鰻水

ニューヨークのマンハッタン、ワシントンハイツという超下町在住。大学の先生(子どものトラ…

鰻水

ニューヨークのマンハッタン、ワシントンハイツという超下町在住。大学の先生(子どものトラウマ、情緒行動障害などを中心に)。40代、犬と夫と3人暮らし。好きな食べ物「鰻」と好きな飲み物「水」を合わせて鰻水という筆名です。https://twitter.com/nightowl0422

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「欲しても無駄と思うと欲さなくなる」この思考を変えるには

ジェーン・スーさんと堀井美香さんのポッドキャストOver the Sunが好きで、聴いています。 今週のOver the Sun(エピソード85)で話されていた内容、「人間、欲しても無駄と思うと欲さなくなる」という、あれ、学術的には「Learned helplessness」という概念です。 (ポッドキャストでは、それが様々なハラスメント、DV、洗脳の被害者の思考の根にあることや、仕事や学習の場面で、自分には用意されてないと思うと、欲することさえなくなるという怖さについ

    • 4月1日から居場所を失ったあの時の平手打ち

      日本は卒業式が終わり、新しい生活が始まる前のインターミッション的この季節。ずっと忘れていたけど、この前友人と話していてふと思い出したことがある。それは、高校3年生の3月、志望大学から不合格通知が届いた日のこと。 私は18歳で、北海道のド田舎のその小さな町から出られずに一生を終えることを最も恐れていた。 閉塞感しかないその町はとても息苦しく、後に大阪で出会う人々に羨ましがられることになるのが不思議でたまらないほど、そこは地の果てなれの果て、ダサさとダルさと行き詰まり感をまる

      • かつて存在した暖かい世界を想うミュージカル:Merrily We Roll Along

        Noteからしばらく遠のいていました。みなさんはお元気でしたでしょうか? 毎日優に魂の半分を吸い取る学科長の仕事(授業+研究+サービス諸々の上に追加されている仕事)、今年は、七年ごとに査定の入る免許発行機関としての認定更新準備が始まり、さらにあと三分の一ほど増しで魂を吸い取られているようで、余暇には本を読んだり、物を書きながら考えたりはしていたのですが、ぎゅうぎゅうに物が詰まったクローゼットにもうひとつも物が入らない、または一つを取り出そうとすると雪崩のように全てが転がり出

        • 昨日聞いた言葉  "Be yourself so that the people looking for you can find you." -Arlan Hamilton 大事だね

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        「欲しても無駄と思うと欲さなくなる」この思考を変えるには

        • 4月1日から居場所を失ったあの時の平手打ち

        • かつて存在した暖かい世界を想うミュージカル:Merrily We Roll Along

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          なればなる、ならねばならぬ、何事も?

          毎日は金太郎あめのようにどこを切り取っても同じような表情で過ぎていく。そしてそれが普遍に続いていくような気がしてしまうものだけど、日用品が少なくなって、買い出しに行く道すがらなどに、あぁ今ここにある全てのものは少しずつ着実に「無くなる」方向へと向かっているんだなぁ、と当たり前のことにじんとする。 日用品は使ってるから無くなるのは当たり前なんだけど。物だけではなく、人や犬や建物や景色も、みんな永遠にここに存在しているような顔で座っているけれど、ベルトコンベアーの上に乗って少し

          なればなる、ならねばならぬ、何事も?

          「この世界は良いところ派」に隠された罠のこと

          先日書いた「世界認識」の傾向に関する記事の追記として。 この世界をおおむね良いところと認識しているか、悪いところと認識しているかという思考の傾向が、個人の経験に関係なく、生まれ持ったレンズとして装着されている、という話だった。 このことを考える時に、セットとして考えたい罠があるのだけれど、それを書くと長くなり過ぎるので省いた部分を、ここに。 ざっくり言うと、世界認識が生まれつき決定しているのだとしたら、世界がろくでもないのは、お前の認識のせいだから、不満があるなら己の認

          「この世界は良いところ派」に隠された罠のこと

          この世界は良いところ?悪いところ?

          ニューヨークの地下鉄には、「会話スタイル」と呼ばれる座席の配列がある。 L字型に座席が配列されてあり、3、4人で乗った時に、みんなで会話を楽しめる、というものだ。 ところが、実際は大勢で地下鉄に乗る人ってそう多くない。大抵の場合、他人同士で密着して乗る感じになってしまう。それも横の人の息が頬にかかりそうなほどの距離感で。 そのせいかどうかは知らぬが、この「会話スタイル」は、順次廃車になっていくことが決まった。これからは一列型のみが作られていくそうだ。 そうなると、こん

          この世界は良いところ?悪いところ?

          角田光代「対岸の彼女」: 切なさの後ろから光の指す物語

          感情を誰かに伝えたいと思ったら、私たちは言葉を使って伝えようとするしかないのだけれど、言葉がそもそも感情そのものでは絶対にあり得ないため、プラスチックで木箱を作ろうとするみたいに、持ち合わせの材料と、表現したい物事との間に本質的な隔たりがあって、ただ偽物の木箱が増えていくだけみたいな状況になってしまう。 哀しみや、悲しみ、喜びや、愛しさ、胸がつぶれそうになる辛い感情、どれをとってもその正確な感情というのは、言葉ではどうしてもそっくりそのまま感じたままに伝えるということができ

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          落ちるコップに手を出すな:学科長になってしまいました

          大学の新年度が始まりました=noteの更新が滞る。 2021年の5月に始めたnoteですが、全部で25本しか書いていないので、平均すると月1.5本。それもだいたい書かれているのは長期休み期間中。というわけで、ってどういうわけでもないが、ここからまたペースダウンする予感。 学期中の凝縮された仕事量による疲労が、まるでドーバー海峡を泳いで渡ったとき並みだという話は以前書いた通りなのですが、な・な・なんと、色々の紆余曲折を経て、しかも新学期が既に始まってからのドラマに次ぐドラマの

          落ちるコップに手を出すな:学科長になってしまいました

          一生のうちに覚えられる名前の数

          人が一生のうちに覚えられる名前の数はあらかじめ決まっていて、その限界に達すると、古くて必要のないものを忘れて新しいものを入れていかなければ、全く新しい名前を覚えられないという仕組みになっているんじゃないか、と真剣に思うこの頃。 みなさんはいかがでしょう?新しい名前覚えられますか? 何を隠そうここ4年ほど新しく人の名前を覚えることができずに大変苦労している。とは言え、新しい友人や同僚の名前はさすがに覚えられる。私が全く覚えられなくなってしまったのは学生の名前だ。 ただ、

          一生のうちに覚えられる名前の数

          浮遊する歯、Resilienceー哀しみと共に生きる

          歯ぎしりに関してググっていたら、どうやら90%以上の人間が寝ている間に、自分のあずかり知らぬところで歯ぎしりをしているらしいという情報を目にした。その情報の信ぴょう性は知らないが(歯医者のサイトに載っていたけど)、もし本当だとすれば、おおよそ69億の人々がこの地球上で夜な夜なギシギシと己の歯をミルストーンがごとくこすり合せては粉砕しているということになる。その音を集めて録音したら、ちょっとした建物の解体作業くらいの音量になったりして。 ちなみに歯ぎしりは英語でBruxism

          浮遊する歯、Resilienceー哀しみと共に生きる

          気付かずに差別に加担している

          つい先日ニューヨークの地下鉄に乗ると、向いの席に座っていた泥酔状態の白人中年男二人組の一人が、なにやらごちゃごちゃともう一人の男に熱く語っていた。語られている側は寝落ちしていて無反応。それに業を煮やしたのか、ごちゃごちゃと語っていた方が、突然大声で、「Don’t fxxk with White Boys, right!?」と怒鳴り始めた。 つまり、白人至上主義的な思想を持った白人男性が、寝ている相棒と語っている体で「白人なめんなよ、ゴラァ!」と怒鳴散らしているというわけだが

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          キャンドルライトでエイミー・ワインハウスを楽しむ絶望と希望の一日

          ブルックリンのイーストリバーに面した一角、ウィリアムズバーグというお洒落エリアにあるホテルで、エイミー・ワインハウスを偲ぶキャンドルナイトコンサートがあったので行ってきた。簡単に言うと、エイミー・ワインハウスの歌を無数の蝋燭(の形を模したライト)で飾り付けた会場で演奏するコピーバンドを見るイベントです。 キャンドルナイトシリーズは、クラシック音楽からテイラースウィフトまで様々なジャンルに渡る音楽イベントで、開催場所も大聖堂からヒップなホテル、野外など様々(上の写真もそのイベ

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          グラスの水を飲み干すように命の糧を補給する旅-アイスランドとノルウェー

          アイスランドへ旅したのは3年前。ニューヨークからだと意外に近く、5時間ちょっとで着くので、カリフォルニアに行くよりも近いアイスランド。秘湯の温泉にたっぷり浸かった後に全身マッサージを1時間受けた、に匹敵するかそれ以上の気持ち良さだった(フェイシャルマッサージ、頭皮マッサージなどなど付けても余りある)。 何が気持ち良いって、まず目にはいる色(景色)、そして空気の味(これほど美味しい空気は未だ吸ったことがない)、鳥の声、水の音(滝の音、氷河の溶け込む音、フィヨルドの港に静かに波

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          アメリカで起きている中絶権問題:格下市民の女性

          ずっと前、確か2000年前後に「神様に会いたい」というようなタイトルのNHK番組(うろ覚え)で、色々な信仰を持つ人々が紹介されていた中に、シバ神への信仰を示すため何十年もずっと右手を上にあげたまま暮らしている、というインドのおじさんを見た。 最近再びその方の話がネット記事になっていて、おぉぉぉっ、あの方はまだ右手を挙げておられるのか!となんだか古い友人にばったり再会した時のように嬉しくなった。右手にハイファイブしたい気分。 最初にテレビで観た時点で既に右手のこぶしのあた

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          「自分は偽物(インポスター)だ」と感じたら。

          今でこそ英語を使って生活していますが、もともと英語は得意でも好きでもありませんでした。(今でも特に好きではない。) 小さい頃から英語に触れて育ったわけでもなく、海外旅行や留学の経験もなく、大学受験と大学の英語の授業が終わった途端、英語とはすっかり会うことも話すこともお互いを思い出すこともない昔の知人状態になっていたので、初めて海外で英語を使う機会が訪れた時、askとanswerのどっちが「尋ねる」でどっちが「答える」だったっけかなー?と悩んだくらい。 博士課程への入学

          「自分は偽物(インポスター)だ」と感じたら。