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ちょっとした遠距離恋愛。 【短い小説 #4】

あのね。ちょっと考えてみて。

わたしの彼氏が例えば、地底人だったとするじゃん。
そうすると、彼の住んでるところは地底な訳だよね。地底人っていうくらいだから、地上にはそうそう出てこれなくって。やっぱ、陽にあたったら焦げたりするんじゃない? その前に「目が!目がぁ!」とかなったりするんじゃない?
夜? 夜は夜で出てこられない理由があるんでしょ。知らないけど。なんにせよ、地上には出てこれないわけ。地底人だから。

そしたらわたしが地底に会いに行くしかないよね。でもそれ、絶対ムリ。だってだんご虫とかみみずとかいっぱいいそうじゃん。うじゃうじゃいそうじゃん。それはちょっと……いくら大好きな人に会えるって言っても、やっぱり無理だよね。彼のところに辿り着く前に、わたし精神やられちゃうもん。「虫が!虫がぁ!」ってなるもん。

だとするとさ。わたしたちってほぼ会える可能性、ない訳。この地面、地殻隔てたすぐそこにいるはずなのに、会えないわけ。
お互いを思い合ってるのに、どーしたって、会えないわけ。
……うわぁ、めっちゃせつない……

は? じゃあ、そもそもどうやって出会ったんだって?
いやこれ、例え話なんですけど。

なんの例えって……
だからさ、会える会えないってことは、些末な話だっていうことだよ。わたしと地底人の彼氏が会えないからって、それで関係が途切れてるってことにはならないでしょ。あいし合ってないっていう証明にはならないでしょ。

黙ったね。納得した?
……なんであきれるのよ。つっこみどころがありすぎる?

わかった。
じゃあさ、わたしの彼氏が例えば南極料理人だったとするじゃん?
なにそれって、南極料理人知らないの? いや、わたしも詳しくは知らないけど。ちょっと映画で見ただけだから。なんか、南極で料理人の仕事してる人。
そうするとさ、やっぱり会えないわけ。だって向こうがいるのは南極だからね? そんな簡単にいけるところじゃないでしょ? 遠いし。なんか赴任期間も長いんだって。
え? 行こうと思えば行けるし会おうと思えば会える?
無理無理。だって寒いじゃん。わたし寒いのめっっちゃ無理だから。

でも違うの! これ、そういう話じゃないから。
例えばさ、彼氏がそういう南極料理人だったとしたら、そこまで、今みたいに反対しないでしょ。わたしが南極にいる彼を好きだってこと、おかしいって言わないでしょ。ずっとずっと好きでも、変だって言わないでしょ。

それと同じじゃん。同じなんだよ。

わたしからしてみたら、ぶっちゃけこの世もあの世もつながってるし。だって誰だって死ぬし、死んだらもれなくあの世行きだよ?
今彼がいるところと、わたしのいるところは、ちょっと遠いだけ。

ちょっとした、遠距離恋愛だよ。
まあ難しいみたいだよね、遠距離恋愛がうまくいくのって。
でもうまくいこうがいくまいが、好きなんだもん。それだけだから、いつまでも好きでいるってこと、否定しないでほしいんだ。
わたしは大丈夫。今だって、めっちゃ笑ってるでしょ?



おわり


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テレワークという言葉、なんかどんくさいから使いたくないな。と個人的には思っていました。「テレ」な上に「ワーク」って、なんかもう分解したら「どん」なだけじゃなく、胡散もくさいじゃないですか。いやあくまで個人的な感想ですけど。感想っていうか、イメージですけど。
とは言え、現在日本全国的にもう「テレワーク」だから諦めて「テレワーク」と言ってます。

日常には程遠い現在ですが、気持ち的にはできるだけいつも通りに、のどかに過ごしていきたいと思っています。かしこ。

おかしかっていいですか。ありがとうございます。