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オーケンののほほんと熱い国へ行く

オーケンののほほんと熱い国へ行く
大槻ケンヂ・新潮文庫
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ひとつ前に書いた「行きそで行かないとこへ行こう」と合わせて読みました。こちらは海外(インドとタイ)に大槻さん出かけられておりますね。
タイトル通り「熱い国」へ出たエッセイ作品です。

この感想文を書くためにググった程度の浅知恵ですけれど、こちらの本のほうが先のエッセイより世に早く出てるんですね。新潮文庫で読んだんですが、行きそで~は平成九年、こちらの熱い国~は平成十年に発行されています。
こちらの熱い国~の方は
【テレビの企画で訪れた初めてのインド旅行記とタイへの初めての一人旅の体験記】
なんだそうで、一冊の中に「インド編」と「タイ編」が入ってます。お得な2カ国記。

わたし、インドは行ったことがあるんですがタイは無いんですよねえ…
いずれの国もこの本に書かれている内容は三十年とか前の時代の話なので、やー、読んでいてなかなかの治安の悪さに見えますね。
今の時代はまた少し事情が違う治安の悪さが出ていると聞きますけれど、やっぱ通信とか情報とか文化や衛生まわりの発展著しいって何かと良いもんなんだな、ありがてえな、と現代のわたしは思ってしまうわけです。

出だしにいきなりレインボーマンの話を長めにしていて、当時でもあんまりメジャーじゃないネタだったかと思いますけれど、今だとさらにトンチキな說明ですねレインボーマン…配信で見れるんかな…て調べたみたら、TSUTAYADISCASのしかもレンタルでなら、て感じか…ハードルたけぇ…
冒頭10ページぐらい紙面を使って、何の話かわからない話(レインボーマンの話のことです)が続いたあとに、大槻さんインドへと飛んでます。

肝心の内容は少し派手めに出来事を書いているものの、ごく普通の旅行エッセイと言っていいのではないでしょうか。そんなにインドの歴史だとか、国の制度だとかの記載は無いです。なので、読んでインドへの理解が深まるとか学びになるとかは特に無いと思うので、もう単純に楽しめるところを楽しむ、という読み方がいいのではないでしょうか。

これも「行きそで~」と同じく「ああ~…もっと若い頃に読んでたらなーーーー」というのが基本的な感想です。自分が行ったことがあるのがインドのみなんでそこを掘り下げますと、私が行った15年かそこら前ぐらいではこの本に書かれているほどには怪我や病気アピールをする方々はいなかったので、今はさらにこういった景色は見当たらなくなってるんじゃないかしら…
15年前ほどに聞いたガイドさんの說明は「わりと最近に国連やらが入って衛生等の事情は大幅改善した」とのことでしたので、大槻さんらが行ったのは大幅改善前だったんかもしれないですね。
RRRのヒットや、とうとう人口世界一になっちゃった点、ITまわりの発展などなどでインドへの理解を深められるいいタイミングかもしれないので、興味が出た人はこういったゆるエッセイ・旅行記あたりからインドの雰囲気を知ってみるのもアリかもしれないですね。で、歴史や事情を知ったあとにこういった観光客目線のコメントを読むと、
「やー…他国への理解や尊敬の念は持っておきたいな…」
てなるかもなと思います。

タイ編に関しても上記インドと基本的には似たような内容なのですけれど、こちらはインドよりはもう少し(当時にしては)治安も良くて、物価等の安さから日本人も多くいたようで、外国にもかかわらず現地で会った日本人とのエピソードも多く書かれています。
30年前と言ったらまだバブルの余韻が余裕であったあたりですから、若い人がモラトリウムの延長線で小金持ってタイでゆるゆると生活してる、なんて話はそういえば確かにありましたね。
大槻さんも途中でそういった人と会ったりして
「あー、この人達は人生から逃げているんだなぁとボクは思った」
て書いてますが、結構いっぱいいたんだろうなあ…まだいっぱいいるのかな…
もう日本の円のパワーもだいぶ落ちてしまったから、この時ほど何もしないで生きていく、てのはよほど土台づくりをした人じゃないともう無理なんだろうなあ…
そんなところに時代を感じながら読んでた次第です。現地の女性を買っている人の話だったり、ハッパだのの話だったりがわりとあけっぴろげに書いてあるので、当時の風俗・アングラ事情も知れますね。こういう話もちゃんと残したり教えたりしていくの、大事だと思うんだよな。
どこの国もそうなんでしょうけれど、悪い歴史は隠そうとしちゃいますよね。昔の人、なかなか感心出来ないこといっぱいしてたんだぞ…

本の終盤にタイのことを「夏休みの国」と表現する女の子が出てくるのですが、もちろんそういうきれいで楽しくてキラキラした一面があるのは確かでしょうけれど、それはあくまでもこちらが「観光客」でしかないから出る表現かもしれません。そういう目的で行っているなら意識にフィルターがかかるのも当たり前のことかもしれないんですけれど、異国ってものにあまりにも夢を見すぎてしまっても、目が濁ることも多いんじゃないかなあ……そう思うと旅って全然「お客様」でしかないよなあ、とつくづく感じます。
旅、わたしもそれはもう大好きですけれど、楽しみに行くのか、何かしらの理解をしに行くのかなどは、しっかり設定して訪れたいものですよね。
「お客様」って当然ながらもてなされる側なので、楽しい楽しい言ってられるってのは旅先の土地の本質ではないんじゃないかと思っていて、わかりやすい記号の部分や何週間・何ヶ月かの滞在ほどで知ったようなことを言われたら、現地で「生活」をしている人からするとイライラするばかり、なんてこといっぱいだろうなあ…心に留めておきたいものです。

すっかり説教みたいなコメントになっちゃいましたけれど、「無邪気罪」て結構怖いことなので、そこは知っておいてもらったらいいかもな、と思います。この本に対して悪意があるわけではないんですけれど、もちろんテレビの企画が根底にあるし、楽しいところをいっぱい見せる目的があるのもわかるんですけれど、「お行儀」だけは覚えておきたいな、と思うのです。

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