見出し画像

【手品】『しあわせの書』の使い方

泡坂妻夫氏の『しあわせの書』という本があります。
実はこの本、とある手品ができる本として有名です。

最近話題になった杉井光氏のある作品も、本書に多大な影響を受け、
後書きでは、伏字ではあるものの感謝の意が述べられていました。

なぜ、こんな奥歯に物が挟まったような言い方かというと、未読の方の読書体験を奪いたく無いからです。

未読の方は是非、本を読んで頂きたいと思います。

という事で、これ以降の文章は、この本の秘密を知っている方向けです。

泡坂妻夫氏の『しあわせの書』について、自分なりのちょっとしたアイディアを考えた事があります。

良い手順ではあると思うのですが、
しかし、とある理由から演じた事はありません。

まず、以下に現象を書いておきます。

【現象】

演者は一冊の文庫本を取り出し、観客に手渡します。

観客に好きなページを開いてもらいます。
観客に見開きの最初の単語を覚えてもらいます。更に万全を期すため、該当ページを破ってポケットに隠して貰います。もちろんここまで演者はその様子を見ていません。

演者は本を受け取り、確かにページが破り取られ”観客が覚えた単語”を知る術が無い事を示します。

この状態で演者は単語をずばり言い当てます。
観客に隠してもらっていたページを確かめると確かに一致しています。

【解説】

この本の秘密を知っている方は、上記の現象を読めばどのように行うかは分かると思います。

ポイントはページのセレクトから単語を覚えて貰うまで演者は一切その様子を見る必要が無い所です。

ちなみに小説の本編では、見開きをページの片面を相手に見せる方法とナイフを使ってページをセレクトさせる方法が書かれています。カジュアルに演じるなら見開きページの片面を見せる方法で十分でしょう。

別パターンは、
演者が後ろを向いている間に、選んでもらったページを灰皿で燃やして貰います。演者はその灰を徐ろに腕に擦り付けると、選んでもらった言葉が表れます。
(この場合、選んで貰うのは”単語”ではなく”最初の一文字”になると思います笑。)

【なぜ演じた事がないか】

さて、僕がなぜ演じたことがないかというと…
ずばり、もったい無いからです。

この方法は一回演じると文庫本一冊が無駄になってしまいます。
新品で600円程度、ブックオフだと100円でも買えるのでそこまで高価なものでも無いですが、なんかもったいない感じがします。

この「なんかもったいない」という感覚は、恐らく観客も同様だと思います。

僕自身は、もはや何の抵抗も無いですが、カードマジックを演じた事がある方ならカードを破るだけで「え、もったいない…」と言われた事が、一度や二度ならずあると思います。
まぁ普通に考えればそうですよね。一般の人にとってトランプはマジック道具ではなくゲームをするための物であり、十全十美でなければなりません。

本も同様だと思います。全ページ揃っていないと小説としては不完全です。
故に観客にページを破らせるという部分が、どうにも罪悪感の生じる行為を強いている気がしてしまうのです。

【最後に】

「単語に付箋を貼ってもらう」「マジック(温度で消えるタイプ)で塗りつぶしてもらう」とか色々考えたのですが、ちょっとスマートさに欠ける気がします。

長々と色々書きましたが、手順自体は悪くない気がします。
なんか良い方法が思いついたら、また書こうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?