コムデギャルソンの縮絨期:90年代のプリュスにおける革新的なアート
ファッション界において常に先駆的なアプローチで注目を浴びるブランド、コムデギャルソン。その中でも特に90年代のプリュス(+)の中で人気を博したコレクションが、94AWオフビートユーモア通称「縮絨期」です。川久保玲による斬新なアイデアと挑戦的な素材開発が結実し、前衛的なデザインと高次元で融合した、まさに名作と呼ぶに相応しいコレクションです。
縮絨期の特徴的なデザインは、通常サイズに仕立てたジャケットに加工を施し、表地を大幅に縮ませることによって、裏地を露出させるというものです。この斬新な手法は、ウールのキューティクル(鱗)がお互いに絡みあって一方方向にしか繊維が移動せず、抜けずにからまる縮絨のメカニズムを利用しています。熱と石鹸によってキューティクルが開き、ウール繊維のクリンプ(縮れ)が伸びて繊維がより絡みやすくなります。これにより、着用すると表地と裏地が独特の配置で見える効果が生まれ、ファッションの常識を覆す革新的なアイデアとなりました。
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