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マルタという小さな国でありながら、17もの言語話者がいる企業で働いていて学ぶこと。 日本は本当に終わっているのか

みなさん、こんにちは
UnionClipの「しゅーと」です。

地中海に浮かぶ島国「マルタ」で生活しながら月に1回くらいの頻度でヨーロッパを旅行して、そのまま移住できそうな場所はないかな〜なんて探している日々を送っております。

ただ、決して遊んでいるだけではなく、マルタでもしっかりと仕事は仕事でしています。
マルタには、税制の優遇措置からなのか多くの外国籍企業があり、私の所属している企業もスウェーデンに本社のある企業で、1,000人以上で17を超える言語話者、国籍でカウントした事ないですが、優に30を超える国籍の従業員で構成されて、JR東海で働いていた時が日本語話者のみの日本国籍のみであった事を考えると、現在は全く異なる環境で仕事をしています。

そのような環境で働いていると、日本で働いていた時とは異なる学びがあり、20代を過ごす上では非常に刺激的です。この比較は日本で働いていた時の学びがあるからこそ比較ができるわけで、そのような経験ができている事自体も恵まれていることではあります。

では、具体的にどのような学びがあるのか。
最近、私が学んだ中から興味深かったものを一つ紹介しましょう。

多国籍企業での最近の学び

このようなマルチナショナルな企業で働く場合、一番気をつけなければならいのは、あらゆる事象に対するお互いの文化的な価値観の違いを理解し、尊重する事です。同じ日本人でさえ仕事に求めることや仕事への熱量、仕事とプライベートのバランスの比重が異なりますが、これはまだ今までの経験や知識などから概ね推測することができ、日本人とのコミュニケーションはこれらを使うことで円滑に進みます。

しかし、異なる国籍の人とコミュニケーションをとる場合、これまで日本で培ってきた経験や知識から、何を相手が求めているのか推測することは非常に難しく、時にはそれがお互いの関係にヒビを入れることにもなりかねません。

そもそもの国籍の違いによって生じる違いの一つに「ハンドサイン」などがあります。
例えば、人を手招きする際、人差し指を使って人を手招きしたら日本人にとっては失礼に当たりますよね。年齢や役職が上の人に対しては自分の身が危ぶまれるほどの行為でもあったりしますね。
しかし、イタリア人にとっては、役職や年齢が違ったりしても人差し指で人を手招きするのは、そこまで失礼に当たらず、部下が上司に人差し指を使って手招きしたりもします。

このように、生まれ育った国や地域、文化によって職場での人間関係や、業務を円滑に進めるためのコミュニケーション、相手のモチベーションを上げる際などの声かけの仕方などが異なってくる、またそれを理解した上で仕事をしていかなければ自分の評価にも関わるという難しさが、マルチナショナルな企業で働く難しさでもあります。

私は日頃の業務の中で、仕事のパフォーマンスに対する評価と、その評価に対するフィードバックを与えることが多くあります。
この評価とフィードバックというのは、その当人のモチベーションに影響を与えるだけでなく、そのモチベーションの変化によって会社としての全体のパフォーマンスにも影響を与えかねません。

「このくらいまでは言っても大丈夫だろう」、「褒めをベースにした方がいいのか」など、自分の感覚だけを頼りにこれらのフィードバックを与えると、相手の国籍の価値観や文化によっては全く効果を発揮しない、それどころかむしろマイナスの影響を与えることがあるということです。

当然、これらの感覚や価値観というのは国籍だけでなく、個人によっても異なるので、必ずしも「この国籍の人にはこうアプローチする」というのが正しいとは限りませんが、その個人の性格を把握していない段階においては、国籍ごとの価値観や文化を理解しておくことは非常に重要です。

そこで、私がそれらの理解するために使用しているデータをここで紹介します。

データを用いた国際的なマネジメント

その名もThe Culture Factor Groupが提供している「COUNTRY COMPARISON TOOL」というツールになります。

このツールでは、自分が調べたい国を入力すると、国民性のデータがグラフで表示されます。また複数の国を表示させて比較したり、そのデータの詳細がコメントとしても表示されます。
それではどのような情報から、その国民性を読み取っていくのでしょうか。このデータで表示される6つの指標について、実際にブラジル、日本、オランダ、スウェーデンの4つの国を例としてグラフに出しながら紹介していきます。

POWER DISTANCE (階層的な社会)

まず、最初にその国民性、国籍の文化や価値観を理解する上で、指標となるのが、「POWER DISTANCE」です。

このPOWER DISTANCEとは、役職などの「立場」を使ったアプローチをどのくらい受け入れることができるのか、組織はイコールではなく階層的で、権力の分配は役職などに応じた不平等があったとしても受け入れることができるという指標で、数値が高ければ、意思決定や上司からのフィードバックはポジションなどの関係性を用いた方が有効で、数値が低い場合は、仮に役職が異なっていたとしても組織は全員平等で意思決定などの権限は誰にでもあるべきと考える傾向にあるため、ポジションを使ったアプローチは効果を発揮しないということになります。

例に出した4カ国であれば、ブラジル人に対してはポジショントークをした方が効果的である可能性が高く、日本人の場合は、どちらとも言えない、逆にオランダ人やスウェーデン人に対してはフラットな姿勢でアプローチした方が効果的であるということになります。
日本は一見、上下関係などがはっきりと存在するために階層的で権限や権力が不平等であるように思われがちですが、他のアジア圏の国々に比べるとそこまで階層的ではなく、意思決定の際もトップ(権力者)の一言ではなく細かな階層の承認を経て意思決定がされるため、パワーディスタンスがそこまで高くないとされています。逆説的に言うと、上下関係はあるが、一言で意思決定するトップやそのような組織がそこまで多くないとも言えます。

INDIVIDUALISM (個人主義と集団主義)

二つ目は、「INDIVIDUALISM」で、個人主義であるか、集団主義であるかという指標です。
数値が高いと集団的な結びつきを好まず、会社員も相互利益がないとその会社への忠誠を誓わない、利益がないと判断するとすぐに職を変えるということになり、会社側も採用と昇進の基準は関係性ではなく、完全に能力によるものになります。逆に数値が低いと集団的な結びつきを好み、企業でも家族的な結びつきを好むため、忠誠心と引き換えにそのメンバーを守るという状態になるため、能力よりもどの程度「時間」を費やしたかという評価になります。

ですので、アプローチする際は数値が高い場合、例に出した4カ国であればオランダ人やスウェーデン人に対しては、現在の貢献度が「個人」のキャリアなどにどのような影響を与えるのかを説明するのが効果的で、数値が低い場合、ブラジル人に対しては「チーム」の他のメンバーなどへの貢献度や与える影響などを説明するのが効果的です。

ここで意外だったのは、日本人もどちらかというと個人主義であるという点です。私の個人的なステレオタイプで日本人にはチームワークを重視する傾向があると思っていましたが、このようなギャップに気づくというのがマネジメントやアプローチをする際などには重要になります。とはいえ、スコアは62なのでヨーロッパのような完全な個人主義というわけではなく、個人主義と集団主義のハーフといった感じです。

MOTIVATION TOWARDS ACHIEVEMENT AND SUCCESS (競争力)

三つ目は、「MOTIVATION TOWARDS ACHIEVEMENT AND SUCCESS」です。
こちらは仕事などでの成功への欲望の度合いで、競争や成果、成功へのモチベーションがどのくらいあるのかという数値になり、数値が高ければ競争の中での成果や成功を求める、数値が低い場合は、競争よりもコンセンサス志向で安定した自分が望む生活の質が確保されるのであればそれ以上は望まないという指標になります。逆にいうと、ライフワークバランスの確保こそが最も優先されることで、ビジネスの成長や競合他社との競争に勝つことは、ここでは優先されません。

例に出した4カ国だと、ブラジル人は半々、日本人は昇進や昇格、競争への勝利、新たな機会への意欲が高いので、プライズはそれに関するものが良い、逆にオランダ人やスウェーデン人の場合は、昇進や昇格、ビジネスの成長よりも自分の生活が確保される安心感を与える方が良いということになります。

UNCERTAINTY AVOIDANCE (不確実性への対処)

四つ目は「UNCERTAINTY AVOIDANCE」で、未来に起こる不確実な要素をどの程度受け入れることができるのか、不確実な状況を柔軟に受け入れるのではなく、強い信念や制度によって、不確実な状況を回避しようとするかどうか。もっと平たく言うと、既に確立されている制度や信念への「変化」をどの程度受け入れることができるのかという指標になります。

ここでは、数値が高ければ高いほど不確実な状況を好まず、変化も好まない。そのためルールや制度に従うことが優先される。数値が低ければ将来どのような事があろうと、どのような社会、自分自身がどのような状況になろうと流れに身を任せようとする、既存のルールや制度に従うことは重要だと思われないということになります。

ですので、ブラジル人や日本人には、「急な変化やイノベーション」といった「危機感」を与え、現状が変更される可能性があると煽るアプローチも有効となるが、オランダ人には半々、スウェーデン人にはイノベーションなどの現状への「危機感」を与えるアプローチはあまり有効ではないということが分かります。
逆にスウェーデン人には、前例のない変化などへの対応力があるので、新たなシステムや制度の構築をスピード感を持って行える、しかし組織の秩序や精度の高まりは自然に得られません。逆にブラジル人や日本人の場合は、綿密に事前計画を練り、実現可能性が高まった状況でなければ変化が起こりづらくなりますが、組織の秩序や精度の高まりに期待ができます。

LONG TERM ORIENTATION (伝統と未来)

五つ目は、「LONG TERM ORIENTATION」で、長期志向であるか短期志向であるか、また現在と未来に備えた準備と、自分自身の文化との過去をどの程度結びつけるかという指標になります。簡単にいうと「未来的」か「伝統的」かという二択です。

ここでは数値が高いと、将来への備えとして現実的なアプローチを取り、伝統よりも時代にあった教育や行動を好み、長期的で未来的なプロセスを好みます。すごく分かりやすくいうと、個人も企業もお金はすぐに使わず将来のために使おうとするため、「貯金」や「内部留保」します。逆に数値が低い場合は、社会の変化を感じながらも自分たちの伝統を守ることを優先しながら現時点を重要視し、個人も企業もお金はすぐに使います。

ですので、日本人やオランダ人には伝統よりもトレンドを用いた未来的なアプローチを行い、「将来」使える知識や経験、自分の老後や次の世代を意識させたプランニングが有効ですが、ブラジル人には過去の習慣などから伝統的なアプローチを行うことや、すぐに結果が出るような行動への誘導が有効であるということが分かってきます。

INDULGENCE (楽観主義と悲観主義)

そして最後の六つ目は、「INDULGENCE」になります。「楽観的」か「悲観的」か。
これは、自分の欲望や行動に対して社会がどの程度「寛容的」であるか「抑制的」であるかということになり、例えば誰か1人の欲望に任せた身勝手な振る舞いに対して、社会がそれを許そうとするのか、それを許さないのかということになります。

ですので、この数値が高い場合は、自分自身を甘やかしたり欲望のまま行動する事に対して正しいと思い、この数値が低い場合は自分自身を甘やかしたり欲望のまま行動する事が間違っていると感じるようになります。

例に出した4カ国でいうと、スウェーデンやオランダ人に対しては相手の行動に対して抑制しようとするアプローチがあまり有効ではなく、日本人にとってはそのようなアプローチも有効であるということになります。

結局、学び続けるしかない

ここまで六つの項目に分けながら、国籍の違いによる文化や価値観の違い、それらを用いてどのようにマネジメントや評価、フィードバックに活かすのかという点について述べてきましたが、当然これらのデータも100対0になるものではなく、人によって異なるというのは大前提ですが、その人の性格を知らない初対面などの状態においては、有効に活用できるものでもあります。

また、このように比較していくとどの国籍の文化や価値観にも一長一短があり、必ずしもどこかの文化が劣っている、優れているというものでもなければ、自分に合う、合わないというものでもないというのが分かるのではないでしょうか。なので改めて僕は、「日本は終わっている」だったりとか「海外の方が優れている」みたいな言説に本質はないなと思いました。

日本人は個人主義よりもチーム主義であると思っていたり、ここに例に出していませんが韓国人が意外と成功へのモチベーションが高くないなど、自分のこれまで抱いていた各国籍へのステレオタイプと異なる学びが多くあり、現在の企業で働いていた得た最大の学びとしては、「結局、学び続けるしかない」ということでした。

誰しもが自分の思い込みが少なからずあり、様々なソースを活用しながら自分の知識をアップデートする必要がある、そしてそれらをすぐにアウトプットしていく。この繰り返しをしていくことで知識が経験に変わり実践的なものになる。ここのNoteでこれらを書いているのもアウトプットの一環で自分のためでもあります(笑)。

でもいいんです、個人主義なので(笑)
ワガママな記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。

素敵な日々を😊


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