインハウスを楽しむ絶望と希望の一日

ブルックリンのイーストリバーに面した一角、ウィリアムズバーグというお洒落エリアにあるホテルで、エイミー・ワインハウスを偲ぶキャンドルナイトコンサートがあったので行ってきた。簡単に言うと、エイミー・ワインハウスの歌を無数の蝋燭(の形を模したライト)で飾り付けた会場で演奏するコピーバンドを見るイベントです。 キャンドルナイトシリーズは、クラシック音楽からテイラースウィフトまで様々なジャンルに渡る音楽イベントで、開催場所も大聖堂からヒップなホテル、野外など様々(上の写真もそのイベ

コーフィティビティー、そして雑音の効果について。

ニューヨークのアパートは、ジャックハンマーの音や、クラクションの音、誰かの大声で話す声、オペラの歌声(誰かが部屋で練習している)、すぐそばにある医療センターに出入りする救急車のサイレンなどいつも音にあふれている。 春になるとそこに加わる鳥の鳴き声も、悠長に耳を傾けたくなる長閑なさえずりというよりは、窓のへりにとまり、親の仇!と言わんばかりに叫ぶような声、げ、ちょっと激しすぎやしませんか、と抗議したくなるような猛烈な鳴き声なのです。 というわけで決してしずかではないのに、一

一音の響きで同じところに着地できる私たち

九月からの対面授業再開前に、2020年3月10日以来初めて大学のオフィスへ行ってみると、まるでポンペイ遺跡のように、次のクラスで配布しようとしていたプリント、三学期前の学生の情報カード、名前カードなどなどが机の上に並べられたそのままの姿で埃をかぶり、日に焼けて色褪せていた。 おそらく最後の出勤日に、いつもの如く帰りの電車の時間ぎりぎりになり、慌てて帰宅したような気がするので、仕事中に誰かに突然連れ去られたみたいな状態のままになっており、なんだか事件現場みたいな雰囲気。それに