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RenphoのWiFi対応体重/体脂肪率計レビュー

久々の更新になりました。

当方、およそ18年ほど体重と体脂肪率を測定し続けているのですが↓

昨年の秋にRenphoの体重体脂肪率計を購入。当該機種が日本でも購入できるようになったらしいのでレポートします。


●概要

Renpho ES-WBE28は黒でES-BR001は白。2008年6月から使っていたT社の体重体脂肪率計が13年半経って体重計が古くなってきたので2021年の秋に買い換えた。米国での価格は$40-$50くらいであった。

細かいことを言う前に総合的な評価をまとめておくと、まず体重の精度が高い。体脂肪率や体組成については後述するように判断しかねる点があるが、体重データガチ勢なので、それほど重要ではない。本体の使い勝手はとてもよい。アプリは必要充分、かつデータのエクスポートができる。Bluethoothのみの機種と、Bluthooth&Wifiの機種があるが、個人的にはWifi付きモデルの方が便利と思う(後述)。

●使用感

人が乗る部分はガラス製である。グラストップは清潔感がある。防水性もいいし、汚れたら拭くこともできる。いちおう強化ガラスらしいが、物を激しく落としたら割れるかも知れない。なんでもITO(Indium Tin Oxide)コーティングで体脂肪率測定に必要な電気伝導を確保しているようだ。

基本的な使用法だが、ばっと乗るだけ。まず体重が測定される。そのまま待っていると画面に「o…」と表示され、数秒間ほど待って「o」が一番右まで行ったら体脂肪を測定終了。それが済んだら、画面は更新され続けるが降りてかまわない。データはWiFiでクラウドに転送される、またはBluethoothで携帯に転送される。

足の裏が乾燥しすぎていると、「o…」が表示されず体脂肪率が測定されないことがある。その場合、足裏をちょっと濡らしてやらないといけない。湿度の高い日本なら大丈夫だとおもわれるし、入浴後で測定に失敗したことはない。

●使い勝手

測定しているその場では体重とBMI、体脂肪率が表示されるだけで「あとの詳しい値はAppで見てね」と言うことになる。Appの方で適切に設定されていれば、複数人で使っても、体重から誰の測定かを自動判別し各個人のデータに登録される。私は気にしないが、家族や同居人に体重をまじまじと見られたくない人にはよい機能だろう。ただし、体重が前回測定から2kg以上上下に変動してしまった場合「これ誰のかわかんねー」ということになり、BMIと体脂肪はその場では表示されず、体重の測定結果が登録者全員に通知されることになる。これは激しい運動による大量脱水後などにまれに発生する。この場合、Appでこれは自分のデータ、これは自分ではない、と選別することで、無事測定値を自分のデータとして取り込める。もちろん、家族に体重の似通った人が居る場合、より混乱が生じるだろうから、測定時刻の情報を駆使して分別することになる。

WiFi版の機種でない場合、自分の携帯を近くに置かないとデータが取り込めないのだと思う。これはちょっと煩わしいかろう。私は携帯を洗面所に持ち込みたくないし、携帯を持ったまま体重計に乗りたくない。ガラストップに物を落とすリスクも避けたい。これがWiFi版にすべし、という所以である。

●アプリ

専用アプリでは最新の測定データの確認や週・月・年でのトレンド、などが確認できるほか、一日に複数測定がある場合それを個別に見ることもできるし、不要データエントリの削除、範囲選択データの(or 全データの)CSVエクスポートなどもできる。

測定項目については体重・BMI・体脂肪率・その他筋肉量などなどが見られるようになっているが、これはどこの会社の体脂肪率計でも同じだと思うが、所詮、どんなに頑張っても体重と測定されたインピーダンス(抵抗値)というたった2つのデータ年齢・身長をつかってルックアップテーブルから値を得ている程度だろうから、あくまで参考にという感じだろう。たとえば、同じ日に運動して汗をかく前と後で測定すると、明らかに脱水での体重軽減だけの違いだとしても、水分量が増えたり、筋肉量が変わったりとか変なことが起きる。これは測定原理を考えると仕方ないのだと思う。

エクスポートされたデータには日付だけでなく、測定した時間も記録される。データ解析に腕が鳴りますね。

●測定

さて、体重体脂肪率計であるからには、やはり測定が重要である。まずは生の測定データをプロットしてみる。データをCSVで出力してPython + Pandasでプロットしてみる。この状態ではまあそうですねという感じで、よく分からない。もう少し詳しく見てみよう。


●体重測定

普通に使って驚いたのは体重の精度。最小測定単位が0.05kg (=50g)。しかも、間を開けずに二度乗れば必ず同じ数字が出るのである。

以前使っていたT社BF802。やれてきたのか、重心がどこにあるかで読みが変わってくる。いつもジョジョ立ちみたいな格好で、一番軽くなる姿勢を取るチートをしていたのだが、公称の精度は+/-0.2kgで、定期的な校正もしていないのでしかたない。なんだかんだで毎回乗る度に体重・体脂肪ともばらつきがでていた。

【ちなみに測定の正確さには<測定のばらつきに関する「精度」>と<平均値の正確さに関する「確度」>があるが、後者についてはより確度の高いと保証されている体重計が手元にあるわけではないので、評価不能である。まあ、継続的に測って相対変化を見ていればいいので通常は無問題である。】

精度については、多少の合間で何度か乗ることによって一定の評価が可能である。例えば、シャワーを浴びる前と後で測定した値の差を調べてみたものが次の図である。これは2回の測定時刻が1時間以内の時に「入浴」が合ったと判断し、その体重の差を記録した物である。T社の測定では入浴前と後で測定をし、最後に使った100回のデータのみ使用した。

T社のスケールでは測定精度(標準偏差)が0.35kg程度であるため、風呂に入ることによる体重変化がはっきりとは見えなかった。一方、Renphoは測定のばらつきが明らかに少なく、優位性が示される。そもそも毎回の測定に関しては何回乗っても同じ値しか出ないので、残ったばらつきはむしろ風呂に入ることによる体重増減が測定されているとも考えられる。

●体脂肪率測定

さあ体脂肪率が問題だ。生の測定データをじっと睨むと、体重と体脂肪率が妙に似たカーブになっていることに気づく。こういうときは横軸を体重、縦軸を体脂肪率にして相関グラフを出すのがよろしい。結果が下の図になる。

…なんだろうねぇ、これは。このグラフの意味するところは
1) 体脂肪率は0.1%単位で量子化というか丸められているように見える。しかし全部が全部そう、というわけではない。
2) 体脂肪率が0.1%単位になる場合には、体重が決まれば体脂肪率がほぼ一意に決まっているように見える。

体脂肪率が体重で一意に決まるとしてどんな関数で決まるかというと、適当に線形を手でフィットさせるとこんな感じになる。

ここで青が測定値。赤い階段状の線は
fat=(weight*0.247-5.23)
を0.1%単位で丸めたもの、要は線型モデルである。

ここで例えば63kgを基準として体重が増えたとき、それが全部筋肉(α=0)だとして、また25.8%が脂肪(α=0.258)だとして、そして全部が脂肪(α=1)だとしてで引いた線が、それぞれ水色、緑、オレンジである。赤線の線型モデルは体重増加の約1/4が脂肪であると考えているようだ。

このデータは測定屋の目からすれば、2つの物理値に対する測定値として極めて不可解なデータである。たとえば、前述のT社の場合こんな感じになるし↓、通常はデータに不正確さがあるのでこうなるのが普通である。

Renphoの体脂肪率データのように体重と体脂肪がほぼ一意に相関してしまうと言うのは何を意味するのか?ひとつのケースはこのようになる。
(#) 体重と体脂肪率の測定がメチャクチャ正確で、また体重の増減も約25%が脂肪で、残りはそれ以外というモデルから全く外れない。汗をかいても、水を飲んでも、肉を食おうが、ポテチを食おうが、この赤い線から外れない。
↑こんなことは異常である。一般に体脂肪率の測定というのは、インピーダンスだけでは難しいのである。それにこんなに正確なんだったら0.1%で丸める必要が無い。
なので、よりもっともらしいのは、逆向きのケース
(*) 体脂肪率の測定データになんらかの不具合があり、インピーダンス測定のデータは体脂肪率の算出に利用できない。もしくは、不具合がなくても、インピーダンス測定のデータは体脂肪率の算出に利用しない計算法になっている。

もしこれが本当だとすると、インピーダンス測定する意味がないのである。BMI、体脂肪率、体組成、などなど、これらすべてが体重のみで決まってしまう(数学的に言えば自由度が1しかない)。単なる体重計と何が違うの?と言う話になってしまう。

このような疑問をもち、これが故障なのではないか、もしくは算出法にインピーダンス測定の影響が含まれていないのではないか、とサポートに問い合わせたところ(英語での回答の翻訳・要約は当方)

・当社の体重計は生体電気インピーダンス分析(BIA)技術を使用している。弱い電流を体中に流し、体内の水分量を推定、そこから数式を用いて体脂肪を計算する。
・もし足が乾燥しすぎていたら、体脂肪を測定できないかもしれないが、それは皮膚が濡れているかいないかで、体脂肪率の測定が異なるはずであるということは意味しない。
・ユーザーは、長期間同じ状況下で測定された値の相対的な変化に注目することが推奨される。同じ評価システムを継続することで、変化を把握できる可能性が高まる。そのような値の変化は1回の測定の絶対値よりも意味をもつ。

これってほぼ何の新しい情報もふくんでいない、実質のゼロ回答である。

半ば諦めたように思っていて、3週間ほど旅行に行き、その後体重が66kgを越えたところ急に階段状のモデルから外れ始めた。体重が減ったらすぐにもどったが。これは、もっと長期に調べろということなのかどうか…?

というわけで、体脂肪率についてはモヤモヤが残るが、体重の精度は極めて良い。その他、総合的な評価は冒頭に示したとおりである。

以上!

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