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映画【個人的発掘良品】『地獄の殺人救急車/狙われた金髪の美女』

THE AMBULANCE
1990年 アメリカ
監督:ラリー・コーエン
製作:モクテズマ・エスパルザ/ロバート・カッツ/バーバラ・ジットワー
脚本:ラリー・コーエン
撮影:ジャック・へイトキン
編集:クラウディア・フィンクル/アーモンド・レボウィッツ
美術:レスター・コーエン/ナンシー・デレン
セット:ジェシカ・ラニアー
衣装:シルヴィア・ヴェガ・ヴァスクエス
メイクアップ:セオドール・メイヤーズ・ジェニファー・アスピノール
特殊効果:ロブ・ベネヴィデス/ケヴィン・マッカーシー
視覚効果:ラリー・アーピン
音楽:ジェイ・チャタウェイ
音響編集:マーク・クックソン/エイドリアン・マーフィアク
助監督:カーレン・F・オコア/ケン・オーンシュタイン
キャスティング:マーシャ・シュルマン
スタントコーディネーター:スピロ・ラザトス
出演:エリック・ロバーツ/ジェームズ・アール・ジョーンズ/ミーガン・ギャラガー/リチャード・ブライト/ジャニン・ターナー/レッド・バトンズ/スタンリー/エリック・ブレーデン/ジェームズ・ディクソン/ジル・ギャツビー/マーティン・バーター/ローレン・ランドン/ニック・チンランド

 このような邦題が付けられたので、救急車が人々を轢き殺していくような、『ザ・カー』や『クリスティーン』のようなホラーなのかなと思いきや、実はちょっと違います。原題はそのまま『救急車』ですが、エリック・ロバーツ演じる主人公のコミック・アーティストが偶然街中で美人さんと知り合ったために、妙な連続失踪事件を追っていくことになるというスリラーです。自分が介抱した急患さんが、救急車で運ばれたまま、病院に送られていない。何処へ行ったのか。夜中に暗躍する謎の救急車。不審な医師、救命士たち。一体どんな事件か。首を突っ込んでいった主人公にも危険が迫る。

 脚本と監督はラリー・コーエン。この人はニューヨークの生まれで、幼い頃から映画に夢中で、ボガートやキャグニーの主演作を熱心に観ていたそうです。最初はテレビ番組の制作を学び、脚本を手掛けるようになって、1950~60年代はミステリー、SF、西部劇など多くのテレビシリーズのシナリオを書き上げてきました。段々とテレビと映画の両方に携わるようになり、1972年に映画監督デビュー。SF、サスペンス、ホラー映画を連作するようになりました。この映画は54歳で手掛けたもので、主人公が不審な失踪事件を追ううちに危険な目に遭うという王道なサスペンスストーリーに、アイディアと捻りを取り入れています。人命救助の象徴である救急車が、命の危険を感じさせる存在になる。医師や救命士が不吉な悪意を放つ。このあたりに挑戦的な意外性を持たせました。安直にショックや殺人場面を見せ場にしていません。コーエンは小規模なホラーやスリラーを手掛けてきましたが、この映画は特に大勢の方がハラハラ愉しめるような、洗練された一作です。サスペンスもので主人公が漫画家というのも珍しい。編集者役でマーベル・コミックのオリジネイターことスタン・リーも出演しています。

 救急車が壁をブチ破ったり、ストレッチャーが坂道を駆け抜けたり、面白い場面が出てきますが、撮影を務めたのがジャック・へイトキンですね。この当時としては『エルム街の悪夢』や『ヒドゥン』などの撮影も務めていて、その実績から本作にも登板しているかと思うのですが、この人はアクション撮影やキャメラ・オペレーターとしても経験豊富で、『エクスペンダブルズ』や『ワイルド・スピード』シリーズ、『キングコング/髑髏島の巨神』のような大作や『キャプテン・アメリカ』シリーズや『ヴェノム』のようなマーベル映画のアクション撮影も務めているほどです。それほどの人が、ラリー・コーエンの右腕となって救急車映画を撮ってる。面白いですね。


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