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11月28日の手紙 映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」 ネタバレあり

拝啓

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を見ました。
X(Twitter)で感想とファンアートがどんどん流れてきたので
鬼太郎の映画をやるのだと知りました。
どういう経緯で情報が流れてくるのかはわからないし、
その経緯のことを考えると恐ろしいですが、
流れてくる情報がものすごく好みっぽいので気になって
ついつい眺めてしまったのです。

どこが好みかといいますと、
まず、戦後、昭和30年代が舞台であること(京極堂シリーズと近い年代だとか)、
閉鎖された因習深い村が舞台であること、
村には何らかの秘密があること、
異種のバディものであること、
です。
あげればきりがないのですが、少なく見積もってこれだけ好みのポイントがあったのです。

公式HPで予告動画を見ていても、
なかなかよさげであります。
作画も音楽も大変よろしい感じです。
そういえば、子どもの頃、鬼太郎のアニメを楽しんで見ていた記憶があります。
ひどく印象に残っているのは、
オープニングテーマだがエンディングテーマに
異様に大きい蟹が描かれていたこと、
美味しそうではなく、ひどく怖い蟹だったように、思います。

京極夏彦先生のような熱烈なファンではありませんが、鬼太郎以外の水木しげる先生の漫画もそれなりに読んでいます。
今回の映画は、水木しげる先生生誕100周年の記念映画であるというではありませんか。
水木しげる先生にお布施する気持ちで、観賞しようかしら…と考えていたところ、
TLに「映画見ました」という情報がどんどん上がっていくので、
鑑賞を決意しました。

今回は水木しげる先生への生誕100周年へのお布施に加えて
自分の幼少期を言祝ぐために、
奮発して、メロンソーダとポップコーンを注文しました。
子どもの頃、食べたいなぁと思っても、親にはなかなか言い出せなかったので。
せっかく、ポップコーンを買ったところで、「映画に集中したい」ということに気づきました。何たる不覚!
予告編が上映されている間に、ポップコーンを食べます。
映画館へきたという気持ちがこれで高まりました。
さぁ、いよいよです。

・・・・・。
映画の最後10分、涙が出てきました。
悲しいという涙ではないような気がします。
おとうさんのことを思っての涙なのか、
それとも、
人間って愚かだなぁ、
しかし、ものすごく尊いこともできるのかもしれないということについての
涙なのか、
自分でもよくわかりませんでした。
でも、確実にどこかを揺さぶられました。

ネタバレしないで感想を書くのは難しいので、
ネタバレが気になる方は、ここでブラウザバックをお願いします。
考察はありません。純粋な感想であることを申し添えておきます。

昭和は遠くなりにけり。

昭和30年代は西暦にすると1955年~であり
終戦から10年後~あたりが映画の舞台でした。
水木は南方へ出征後、帰ってきてサラリーマンをしているようなので
30代前半の設定でしょうか。
顔や体の傷は大きいものの、水木がスーツを着て
みっしりと机が詰まった会社で働く様子は
「もはや戦後ではない」と言われた時代なんだなぁと思わされました。
しかし、人間の精神はそれほど鮮やかに刷新はされません。水木は戦争時代の記憶や夢にたびたび襲われます。経済の成長は、10年あればあれだけ進むけれど、精神的な戦争の傷跡ら10年経っても消えはしないのだと思いました。
また、男性ばかりの会社、頻繁に挟まれる喫煙シーン、電車の床にはゴミが散らばり、乗客は喫煙しています。
令和には考えられないような場面ですね。
もちろん、あんな時代を実際に知っているわけではありませんし、
昭和は期間が長いので一括りにするのは愚かなことですが、昭和はずいぶん遠くなったのだ、と感じます。

因習村というよりカルト農場

X(Twitter)では「因習村」という表現がされていたので、そのつもりで見に行ったのですが、水木がトンネルを抜けた冒頭で「因習村じゃなくない?」と思ってしまいました。
きっちり綺麗に耕作されている田畑、綺麗な瓦屋根の家々、電線も通っていた気がします。「トンネルを抜けたら因習村だった…」というよりは「トンネルを抜けたらカルト農場だった」の方が近いのではないかと思います。龍賀時貞翁が一代で事業を大きくしたようなので、先祖代々ああいうことをやっていたわけではなさそう…ということは、因習を作ったのは時貞翁であり、因習村とまで言ってしまうのは村民に悪いような気もします。いや、あの事業を手伝って、人を狩ったり、拘束して世話したりするのが生業の時点で村民も悪いといえば悪いわけですが…。(電車で咳をしていたあの子がいたような描写があったので、電車から降りた人を連れてくる何らかのシステムがあるのでしょう)
血液製剤Mを作るのも儀式ではなく「工場」で作っているというのが妙に近代的です。戦前〜戦時中くらいから、「工場」があるとしたら、それは因習なのでしょうか。まあ土俗の宗教があった寒村を時貞翁がうまく改造したという意味で因習村なのでしょうかね。

乙米さまと長田

この2人、何かありますよね?表面上の、姑と娘婿だけじゃない、何かがありますよね。
それなりに絆みたいなものがあった気がします。
いや、あってほしい…です。
検索したら同じことを考えている人がいて少しホッとしました。前日譚があるはずだ、あの2人にも…。
あと、長田の耳飾りは何だ、あれは!けしからん!と思いながら見ていました。

水木…水木がよい

水木がとても良かったです。ギラギラした社内での様子も良いですが、沙代の鼻緒を直す場面…肌は何も露出していないのに、非常に色気があると思いました。膝に足を乗せるとき、グッと来ないおなごはなかなかおらんじゃろう…と思ってしまいました。
食べ方はガツガツしているけれど、「クリームソーダを喫しました」とか「遊びにいらっしゃい」とか、話し方はいちいち、品があります。その上、「人がやらないことして生き残る」という割に、おとうさんを見過ごせないとか、時弥くんにも丁寧に応答したり、根が優しいところが見え隠れしています。
戦争、戦後で身も心も傷ついて、それを男性的なやり方で、乗り越えようとしたけれど、それでも水木の柔らかいところは、決してなくなってしまわない、というところが魅力です。
後半のブチ切れ水木はますます素晴らしかったです。鼻血を出した男性にグッとくるとは思いもしませんでした。妙な性癖に気づいてしまいました。

ゲゲ郎ことおとうさん

おとうさんは評判通りの魅力炸裂でした。
声がいい、姿がいい、一途なところがいい、そして強い…愛が強い…。
背が高いのにふわりと軽そう、しかし、風呂に入っていると肩幅はしっかりあるし、闘うと怪力だし、最後の決断も腹のすわったものでした。
アクションシーンはカッコよかったですね。
滑らかな戦闘!!伊達に長く生きてはいないとはいえ、ギャップが良いよ、おとうさん。
一方で、お父さんが水木を背負って逃げるとか、おとうさんと水木が棒アイスを食べる場面とかが,みずきとの身長差もあってよかったです。
「2人で探偵社をやったらよい、2人で人探しをしたり、戦時中に残された危険物を見つけたり、してほしい…」と考えてしまいましたが、それではほとんど京極堂シリーズかもしれません。いやまあ、それでいいから見たいですね。
軍人上がりより強いほえほえ着流しおとうさん。グレートピレニーズみたいなイメージです。大型犬だけどニコニコふわふわしている…しかし本当は…というような。
お連れ合いとのエピソードはまだ色々あると思うので、最後の幽霊族カップル探偵にして、数話作ってもらえないものか…と思いました。
これだとまた京極堂シリーズみたいになってしまうでしょうか。いや、それでも2人の馴れ初めは知りたいですね。
そして、あんなに愛しい「お前」はないでしょう。切ない呼び声でした。
また最後の戦いはとてもつらいのですが、絵的には素晴らしく美しかったです。
おとうさん、今も昔も、飄々としていますが、水木と出会うまで、子どもを持つまではもっと人間と距離があったのだなぁと思ったりもします。
あと、「ねずみの」はまだきれいでしたね。まだ煤けた感じがなく、悪臭も漂っていなさそうでした。いつからあの汚い頭巾みたいなのをかぶるのでしょう。

パンフレットは完売


座席にゆとりはありましたが、
パンフレットは売り切れていました。
残念!!
入荷数が少なめだったのでしょうか。再販希望です。
グッズは販売していたのか、確認し忘れました。

一回しか見ておらず、画面の美しさにぼーっと見ていたので、深い考察はありません。
でも、素直に心揺さぶられました。
水木は、記憶をなくしたとしても、幽霊族2人の思いが,どこかに残っているのだろうと思います。
それでいいんだ、それで。
形もない、不確定な愛みたいなものだけが、未来に続くのです、たぶん。


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