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ふつうの答え

12月23日に、一応のところ今学期の仕事が終了しました。はぁ、辛かった。

とはいえ、終了したのは教える仕事のみで、3週間の冬休み中に遅れを取っている研究の仕事をがつがつと進めなければならないのですが。
今は燃え尽きてしばしの休息中。(2021年の年末に書いています)

学期が始まったころは、まだ半袖で通勤していたのに、気が付けば真冬。ついこないだまで冬だったような気がするのに、いつの間にかまた冬になっているこの感じ。ニューヨークの冬は長い。

学期中も、できる範囲でnoteの更新をしよう!と意気込んでいたにも拘わらず、蓋を開ければ、一度しか書けませんでした。

そうなのです、何を隠そう、私はマルチタスキング(=複数の物事に同時進行で取り組むこと)が大の苦手。情けなくなるほど苦手なのです。

そもそも、アメリカの大学でプロフェッサー(アシスタント・アソシエイト・フル、どのランクであっても)として働くということは、基本的に「研究、教育、サービス」の三本柱をこなしていくことが求められ(その一つ一つの占める比重は、務める大学の研究機関ランキングによって異なり、研究重視の大学では、教えるクラス数は少なく、サービスもそれほど過度に求められない代わり、研究費用を外部から調達したり、求められる論文出版数が多くなったりする)、本職においてもマルチタスキングに次ぐマルチタスキングをこなしながら日々が過ぎて行くわけですが、それでさえも、学期中はどうしたって比重が、教室に行けば20数名の学生がこちらを見て待っている状況である「教育」=授業の準備&成績付けへと、オードリー春日の前髪の分け目並みに寄ってしまいがちになります。

仕事以外にも、人生というのは、食べたり、片づけたり、日用品を買い足したり、身体の衛生管理(つまりシャワーやお風呂がめちゃくちゃ面倒)をしたりと、マルチタスキングに次ぐマルチタスキングで成り立っており、それだけでも息継ぎをせずに25メートルを泳ぎ切った時のような苦しさに満ち満ちている。

そこに、必然ではない限り、もう一つのタスクを加えることって本当に難しい。

なにしろ日々のタスクは、ばくさんのカバンのように(世代がばれる)詰め込むだけ詰め込まれ得るのだし、そのせいで毎日ヘロヘロに疲れてしまうのだから、そこに必要ではないタスクを加えるだけの余裕が存在しないのです。さて、どうしたものか。

 

University of Southern CaliforniaのWendy Wood博士によると、日々の活動の中に新しい何かを加える時、そしてそれを継続させたい時、むしろ意志の力はほぼ無効で、ナイキのコピーライト的に「Just do it!」と意志の力に頼っていては何も起こらないのだとか(私がその良い例)。では、何が有効なのかというと、新しい行動が日々のレパートリーに組み込まれるように(習慣の一部となるように)環境&状況を整えることなのだそうです(引用)。

 

できれば、え?知らぬ間にやってしまっていた!くらいの状況になるように(そんなことあるのか?と半信半疑ではあるが)環境を整えるのが理想的で、車を運転している時のオートパイロットのような感覚で習慣化させるのがポイント。

歯ブラシの横にフロスが置いてあるから、フロスにも手が伸びていつの間にかやっていた、とか、ポケットの中にスマホではなく単語帳が入っていたから、電車の中でついつい単語帳をみていた、とか。私の場合だと、書きかけのnoteの下書きを開けたままパソコンを閉じて寝て、翌朝起きると、まずそれが開かれるという状況になっているから、ちょっと書き足そうとつい書いてしまった、とかそういうことです。これなら習慣化できるかも?

 

ただ問題は、朝起きてすぐ、すでに気になっているメールの返信業務(急を要する&締め切り間近)や、その日の授業の準備の件が頭の中を占拠してしまうため、それを抱えたまま何かを書くというのが難しい。心ここにあらずになってしまう。(こういうことありませんか?)

このマルチタスキング不可能問題。実は、そもそも厳密な意味において、聖徳太子レベルでのマルチタスクというのは不可能だということが分かっています。

例えばテレビを見ながら勉強するとか、テレビを見ながらLINEをするとか、LINEをしながら人の話を聞くとか、授業中に他の授業の課題をするとか、言葉で考え処理しなければいけない複数のタスクを同時にこなすということが、実は人間には不可能で、二つの別々の情報を同時に処理できずに、スイッチをこっちでオン、あっちでオフ、あっちでオン、こっちでオフとやっているだけだというあれです。

私の場合は、あっちでオン、こっちでオフが頭の中でできずに、メール業務や授業の準備に関する思考がずっとオンになってしまうので、別の作業ができない。ちょっと置いといて、が難しい!

ところで、このあっちでオン、こっちでオフをしながらやった仕事は、質が落ちるだけではなく(例えば会議中に書いたメールは6歳児レベルの思考&文章にまで落ちる場合も)、あっちでオン、こっちでオフを繰り返すことが(特に、メール、インスタ、ライン、ニュースサイト、などなどスマホやタブレット上でマルチタスキングをすることが)、集中力や記憶力の低下など、脳に悪影響を与えるという引用研究)。

この脳へのダメージは、一過性のものだと思われてきましたが、複数のアプリやディバイスを使ってマルチタスキングを長時間行っている人のMRIスキャンをすると、前帯状皮質(認知と感情コントロールに関わる場所)の密度が低下していたという報告もあります。(引用研究

 

でも、自分は断然マルチタスキング得意派!逆にマルチタスキングをしてる時の方が仕事がはかどる!という人も結構いますよね。私から見ると羨ましい限りですが。

では実際、そういう自称マルチタスカーの方々が、マルチタスキングをする能力に秀でているのか、ということを調べたスタンフォード大学の研究によれば(本当にああいえばこういう的に研究って存在するのが面白い)、マルチタスキングをしてる時の方が仕事がはかどると答えた人は、一つのタスクにのみ取り掛かるタイプの人よりも、マルチタスキングが上手に出来ないという結果が報告されていました。マルチタスキングをしながら自分の考えをまとめたり、不要な情報を除外したりするのがうまくできず、一つのタスクからもう一つのタスクにスイッチをオン・オフするスピードも遅かった。

また、被験者にマルチタスキングをしながらIQテストを受けてもらった研究では、徹夜後にIQテストを受けたり、またはマリファナを吸いながらIQテストを受けるのと同等にパフォーマンスが落ちたという。

 

というわけで、回りくどい説明の末、たどり着いた結論は、マルチタスキングはできなくて良しとして、ばくさんのカバンに新しい習慣を放り込む状況づくりをしつつ、物事の優先順位を明確にして、自分のできる範囲でやっていくしかない。

 

というごくごく普通すぎる答え。

 

そんな2022年の幕開けです。今年もよろしくお願い致します。