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大学授業一歩前(155講)

はじめに

 今回は都市社会学、地域社会学を専攻してらっしゃる、なつ様に記事を寄稿して頂きました。今回は約2800字超えの長編でございます。是非、ご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えてください。

A: 早稲田大学大学院教育学研究科社会科教育専攻2年のなつです。 専攻する分野は都市社会学、地域社会学です。地域社会やまちづくりに関心があり、研究の傍ら地元で高校生のまちづくりをサポートする仕事をしたり、他の地域で行われるまちづくりの講座の運営などをしたりしています。実践も研究の糧だと思って日々アクティブに動いてます。

研究内容/関心のあるテーマ

Q:現在、研究している内容とご自身の関心について教えてください。

A:修士論文は地方の郊外地域で行われる伝統的な祭礼がもたらす地元意識について書きました。 私は「人は自分の生まれ育った地域や住む地域をどう意識するのか?」ということに関心があります。
 現代は、ただ住んでいるだけでは「地域」というものを意識しづらい時代です。でも「地域」は社会に確かに存在して、それがはっきりと見える時がある。それは、お祭りの時だったり、実家の土地を引き継ぐ時だったり、小中学校の同級生と会う時だったり、子育てを始めて近隣の家族と付き合うようになった時だったり...と様々です。そのような、地域が表れる/現れることについて考えてます。

オススメの一冊

Q:オススメの一冊を教えてください。

渡邉悟史・芦田裕・北島義和 編著/佐藤真弓・金子祥之 著(2023)
『オルタナティブ地域社会学入門』ナカニシヤ出版

A:渡邉悟史・芦田裕・北島義和 編著/佐藤真弓・金子祥之 著(2023)『オルタナティブ地域社会学入門』ナカニシヤ出版を挙げさせていただきます。
 地域活性(化)、地域再生、地方創生といった、地域の課題を解決することが自明(のよう)になっている今。そのような「地域活性化フレーム」の枠組から外に出て地域について考えてみるきっかけになります。
 私は大学一年生の時に離島にボランティアで行ったら、現地の方に「うちの地域には課題はないんだから、他の地域に行ったら」と言われ、「はっ」となりました。ボランティアをするのは課題解決のためとは限らないけど、「地域で何かをする」というのは課題解決の手段とされがちだと気付かされました。この問題意識が原点になって、自分は地域について研究しているのですが、まちづくりの活動に携わると「地域活性化フレーム」に縛られてしまう現状に直面します。そこから距離を置き、考えることをこの本を通してできた気がします。
 大学でまちづくりや地域再生を学ぶ学部生、まちづくりに携わる方にぜひおすすめしたいです。

ご自身の読書術

Q:ご自身が実践されている読書術を教えてください。

A:読書のための本と、研究のための本をバランスよく読むことを意識してます。気がついたら自分のテーマに近い本しか読んでない..というのは避けたいので。 読書のための本は、一見自分の分野とは関係のないようなものを選びます。学術書だけでなく、エッセイなども。社会学は社会を対象にするからこそ、常に社会全体のことにアンテナを張っています。その上で、大型書店個人経営の書店に定期的に通って、そこに置かれている本がどんなものかを把握しています。あと、古本屋巡りも好きです。読書のための本を持って喫茶店に行くのも好きです!
 研究のために読む本は、以下のような読み方をします。※①-③をどの本もやるというかは、①は必須、②③は必要に応じてという感じです。

①ざっと大事そうなところに線を引いて読む
②ここはちゃんとおさえておきたい!と思う文章は書き写す(多くはパソコンで打つ)
概要をノートにまとめる(手を動かすというのが重要)
この読み方は、先行研究を漁りまくっていたM1の時期によく行ってました。

 ただ目を通すだけだと忘れちゃうし、本当に「読む」ことはできないので、とにかく手を動かす、本を汚すことを意識しています。

メッセージ

Q:最後このnoteを読まれている方へのメッセージをお願いします。

A:文系=楽、暇、怠惰、役に立たないみたいなイメージを持つ人も少なからずいると思います。高2で文系に進んだ時、「楽だから文系」と文系クラスに進む周りを見てモヤモヤしていました。 しかし、楽、暇、怠惰、役に立たないというものは必ずしもネガティブなものではありません。文系の学問に触れることで、社会ではなかなか見向きがされないものの良さを味わい、楽しめます。
 たとえば... よくわからないテクストを数行読んで、反芻して天井を見上げて〈無〉になる。 役立つこと、コスパから一旦距離を置いて、考えたこと感じたこと気になったことをひたすら言葉にし、整理する。 漠然とした社会空間の中に自分なりの問いを立て、調査する。 このような行いは、時間を贅沢に使うことで初めて可能になると思います。
 時間を贅沢に使うことは、ダイパを求め、無意識のうちにスマホ依存になりがちな現代ではなかなか難しいことです。余暇の時間さえも「労働」させられてるカラクリに私たちは組み込まれています。人生で一番時間を贅沢に使えるのは大学4年間と言えるかもしれません。だからこそ、大学4年間の時間を贅沢に使ってみるのをおすすめします。
 アルバイト、サークル、学生団体、長期インターン、就活...などなど大学生のうちにやらないといけないことは沢山あるかもしれません。 もちろん、それらも大切にしつつ、ただぼーっとできる時間をぼーっとしたり、よくわからない本に挑戦してみたり、つらつらと文章を書いたりしてみてはいかがでしょうか?
  p.s. 自分は意識高い系大学生だったので、それができたのは色々捨て去って院生になってからなので説得力はなさそうですが...汗。

おわりに

 今回は都市社会学、地域社会学が専攻のなつ様に記事を寄稿して頂きました。

アルバイト、サークル、学生団体、長期インターン、就活...などなど大学生のうちにやらないといけないことは沢山あるかもしれません。 もちろん、それらも大切にしつつ、ただぼーっとできる時間をぼーっとしたり、よくわからない本に挑戦してみたり、つらつらと文章を書いたりしてみてはいかがでしょうか?

 私も「意識高い系」の一人だった/現在でもそう、なので色々なことをやってきましたし、このnoteもその一つでしょう。ですが、色々やっていると、「何かが足りない」といった漠然とした不安に襲われることが多々ありました。常に急いでいる。何者かにならなくてはいけないという強迫観念に囚われていました(今もですが笑)。
 ですが、なつ様がお書きのように「無駄」時間を過ごすことで、急ぐだけではない4年間を過ごせるのではと私も思いました。「一歩前」に進むことも大事ですが、「一歩前のまま」も大切だと私も振り返って感じました。次回もお楽しみに!

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