見出し画像

最寄り駅で会った心の恋人

タイトル:(仮)最寄り駅で会った心の恋人

▼登場人物
●日保冷 留夫(ひぼれ とめお):男性。30歳。独身サラリーマン。一目惚れし易い性格。
●夢月妃(むづきひ)リコ:女性。20代。壮絶な過去の持ち主。実は他界しておりこの世に居ない。
●李野聖子(りの せいこ):女性。30代。留夫の理性と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●蹴上(けあげ)駅:留夫がいつも通勤で利用してる都内の駅。ここでリコを見つける。
●某会社:留夫が働いている。都内にある一般的な商社のイメージで。
●On the Rail:都内にあるお洒落なカクテルバー。聖子の行きつけ。
●街中:デート先などこちらも必要ならで一般的なイメージでお願いします。
●リコのアパート:都営アパートのイメージだが架空の建物(ラストの場面では消えてゆく)。

▼アイテム
●Living Together on Rail:聖子が留夫に勧める特製のカクテル。これを飲むと特定の愛する人の全てを受け入れ、その為ならどんな逆境にも耐えられる力を授ける。

NAは日保冷 留夫でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは街中で、誰かに一目惚れした事はありますか?
もしあるのなら、その一目惚れした相手とは
一体どんな人だったのでしょう?
当たり前の事ですが、誰にもそれまでの生い立ちや
生活歴と言うものがあります。
そしてその生活歴の中には、
誰にも言えない秘密も隠されている事が多いもの。
大抵の人はその秘密を踏まえ、あるいは隠したまま、
どこかで恋愛したり、結婚したりするのでしょう。
でもその秘密がもし無視できないもの、
つまり現在にまで影響するものだったなら…。
今回はそんな、街中で誰かに一目惚れしてしまった
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈最寄駅のプラットホーム〉

俺の名前は日保冷 留夫。
毎日この駅を使って通勤している独身サラリーマン。

留夫「…あ、今日も居てくれた、あの人…」

俺には今、一目惚れした人が居る。
いつも通勤に使っているこの駅で会う人。
名前も年齢も分からない、ただ上品で、美しく、
俺のもろタイプの人だった。

留夫「はぁ〜…イイなぁ。あんな人ともし付き合えたら…」

俺は今年で30歳。
もう一目惚れなんかするような歳じゃなかったけど、
でも「恋愛に年齢なんて関係ない」の言葉通り、
俺は彼女をひと目見た途端、本当に心底惚れ込んだのだ。

留夫「あっ…いけない!俺も乗らなきゃ…」

やがてプラットホームに入ってきた電車。
その電車に彼女が乗ったのを確認し、俺もすぐ電車に飛び乗った。

留夫「…ん、あれ?あの人…どこだろう?乗ってなかったのかな?」

同じ車両に乗り込み、その日は乗客もそんなに多くなかったから
一緒に乗ればすぐまた彼女を見られると思ったのに、
辺りを見回してみても、どこにも彼女は居なかった。

ト書き〈数日間〉

それから数日後。

俺はそれまでずっと同じようにこの最寄り駅で、
彼女を遠くから眺めながら一緒に電車に乗り込み、
通勤を続けていた。
でもやっぱり彼女を電車の中で見つける事はできなかった。

不思議な事もあるもんだなぁ…なんて思いつつ
それから更に数日が過ぎていく。

(カクテルバー)

そんなある日の会社帰り。
俺は久しぶりに飲みに行った。
いつも来ていた飲み屋街を歩いていると…

留夫「ん、あれ?新装開店でもしたのかな?」

全く知らないバーがある。
店の名前は『On the Rail』。

なんか電車に関係がある店なのかなぁ…
なんて思ったがそんなふうでもなく、
外観や店内は普通のカクテルバーで、
まぁそこらにあるのと比べればちょっとお洒落な感じ。

とりあえず、少し新しいもの好きだった俺はそこに腰を落ち着け、
いつものようにカウンターで1人飲んでいた。

飲みながら想うのはやっぱりあの人の事。

留夫「はぁ…。あの人、一体どこの誰なんだろう?少しでもあの人の事が分かったらなぁ…」

今時こんな事で悩む奴も珍しいかもしれない。
そうしていると…

聖子「こんばんは♪お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。
見ると結構キレイな人で、どこか落ち着いた感じもある。

別に断る理由もなかったので俺は隣の席をあけ、彼女を迎えた。

暫く談笑しながら軽く自己紹介もし合い、
世間話から日頃の悩みなんかに話題は流れていった。

彼女の名前は李野聖子さん。
都内で恋愛コーチやメンタルヒーラーのような仕事をしていたようで、
その上品さはそこから来るのか、なんて思いながら、
少し不思議な気がした。

何か「昔から自分の事をよく知ってくれていた人?」
のような気がして、そのぶん心が和み、
彼女に対しては余計な体裁を繕わず
心の悩みを包み隠さず、全て吐き出す事ができていた。
又そんな感じだったからか、彼女に対しては恋愛感情が湧かない。
代わりにもっと自分の事を知って欲しい、悩みを解決して欲しい…
そんな思いだけが膨らんでくる。

留夫「ハハwいやお恥ずかしい、こんなこと初対面のあなたに言っちゃうなんてw」

聖子「いえいえ、私も職業柄、そういうお話を聞かせて頂けるのはとっても嬉しいですよ」

留夫「ハハ…。…でも、本当に悩んでるんです。僕、初めてなんですよ。こんな、誰かに一目惚れして、その気持ちがずっと続いて、その相手の事を純粋に愛したい、もっとその人の事をよく知りたい…なんて思ったのは…」

聖子「一目惚れですか、良いですね。私も学生の頃に何度か経験した事ありますよ」

留夫「でも、こんなこと思い続けてたってどうしようもないですよね。学校ならまだしも、街中で一目惚れしたなんて言ったって、そんな恋なんて実る筈もない…」

彼女は真剣に俺の話を聴いてくれた。
俺がどれだけ悩んでいるか…その事を踏まえて、
彼女はアドバイスをしてくれた。

聖子「あなた、確かさっき『蹴上駅』をご利用されてると言ってましたね?そこで彼女を見かけるようになった、と?」

留夫「え、ええ『蹴上駅』は最寄り駅で、そこから通勤してるんです」

聖子「ですよね?実は私もその駅をよく利用してるんですよ」

留夫「え?」

聖子「白状しますが、実は私、あなたの事を少し前から知っていて、あなたがその駅で、彼女をよくチラチラ見てるなぁ…なんて思いながら、あなたの後ろに立ってた事もあるんですよ?まぁそんな感じであなたの事を少し知ってましたから、今こうして声をかけさせて頂いたってのあるんですけど♪」

留夫「…えぇ?それ、本当ですか?」

彼女は前から俺の事を知ってくれていた。
それに、俺が一目惚れしたあの人の事も。

留夫「そうだったんですか…。いや、世間は狭いなんて言いますけど…」

聖子「それにもう1つ本当の所を言えば、あなたが一目惚れしたその相手、彼女の事も私、よく知ってるんです」

留夫「な、何ですって!?」

驚いた。
聖子さんは俺の事だけじゃなく、
俺が一目惚れしたあの彼女の事も知っていた。

聖子「まぁプライバシーの事もありますから、彼女のお名前や年齢なんかは明かせませんけど、彼女、私が都内で開業しているヒーラー教室に来られてる生徒さんで、今、かなり悩みの淵に立たされてるんです」

留夫「え…」

俺が一目惚れした相手の女性には、
誰にも言えない悲惨な過去があったと言う。

まぁ当然ながら、そんな事は何も知らない。
でも彼女の事を少しでも知る事ができ、
俺は何となく嬉しくなった。

でもその嬉しい気持ちはそれだけじゃ済まず、
暴走する形で次のステップへ走り出す。

留夫「あ、あの、聖子さん。その彼女、出来れば僕に紹介して頂く…って事は出来ないでしょうか…」

俺はダメ元で聖子さんにそうお願いしていた。
それだけ彼女を想う気持ちが本気だったのだ。

でも聖子さんは…

聖子「それはできません。さっきも言いましたように彼女は今、非常な悩みの淵に立たされてるんです。ちょっとやそっとの事では、彼女を支える事なんて出来ません。たとえあなたが本気で彼女を愛したとしても、彼女の全てを包容してあげる事はおそらく出来ないと思います」

と冷静にそう言ってきて、
俺の気持ちや想いの全てを否定してきた。

確かにこんな無理なお願いは非常識かと思ったが、
それでも頭から否定された事に腹立たしさを覚え、
「なんであなたにそんな事が分かるんですか!?」
「もしかしたら彼女、僕の事を頼ってくれるかもしれないじゃないですか!」
そんな事を怒鳴るように言って食い下がっていた。

留夫「あなただって人間でしょう?未来の事は分からない筈です。だったら、僕と彼女が上手く行くかどうかなんて、今のあなたに分かる訳ないじゃないですか!それなのに、頭ごなしにそんなこと言ってくるなんて、あなた一体何様?何でも決め付け過ぎじゃないですか?」

俺がそう言っても彼女は姿勢を変えず…

聖子「ええ、確かにあなたの言う通りですが、それでも彼女に会うのはおやめなさい。それだけじゃなく彼女の事を想うのも、近づこうとする事もやめたほうが良いです。…これはあなたの為を思って言ってるんですよ?」

留夫「何が僕の為だ!なんでそんなこと言うんですか!チッ、あ〜あ、あなたなんかに相談するんじゃなかったよ。じゃあ僕はこれで…!」

そう言って席を立ち、俺は店から出て行った。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
俺は又あの駅で彼女に会っていた。
俺の心を大きく揺るがし、長らく眠っていた恋心に火をつけて、
一目惚れまでさせてくれたその彼女。

でもその日、俺達の間に進展があったのだ。

留夫「あっ、危ない」

彼女は疲れていたのか、
プラットホームに蹲るようにして倒れ込んだ。
彼女をずっと見ていた俺はすぐそれに気づき、
彼女の元へ駆け寄って…

留夫「だ、大丈夫ですか!?」

と声をかけた。

リコ「あ、すみません…大丈夫です」

何と言う可愛らしい声。
それに間近で見ると、本当になんて美しい人。
俺は改めて、彼女に心底惚れ込んでしまった。

これをきっかけに、
俺と彼女の関係が少しずつ良いほうへ進んでいった。

彼女の名前は夢月妃リコ。
少し変わった名前だが、
彼女は遠い地方から上京してきたとの事で、
彼女の地元にはこの名前も多いと言う。

それから俺達は喫茶店に寄ったり
レジャースポットに行くようになったりし、
お互いの関係を少しずつ縮めていった。

そんな彼女と一緒に居る度に、
「まるで、デートしてるみたいだ…」
と俺は本当に嬉しかった。

ト書き〈カクテルバー〉

それから数日後の夜、会社帰り。
俺は又1人であのバーへ立ち寄っていた。
すると店内にまた聖子さんが居り、
前に座っていたのと同じ席で飲んでいた。

彼女とはあんなイザコザがあったけど、
今は自分の力でリコとそんな関係にあったのもあり、
少し心に余裕ができて、その勢いで仲直りする為
聖子さんの元に駆け寄った。

聖子「あら?あなたは確か…」

留夫「日保冷です。あの夜、あなたにここでお会いしていた…」

聖子「ああ、そうでしたわね♪この前はどうもすみませんでした。あなたを怒らせる気はなかったんですが」

留夫「いえ、僕のほうこそ本当にすみませんでした」

そんな感じでそれでも彼女は俺の事を歓待してくれ、
笑顔で又いろいろ喋ってくれた。

そしてこのとき俺は、あのリコさんとの関係の事も彼女に伝えた。

聖子「そうだったんですか」

留夫「ええ。あれからちょくちょく、いろんな所へ行くようになりました。彼女、とっても優しくて朗らかで、本当にあんな形でしたが、出会うきっかけがあって良かったなぁって今思えるんです。それに彼女、あなたが言うような…そんな暗い過去に苛まれてるところは1つもありませんでしたよ?僕達、そのうち将来を約束できる仲になれるかもしれないんですよ」

俺はあれからこれまでの事をそのまま言った。

でも聖子さんはそれでも浮かない顔をしつつ、
少し考えるような素振りをしながら聴いていた。

でも、ここまでくれば俺と彼女の事を応援してくれる気になったのか。
それから聖子さんは姿勢を変えて、指をパチンと鳴らした後
一杯のカクテルをオーダーし、それを俺に勧めて祝杯代わりにこう言った。

聖子「彼女との関係が上手くいってる事、それは私も嬉しく思います。ですが前にもお話しした通り、彼女はまだその身に大変な過去を背負っているんです。その彼女の全てをなんとか包容できるように、あなたの新しい門出を私にもお祝いさせて頂ければ。そう思ってこちらをお勧めします」

聖子「これは私がこの店で作って貰った特製のカクテルで、名前を『Living Together on Rail』と言い、どんな人に対してもその愛を素直に表現できて、その相手の事を包容してあげられる…そんな効果を秘めたカクテルです。まぁ景気づけと思って、どうぞお飲み下さい。そちらは私の奢りですから」

聖子さん…彼女はやっぱり初めて会った時に感じた、どこか不思議なオーラを持っている。

全く信じられない事でも、彼女に言われると信じてしまう。
その気にさせられ、勧められたそのカクテルを
その場で一気に飲み干していた。

そして聖子さんはまた俺に嬉しい事を言ってくれた。

聖子「もう付き合ってらっしゃるのでしたら、プライバシーを隠す必要もありませんよね」

そう言って彼女は、リコが今住んでるアパートの住所や
これまでの彼女の生い立ちなんかを少し教えてくれた。

まぁリコはそのうち俺を
自分の家に招待してくれる事になっていたから、
それを伝えた上で、聖子さんも俺達が明るい未来へ歩いて行けるよう
応援する気で教えてくれたんだろう。

ト書き〈リコの部屋からオチ〉

そして数日後。
俺はリコのアパートの部屋に来る事ができた。
リコが俺を自分の部屋に入れるという事は、
俺を将来の夫として認めたと言う事。

そこで俺はリコと初めて結ばれる事になり、
本当に夫婦になる事を約束した上で
明るい俺達だけの未来へ歩いて行くつもりだった。

でも部屋に入ると電気が消えており、
点けようとした俺をリコは引き留め、
俺に背を向けたままグルンと顔だけがこちらを向いて
リコは俺にこう言った。

リコ「ようこそ…私のアンダーワールドへ…これであなたも私の世界へ引きずり込む事ができるわね…」

留夫「リ…リコ…」

俺はもうその場の恐怖で何も言えず動けなかった。
そしてリコがそう言った後…

留夫「うわっ…うわあぁあぁあ!?」

部屋の床が、鏡が割れるように無くなってゆき、
底無しの闇になったかと思えば、俺とリコの体は
その闇に吸い込まれるようにして落ちて行った。

留夫「痛ツツ…な、なんだ、どこなんだここは…」

そこは線路の上。
周りは全部暗闇で、線路だけに明かりが灯されたようになっている。

俺は今落ちた拍子で体が言う事を聞かず、
その線路から這い出る事ができなかった。
そこへ「プアン!」といって1本の電車が入ってくる。

留夫「う、うわ!うわあぁあ!!」

俺は電車にはねられ即死。
想像を絶する程の恐怖と苦しさを味わった。
そして気づくと俺は又レールの上に横たわっており、
さっきと同じように体が動かず、また電車が来るのを待ち続ける。
そしてはねられ、同じ苦しみを味わい続けるのである。

ト書き〈リコのアパートが消えてゆくのを眺めながら〉

聖子「実はリコさんは、あの駅でもうずっと前に身投げして亡くなっていた。彼女の生い立ちを知れば無理もない事…と誰もが頷くものになるかしら。彼女は幼少の頃に両親に捨てられ、それから親戚をたらい回しにされた挙句、そこの叔父さんから暴力を受け、それが何度も繰り返されて彼女は漸く家を飛び出し、心の拠り所を求めて警察に駆け込んだ」

聖子「でも所詮は子供の言う事。誰も信じてくれず、結局また家に戻されて、同じような悲惨な事が繰り返された。そして大人になり、漸く彼女も独立できたかと思えば、まだ悪い男に騙されて、同じような目に遭ってしまった。どれだけ逃げても逃げきれず、同じ事が繰り返されて、彼女は結局、この世の全ての男を恨んで身投げした。身投げした場所があの駅。ホームから線路に落ちて電車にはねられ、首が180度逆向きになって死んでいたと言う。留夫が電車の中で彼女を見つけられなかったのはその為よ。彼女は線路に落ちて、その電車に乗る事は出来なかったんだから」

聖子「この悲しみはおそらく、彼女にしか分からないものでしょう。まぁ私は特別な存在だから、その特殊な力を使って彼女のそんな生い立ちと、その時々の彼女の気持ちを心から吟味したけど…」

聖子「私は留夫の理性と欲望から生まれた生霊。何とか理性の力が彼を動かし、それなりに幸せな人生を歩んで貰おうとしたけれど、彼の純粋な愛と言う名の欲望がそれを受け入れず、リコと同じ運命を辿って、彼女を包容する道を選んでしまった。でもリコは世の中の全ての男に憎しみを抱いてこの世を去った。その憎しみは、ちょっとやそっとの事では癒されない」

聖子「でも本当にリコの事を心から愛しているなら、その留夫とリコの間にももしかすると本当の愛が芽生え、この世ではないそのアンダーワールドでこそ、2人は結ばれるかもしれない。リコは相手を選ばず、男なら誰にでもあの苦しみを味わわせ続ける。その苦しみに何とか耐えて、彼女との本物の愛を勝ち取る事が出来れば、留夫にとっては本望なのかもしれないわ。あのとき私が彼に勧めたあのカクテルは、それに何とか耐えられる力を秘めたもの。出来れば2人共その世界でこそ、本来手にする筈だった、その幸せを掴んでほしいわね…」

動画はこちら(^^♪
【怖い】【意味怖】【ホラー】【喫茶店で上映されてる映画の感覚☕】【ドラマ小説】【生霊系シリーズ♬~心理ストーリー】最寄り駅で会った心の恋人 #プラットフォーム #恋人#過去 (youtube.com)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?