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⑮ギャラ未払い事件・全記録[連載/ボクっ娘のなれの果て、還暦を迎える。]


こんにちは辛酸なめ子より辛酸なめてきましたが辛酸なめ子を名乗りたくはないのでペンネームを「泥水すすり」と改めようかなと思うくらい泥水をすすってきたフリーランス(自営業者)編集者・魚住陽向です(息継ぎなし)。

皆さんは、仕事をしたにもかかわらず「ギャラが支払われない」とか「ウソをつかれて、のらりくらりと逃げられ、報酬を支払うのを渋られた」という経験はありませんか?

私は、あります。

そして、結果的には内容証明を送り、プレッシャーをかけて相手を追い詰めたという経験があります。

今回は小説家ではなく、フリーランス(自営業者)の編集者として「ギャラ未払い事件」の全容を書き遺しておこうと思います。

はじめに

この事件が起こったのは2002年。もう19年も前のことです。世の中は、サッカーの日韓ワールドカップで盛り上がっていたのを記憶しています。

「19年も前のことをいつまでも思い出してうじうじしているのか」と思われることでしょう。「もう忘れればいいのに」とも。忘れられませんよ。一生許しませんよ、相手を。それほどにキツい出来事でした。

この事件を記しておくことには理由があります。

一つは、この事件が自分の人生において分岐点になってしまったこと。
元々、ビンボーなフリーランス(自営業者)でしたが、何とかギリギリで暮らしていました。でも、この事件前後に経済的などん底を見て、事件終了後に都落ちせざるを得ませんでした。それから19年経った現在も経済的に上昇していません。

しかし、そのことが45歳で初めて小説を書き、新潮エンターテインメント大賞最終選考作品(長編小説『天然オヤジ記念物 江戸前不始末』『男どあほうT-REX紀』)に繋がっていくので、何がどう転ぶか分からないのですが。小説自体はコメディで、経済小説でもミステリーでもありません(笑)。

二つめは、コロナ禍において(2020年4月)大掃除をして、過去の書類を整理していたところ、この「ギャラ未払い事件」の経過詳細メモが全て出てきたこと。

捨てる前に記録しておきたい。
他にも「仕事したのに報酬がもらえない、支払いがない、逃げられている!」というフリーランス(自営業者)」の人に向けて、「まだ方法はある!」「泣き寝入りしないでほしい!」と思い、noteに記そうと考えたわけです。ギャラ未払いの目に遭って、どうしていいか分からない人の参考になれば幸いです。

三つめは、今年の誕生日で還暦を迎えるにあたって、イヤな記憶と記録を全部放出し、破棄して、残りの人生を生きていきたいと願ったから。まぁ、なかなか忘れられないけれど。

さて、この事件はもちろん事実なので登場人物はすべて実在します。でも、実名だと良い人たちに迷惑がかかるので魚住以外は全部仮名かイニシャルにします。

まずは、登場人物の紹介と、お仕事の流れ・報酬の流れを図にしました。

■登場人物

魚住……被害者。フリーランス(自営業者)の編集者。当時、41歳。
F社のMさん……相談にのってくれる良い人。男性。
Tさん……良い人で戦友といえる男性。仕事仲間のフリー編集者。
キューピーさん……法律的な相談にのってくれた友人男性。当時はまだ弁護士ではなかったため、報酬を受け取ってはいけないので無償で的確な指示だけを出してくれた。のちに司法試験に合格し(司法試験16回落ち、17回目にして合格の苦労人)、現在はプロの弁護士として活動中。
Q奥さん……キューピーさんの奥さん。

OO氏……加害者。嘘つき。アイドル誌の取材などで出会ったが当時プロデューサーを名乗って、つんくの真似事をしていたが、本業はカメラマン。カメラマンの仕事は見たことがない。

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この「ギャラ未払い事件」全記録をなぜ、事細かくメモしていたのか、疑問に思った方もいらっしゃることでしょう。

それは登場人物のキューピーさんにあります。
彼が司法試験に合格するための「無償の司法活動」をまとめるためだったのです。多分、司法関連雑誌に掲載された気がします。それに当時は、この記録(メモ)をどこかに書いてぶちまけてやろうと思っていたので、とても細かい日記のようになっているのです。結局は19年間も放置していたので、ちょっと今さら感は否めませんが。

ここでちゃんと書いておかなければなりません。

それは「内容証明」について。

「内容証明」とは、「いつ、誰が、誰あてに、どんな内容の文書を送ったか」を公的に証明できる「郵便」のこと。あくまでも送付した年月日・送付した内容・送付した事実を証明するもので、「内容証明」を送ることで強制的に相手を記載内容に従わせることはできない。

しかし、「内容証明」を送ることは、法的手段に訴える前段階ともいえ、「これ以上問題解決が長引くようならしかるべき措置をとる」という強い意思を相手に表明することでもあります。「内容証明」は、裁判においても証拠として提出されることも少なくありません。

通常の郵便であれば相手に無視されて終わっていたものが「内容証明」を送ることで、事態が一気に動き出すというケースは多々あります。

インターネットで検索すれば、「内容証明」の書き方や法律相談してくれる弁護士事務所もたくさんヒットすると思います。でも、これを読んで「泣き寝入りしたくない!」と怒りに震えながらも手探りしてる方々は私同様、経済的な余裕はあまりないと思います。未払いのギャラも数万円〜数十万円ぐらいではありませんか。
「こんな小さな金額のことで、お金を払って相談なんてできない」とお考えでしょう(「少額裁判」というのがあります。私はやりませんでしたが、傍聴席で見学しました)。

法律のこと。お金を取り返すこと。他人の嘘を暴いていくこと。相手を追い詰めて謝ってもらうこと。すべて簡単なことではありません。もちろん全部自分でやらなければなりません。誰もやってくれません。とても大変です。面倒臭いことばかりです。すごく精神的につらいです。泣き寝入りした方が精神的には楽かもしれません。

それでも動くためには「私を騙すなんて許せない!」「お金は当然払ってもらう!」「ナメるな!」というとてつもない怒りが原動力になります。
だって、真面目に生きてきた素朴な自分をこんな気持ちにさせるなんて、ひどすぎるヤツですよね。泣き寝入りがイヤなら怒るしかないんですよ。

私は19年前の被害者ですが、「自分の事件についてしか分からない自営業者」にすぎません。

だから、もっと詳しく自分の抱えている問題をプロに相談したいと思ったら下記に問い合わせてみてください。無料の法律相談です。

★日本司法支援センター「法テラス」(国が設立した法的トラブル解決の総合案内所)
https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/faq/faq_2/index.html

それでは「ギャラ未払い事件」の記録をスタートします。

ギャラ未払いと嘘と、とんだ演技力

●2002年3月下旬
1/31付「S社カラオケ早見表2002年1月発行分」紹介記事原稿料 6万円
3/31付「G社カラオケ早見表2002年3月発行分」紹介記事原稿料 8万円
上2点の請求書を提出(送付)していたので、入金日を確認しようとOO氏に電話をかける。(締め日や振込日などの決まりは元々なし)
すると、3/31付請求分「S社カラオケ早見表2002年4月発行分」紹介記事原稿料 6万円(この分は通常よりも少々早い)も一緒にまとめて支払ってくれるという返事。いつも支払日がルーズで遅れてばかりだったので「大丈夫ですか?」と聞くと、軽く「大丈夫、大丈夫。3月末に振り込むから」と言われたので、「確認ですが、振込手続きをするのが3月31日ですか?それともこちらに入金されるのが3月31日ですか?」「多分、こちらが振り込むのが3月31日だから魚住さんが受け取るのは中3日みておいてもらって4月3日ぐらいかな」という会話をする。

●2002年4月3日
振込なし。
ただ、3月31日は日曜日だったため、振込手続きは4月1日(月)にしかできないだろう(この人がそこらへんをよんで、3月29日(金)に振込手続きをするはずがない)と思う。
したがって、早くても4月5日(金)頃だろうと思うが、この週は留守電に催促を1回入れる。

翌週より、週1回ペースで、電話(留守電)にて催促。返事なし

●2002年5月下旬
F社のMさんに電話で相談する。その際に、Mさんより聞き及んだこと。
・OO氏(42歳ぐらい)とMさん(43歳ぐらい)は以前からの知り合いであるが、MさんはOO氏より何度も迷惑を被っており、何度か「そんないい加減な仕事の仕方をしてはいけない」と忠告していたが、全く馬の耳に念仏であったこと。
・MさんはOO氏を全く信用しておらず、現在ではあまり関わり合いになりたくないということ。
・実は2001年秋から冬頃に、ある日突然、MさんにOO氏から電話があり、「個人的に20万円貸してほしい。今日持ってきてほしい」と頼まれたとのこと。その際に「すぐ返す」と言われたが未だに返してもらっていない。
・今後はOO氏を間に入れずにF社と魚住で直接仕事をしていくことになった。

●2002年5月27日
仕事仲間のフリー編集者のTさんに会って、「OO氏から全く返答がない」旨を伝えると「携帯電話の履歴に魚住さんの名前が出るとわざと電話に出ない可能性があるから僕から電話をしてみますよ」と言って、その場でかけてくれたが、電話には出なかった。
その時に、Tさんが知っていたOO氏の3つめの携帯電話の番号を教えてもらう。
いくら催促の留守電を入れても一向にOO氏から連絡がないので、事情を知っている人はいないかと、共通の知り合いに連絡する。元インディーズレーベルのレコーディングディレクター氏に連絡。彼は「まったく連絡を取っていないし、今どうしているか知らない」とのこと。「もしかしたら携帯電話の履歴に魚住さんの名前が出るとわざと電話に出ない可能性があるから僕から電話をしてあげるよ」とTさんと同じ事を言ってくれた。

●2002年6月初旬
やっとOO氏から電話がある。振込が遅れて、連絡ができなかった理由としては以下の通り。
「ゴメンねー。ずっと連絡取れなくてさ。実は今、大阪で化粧品会社の支店を作るのに走り回ってて。それで、クルマで走り回ってる時に、正面から突っ込まれて交通事故に遭って、肋骨を2,3本骨折して、同乗していた友人は大腿部骨折して、2人とも重傷だったんだよ。それで、大阪の病院でずっと入院してて連絡できなかったんだよ。病院だと携帯電話使えないしさ。それにしても大阪の道は怖いねー。それでは、連絡するの遅くなって悪かったんだけど、来週ぐらいには振り込みしてもらうようにちゃんと手配するから。俺は動けないんだけどさ。また、振り込まれてなかったり、何かあったら留守電に入れておいてよ。後で聞いて、折り返し電話するね。入院してるとさ、夜は抗生物質が効いて眠くて起きてられないんだけどね(途中、何度か大阪弁のイントネーションになる)」
非常に驚いて、心配になり、何度も「お大事にしてくださいね」と言って電話を終える。

電話があったということは元レコーディングディレクター氏が連絡を取り、伝えてくれたんだと思い、すぐに電話をかける。しかし、ディレクター氏はOO氏とは電話で話してないと言う。留守電は入れてくれたが返事はなかったらしい。連絡があったことと、その内容を伝えると「そんなのウソかもしれないよ」と言われる。
Tさんにも連絡し、OO氏から電話があり、連絡と振込が遅れた理由を伝えると、ディレクター氏同様「ウソかもしれませんよ」と言われる。

●2002年6月中旬
F社のMさんに連絡して、OO氏から連絡がなかったか聴き、先日電話があったことを伝える。やはり「それはウソかもしれない。もう彼のいうことはこれっぽっちも信用していない」と言われる。

●2002年6月20日頃
仕事仲間のTさんから電話がある。彼が毎月仕事をしているアイドル情報誌の編集部に行った際に、OO氏の話になり、「彼なら昨日来ていたよ」と言われたという。
その時のOO氏の様子を聞いたら、別に怪我をしている様子はなかったらしい。編集部の人は「あの人はもう使わない。請求書を送るように言っても送ってこないし、いい加減だから」と言っていたとのこと。OO氏はアイドル誌の6/1発売号と7/1発売号にカメラマンとして撮影の仕事をしており、物撮り以外にもモデルを使ったスタジオ撮影をしている。Tさんによると肋骨を2,3本折った後に完治してないのにできる仕事ではないとのこと。

ショックを受けたが、ウソをつかれたことなど、気づかなかったフリをして、留守電に振込の催促を頻繁に入れる。留守電に入れる締めくくりは「お大事になさってください」。

●2002年6月20日頃
OO氏から電話がある。電話を取れなかったため、留守電に。
留守電の内容は、痛そうな、死にそうな、苦しそうな声で、
「今、二度目の手術が終わったところです。6/22には退院できると思うので、6/24には振り込みできると思います。振り込むと言っていたのに未だに振り込んでなくて申し訳ない。僕の手配ミスです。本当に申し訳ない。6/24には、18万必ず振り込みますので」と入っていた。
20万円のはずなのに、「何故、18万円になっているのか?」
今日は死にそうな声で電話してきただけあり、連絡しても出ないだろうから6/24に電話しようと思う。

●2002年6月28日
OO氏から振込があり、入金確認はできたが、何故か5万円。「分割かよっ!」(怒) 再び、催促の電話(留守電)を入れまくる。

●2002年7月9日
OO氏から振込があり、入金確認ができた。が、何故か再び5万円。ウンザリする。
しつこく電話(留守電)を入れたら返事がある。
どうなっているのか聞くと「払う金がない」と、ちょっとムッとされる。
「何故、私がムッとされなければいけないのか!」と腹が立つ。

●2002年7月中旬
まだ振込がないので催促の電話をするとOO氏は「もう振り込んだ」と言う。
いつ振り込んだのかと聞くと、昨日手続きをしたと言う。
何時頃に振り込んだか聞いたら、「俺もう金ないからさー」パーソナルチケット(?)なるもので銀行の窓口が開いている時間帯に手続きしたとのこと。
翌日、その翌日も振込がないので、毎日のように何度も電話をした際に「中○日みておいて」「ちゃんと手続きしたよ。どうなってるか確認取ってみるから」の繰り返し。まったく振り込まれる様子がない。留守電に催促してみても返事がなくなる。

●2002年7月18日
F社のMさんに電話で相談。
「内容証明を送ってみようと思うが、その場合、そちらに迷惑がかかることはないか」と尋ねる。
Mさんは「全くないよ」と答えてくれる。でも、その前に「配達証明を送って様子をうかがってみたら」と言われ、配達証明で送る文書を作成する。

●2002年7月19日
OO氏宛てに催促状を配達証明にて送る。郵便局にて発送手続き完了。
帰宅すると、以下のようなメール(原文のまま)がOO氏から届いていた。
(多分、配達証明はまだ届いていないし送ったことも知らないと思われる)

魚住さん誠にすまん!
2週まえの電話の後香港に仕事で行ってしまい、連絡取れない
状態になってしまて逃げてるみたいに成ってしまった。
今大阪にもどってきました、なるべくすぐ振り込みます。
ごめん本当にすいません。大至急処理しますので、ゆるして!!!

この後、振込もなければ、連絡さえ全く取れない状態になった。

●2002年7月29日
配達証明で送った催促状が戻ってきてしまった。郵便局としては不在のため、不在連絡票を入れておいたが、それに対してもリアクションがなかったため、返してきた。郵便配達人に「向こうの受け取り拒否ではありませんか?」と聞くと、それはないとのこと。在宅なのに受け取りを拒否したわけではなく不在であったと。
(この日、私は電気を止められた瞬間に部屋におり、かなりショックを受ける。電気が止まる音はかなり大きいのだ)

●2002年7月29日〜8月2日
OO氏に毎日数回電話をかけるが留守電にもなっていない。
OO氏が使っている電話で、番号を知っているのは4つ(うち、1つはPHS)。
PHSは、「この電話番号は現在使われておりません」のアナウンス。
携帯電話1は、「電源が入っていないか、電波が届かない所…」のアナウンス。
携帯電話2は、「お客様のご都合により…」(多分、料金未払いで使用不可)のアナウンス。
事務所の電話(固定電話)は呼び出し音は鳴るが誰も出ない。留守電にもFAXにもなっていない。
仕事仲間のTさんに伝えると事務所(配達証明を送った住所にある)の電話にかけてくれる。女性が出て、「OOさんはいらっしゃいますか?」と聞くと、いきなり「間違い電話です」と言って切られたという。
Tさんは、電話に出たのは奥さんではないか、いきなり間髪入れずに「間違い電話です」という返答はおかしい。用意していたようにしか感じられないとの感想。すぐに同じ電話にかけるとやはり女性の声で「うちはOOではありません」と返答。「この電話番号になったのはいつからですか?」と聞くと、「3ヶ月前に引っ越してきた」と答えた。電話番号を変更すると、それまでに使っていた電話番号はすぐには他の人に使わせずに、NTTではある一定期間、その電話番号を寝かすのではないのか?

結局、電話は全て繋がらない。
配達証明を送った住所(事務所)しかデータが分からなくなってしまった。
自宅の現住所は分からない(以前に、横浜の方の奥さんの実家に引っ越すと言っていた。しかし、F社のMさん曰く「それも本当かどうか分かったものではない」。

事務所もぬけのカラ事件!

●2002年8月3日
友人であるキューピーさんに相談。
未払いの金額は少額であるが、「ウソをつかれていること、ナメられていることは許せない。絶対に取り返しましょう」と一緒に怒ってくれた。今後は彼のアドバイスを受けて動くことにする。
なお、内容証明書には法的効力はない。が、相手の心理的圧迫として機能することがある、と知る。

●2002年8月9日
杉並南郵便局にて、内容証明書を発送(配達証明は付けず、書留のみで送る)。
本人にメールで、内容証明を送ったことを報告。
仕事仲間Tさんに「アイドル雑誌編集部の人に我々が知っている電話番号以外に知っている番号はあるかどうか聞いてみてほしい」と頼んでみる。

●2002年8月11日
インターネットの「郵便局/郵便物追跡」のサイトで、郵便物の行方をチェック。以下の通り。
発生日   郵便局名 状態 備考 郵便番号  県名等
8月9日  杉並南  発送    168-8799 東京
8月9日  新東京  中継    137-8799 東京
8月10日  代々木  到着    151-8799 東京
8月10日  代々木  再配達予定 配達予定日:8月12日 151-8799 東京

■備考
・OO氏から今までもまともな期限で支払われたことがない。
2001年9月頃の支払いが遅れたことの言い訳は「いやぁ〜、同時多発テロがあってさぁ、大変だったよ」(ギャラの振込が遅れることと同時多発テロの因果関係とは?)
また、「バイトの女の子が1ヶ月間休暇を取って、インドに旅行中でさ。振り込んでから休みを取ったと思うけど、つかまらないから確認が取れないんだよ」(バイトの女の子を雇う金はあるんだ。そんな女の子の存在さえ疑わしい。雇って、何の仕事をさせるのか疑問)
(Mさん曰く「雇っている女の子が休みを取った後も分かるようにしておくというのが仕事だ。そういうことができないのだったら仕事を広げすぎないことだ。それにそんな女の子いたのか?」)
・OO氏の本業はカメラマンらしいが、健康食品会社、喫茶店経営、インディーズレーベルの音楽プロデューサー、化粧品会社などをやっているらしく、どれも成功していないらしい。
・まだOO氏の本性を分かっていない頃、「女性向けの雑誌編集部にいる人知らない? 美容に良い健康食品のサンプルを取り上げてほしいから送付させてもらいたい」と言うので、郵便で送るのだろうと友人の編集者がいる編集部の住所データのみ(FAXを送って)教えたら、電話番号を調べた上に勝手にムリヤリ直接会いに行かれて、こちらの面目丸つぶれ。その話もかなり後から、その友人から聞かされて驚く。

●2002年8月中旬
内容証明を受け取った形跡がない。
キューピーさんに相談した結果、「一度、抜き打ちで直接、事務所を訪ねてみた方が良い」と言われ、覚悟を決める。
「事務所にOO氏がいたらどう言おうか。どう催促しようか」「事務所に不在の場合、ドア部分に催促状(封筒)を貼っておこう」といろいろ思案&準備する。

●2002年8月16日 〜激動の8.16〜
渋谷区代々木にあるOO氏の事務所に向かう。バスで初台へ。猛暑。午前11時の段階で気温35℃は超えていると思う。OO氏の事務所が入っているビル(主にデザイン系事務所。レトロな洋館のようでもあり、古い学校のような建物)に到着。お盆中だが、デザイナーらしき若い人たちが働いていた。
集合郵便受けにはOO氏の事務所には郵便物が溜まっている形跡はない。
2階の一番奥にあるOO氏の事務所に向かう。他の事務所の前には何らか物が置いてあったり、人の居る形跡があるが、OO氏の事務所前あたりは妙にスッキリしていて何も置いていない。
ドアをノックして開けようとしたが鍵がかかっていて開かない。誰も出てこない。
ドアの横の窓は磨りガラスで中をうかがうことはできないが、明らかに人の気配がない。物が置いてある気配もしない。ハッキリと中は見えないまでもだんだん事務所の中の様子が分かってきた。
これは…何も家具も置かれていない状態……もぬけの殻である。逃げられたのだ。
呆然としてその場に立ち尽くす。頭の中が真っ白になる。
立ち尽くしてばかりもいられないので、頭を必死に動かし「今やるべきこと」「今できること」と繰り返して、何故か1階と2階の事務所前を何往復もする。行動がおかしくなっている。
うろうろばかりしていてもただの不審者なので、とりあえず隣の事務所をノックする。
女性が出てきたので「隣の事務所は引っ越したのですか?」「いつ引っ越したのですか?」「引っ越す時の音はしませんでしたか?」など聞いてみたが、答えは全て「すみません。分かりません」だった。
再び、1階へ降りる。廊下にいたデザイナーらしい若い男性に管理事務所の場所を聞く。お盆のため、お休みで鍵がかかっていた。他の男性に「管理事務所はいつまで休みか」尋ねる。「お盆休みだろうから月曜日には開くんじゃないですか。でもよく分からない」との答え。
途方に暮れて、1階の廊下をうろうろする。うろうろしっぱなし。
すると、集合郵便受けの前にあるもう一つの管理事務所のドア(先ほどまで不在で鍵がかかっていた)が開いているのを発見。そこから清掃員の中年女性が出てきた。内心は必死で、外見は何気なく話しかけてみる。
魚住「お忙しいところ恐れ入ります。少々うかがいたいんですが、201号室には誰もいらっしゃらないようですけど、OOさんはお引っ越しされたんですか?」
清掃員「201? ああ、そういえば引越されましたよ。7月いっぱいで契約解除されて」
魚住「7月いっぱい? 引越も7月末頃だったんですか?」
清掃員「そうですよ。でも、だいたいの荷物の引越は7月末だったけど、事務所の前あたりに荷物をいくつか置いていってて、残りを少しずつ運んでいたから、それでも8月6日頃までちょこちょこ通ってましたよ」
魚住「ということは郵便受けの中も8月6日頃まではチェックできますよね」
清掃員「それはコチラはわからないけど、来たら郵便受けぐらい見るよね、普通。詳しいことを知りたかったら月曜日に管理事務所の人が出勤するから電話して聞いてみれば? このビルのことについて一番把握しているのは経理の女性だから、その人に聞くのが一番いいわよ。ビルを出ていく時に契約のこととかもやってると思うし。電話番号見てくるからちょっと待っててね」
清掃員の中年女性が神様に見えてきた。

ビルを出る。この後、どうしようどうしようどうしよう。
これで、OO氏に関して知っている連絡先は携帯電話番号1つだけ。それも留守電になっている。
では、OO氏がずっと以前に住んでいたらしいアパートを探すことにした。そこには住んでいないことは分かっているが地図を見たら事務所があったビルからは歩いて行けそうだし、他にできることが思いつかない。
渋谷区初台●-●-●-101……あった。●●荘っていうアパートか。ノックしてみる。留守のよう。郵便受けには違う人の名前。やはりココは手がかりにならなかった。

トボトボと来た道を戻る。あまりの暑さに汗が滝のように流れ出る。涙も出ない。汗が涙の代わりのような気さえする。
ウソをつかれたこと。ひどいウソ。芝居がかったウソ。小学生がつきそうなウソに簡単に騙されたこと。バカがつくほど人のいい自分。それで自営でやってますなんてよく言ったもんだよ。バカな自分。挙げ句の果てに騙されて。結局、逃げられてさ。

このまま、まんまと逃げられる? 逃げ得? 許さない! 絶対に許さない! 金額としては少額かもしれないけど、1万円だろうが千円だろうが絶対に探し出して追い詰めてやる。払えないって言っても1円もまけない。ナメんじゃねーや、バカヤロー!

このまま支払いがなければ、少額裁判に持ち込む覚悟を持つ。
(後日、少額裁判の傍聴にも行ってみた)

7月初旬よりストレスのために脚と胴に20箇所以上「虫刺症」が出ている。
(虫刺症とは、皮膚に出る湿疹の一種。虫に刺されてもいないのに、まるで虫に刺されたように赤く腫れ上がり、異常にかゆい。症状が出ると数時間で水ぶくれになり、パンパンに水が溜まる。毎日、約3個ずつ増えていく。塗り薬はあまり効かない。症状が少し治まり、かさぶたになった後も半年以上かゆみが出て、あとが残る。気が狂いそうなぐらいかゆいし、眠れない。
ちなみに、蚊に刺されてもいないのに、まるで蚊に刺されたような症状が皮膚に現れる「蚊刺症」というのもある。どちらもストレスが原因。

初台の古いアパートからの戻り道、泣きそうになりながらキューピーさんに電話をし、報告する。彼はいくつかの指示を出してくれた。
指示その1「その地域の区役所の出張所を探すこと」
指示その2「その出張所で、住民票の除票を取ること」
出張所はすぐに見つかったが、ものすごく不安になる。というか、さっきからMAX不安だけど。
魚住の不安1「親族でもない人間が住民票を取れるものなのか」
不安解除1「債権者であれば取れる。債権者と証明できるもの、魚住さんの身分証明書、印鑑などを持っているか」
その時、すべて持っていた。自分の用意の良さを褒めてあげたい。
魚住の不安その2「OO氏の名前の漢字を知らない」
知っていたのは、OO氏のふざけた芸名。振込の際に「オ●●● ●カ●●」と通帳に記帳されるので「へー、本名はどんな字なんだろう?」とのんきなことを思っていた。
不安解除2「債権者である証明ができれば何とかなる!」
何とかなりました。債権者であるという証明があったのと、その地域で住んでいた住所が決め手。おまけに先ほど無駄足と分かりながらも探したアパートの名前が「●●荘」ということが分かっていたのも信憑性が増しました。まさに人生に無駄なし! そして、住民票の除票が取れて、OO氏が現在住んでいる住所と彼の本名の漢字が分かったことが何よりの収穫! これで絶対に逃がさない!
指示その3「怒りが頂点に達している勢いで、今、留守電に怒りの催促電話を入れておいた方がいい」
留守電入れました。怒りました、魚住。

午後6時すぎ。OO氏から直接電話がきた。
私の怒りの留守電に慌てたのか、「内容証明を送ってある」というひと言が効いたのか。
しかし……「ウオちゃん、ゴメンねー。俺、今、製薬会社の工場をマレーシアで立ち上げてるところでさ、1ヶ月ぐらいずっとマレーシアに行きっぱなしだったんだよ。海外だと携帯つながらないんで持っててもしょうがないから日本に置いていってたんで連絡できなくてゴメンなー」

製薬会社だと? マレーシア? 工場立ち上げだぁ? もう騙されないぞ。バカにすんな。ナメんじゃねーぞ。だいたい事務所のあったビルの清掃員に7月末に引っ越して、8月6日頃まで来ているのを確認しているんだ。1ヶ月間もマレーシアに行きっぱなしという話が嘘っぱちなのも分かっている。しかし、そんなウソ、よくまあ次から次へと出るもんだ。

「すごく遅くなって申し訳なかったけど、さっき振り込んだから。今日金曜日だからさ、月曜日の朝には入ってると思うから」
「さっきって何時ですか? 何時に振り込んだんですか? どこの銀行ですか?」
「4時すぎだから、翌日扱いになると思うけど、M銀行だから、月曜日の午前中には振り込まれると思うから。万が一、入ってなかったら連絡して」
こんなやり取り、もう何回目だぁ? でも、これで終わればいいけど……。

しかし、これで終わらなかったんだよね、これが。
とりあえず、怒濤の8.16は終わった……。疲れた。

絶対に逃がすもんか!

●2002年8月18日
キューピーさんから電話が入る。
先日、住民票の除票を取ったことで判明したOO氏の現住所の近くに偶然来ているとのこと。確認してくれた結果、逃げずにその住所に住んでいるらしい。OO氏は在宅かどうかは不明だが、OO家はそこで生活している気配は十分あるようだ。ありがとう、キューピーさんとQ奥さん。

●2002年8月19日
今日で全てが解決するはずだった(いや、こんなこと怒らないのが一番なのだが)。
確かに、金曜日に連絡があった通り、振り込まれてはいました。でも、振り込まれていたのは5万円。

あと残り、10万円振り込まなければいけないのは分かるはず。先に出していた請求書は手元に残っていないのか。留守電も散々入れていたはず。金がないからコレしか払えないというのか。もう分割はこりごり。OO氏と仕事をするようになってから消費者金融に借金が増えてしまった。ちゃんと請求した金額を「まとめて」払えよ、バカヤロー!
キューピーさんが出張中のため、Q奥さんに相談。
やはり判明した現住所に内容証明を送りつけることにした。午後4時すぎに杉並郵便局にて、配達証明付きで発送。同時に、OO氏の留守電に怒り頂点の電話を入れる。

●2002年8月22日
内容証明がOO氏宅に届いた様子がない。
インターネットの郵便物追跡でも「不在のため持ち戻り」と出る。
誰もいないのかよっ!3人目の奥さんにも逃げられたのかよっ!
待てよ。そこは奥さんの実家のハズ。出ていくのはOO氏の方だよなぁ。イライラする。

●2002年8月24日
早朝5時半。携帯電話が鳴る。寝ていて起きられなかった。
起きてから見るとOO氏から。留守電にメッセージが入っていた。
「工場立ち上げでマレーシアに再び行ってたんだけど、携帯電話が使えなかったのでずっと電源を切っていて。たった今、日本に着いたんだけど、留守電を聞いたらカミさんから「あなたに内容証明っていうのが送られてきてる」って聞いてビックリして電話しました。先日、振り込んだ金額では足りませんでしたか?いくらでしたっけ?あと、いくら振り込めばいいですか?また電話します」
なんだと、コノヤロー!そのくらい把握しておけ!他人事のように話しやがって!
そもそもそんなウソに信憑性を持たせるために、こんな早朝に電話しやがって。ウソがどんどん増えていってるじゃないか!

OO氏の留守電にこれ以上ないぐらい怒りの催促(文句)のメッセージを入れる。内容は以下の通り。
「ウソはもう結構です。とことん私を馬鹿にするつもりですか。請求書は先に送っているはずです。そういった細かい事務的なことをキチンとやっていくのも仕事だと思いませんか。だらしなさすぎます。とにかくそちらに送った内容証明に書いてありますが、今日までに残金5万円を振り込まないと私は本気で法的手続きを取ります。金額ではありません。あまりのいい加減さに私は頭にきています。馬鹿にするのもいい加減にしてください。責任感がなさ過ぎます。今まで我慢をしてきましたがもう限界です。これっぽっちも信用できません。私は金持ちのお嬢様の道楽で自営業をしているわけじゃないんですよ。もう一度言います。今日中に残金5万円を振り込んでください」
あまりに怒りすぎて何を言ってるのか分からなくなることを避けたかったので予め台本を用意して怒りながら読んだのですが、少しは効果はあったようです。
でも、この留守電メッセージより現住所に送った内容証明の方が彼にとって驚愕だったのだと思います。何故なら、現住所はなんやかやとのらりくらりと交わして誰にも教えてなかったのだから。それを知っているというのはかなりビビったと思われます。

OO氏から電話。
神妙な様子で「魚住さんの言う通りです。申し訳ない。ホントにそうだよね。だらしなさすぎるよね。本当にすみません。今日中に振り込むというのは無理だけど、月曜に朝イチには入金されているようにするからもうちょっとだけ待ってください。絶対に振り込まれてるようにするから」
全然、信用できない。反省しているように思えない。
反省してないって事が決定的になるのが、この後またまた飛び出たウソから。
「俺さ、しばらくカメラマンの仕事休むんだよ。事務所も閉めたし、実家の製薬会社(※1)を手伝うことになったから、当分こっちにいるんだ(※2)。新しい携帯電話の番号を教えるから月曜日に振込がないようなら(※3)そこに電話して。俺もさー、大変だったんだよ、父親が死んでさ(※4)」

(※1)実家が製薬会社をやってたなんて初耳。信じられない。
(※2)こっちってどっちだよ?
(※3)「振込がないようなら」?今度はどんなウソつく気なんだ!
(※4)ついに父親を殺しちゃったよ、この人。私はもう信用できないので「父親が死んでさ」って言われて「あ、そうですか」って軽く流したら私がビックリしていないものだから、もう一度「父親が死んで大変だった」と繰り返した。少し違和感がありました。この人の軽いキャラからしたら「親父が死んでさー」とか言いそうなのに「父親が…」という言い方がわざわざ感がありあり。
でも後日、このちょっとした言い方の謎が何となく分かりました。
先述のF社のMさんにOO氏とのやりとりの全容を報告し、「父親が死んでさー」のくだりのところでMさんが「それは俺のことだよ」と言ったのです。そういえば、今年の7月にMさんの父上の訃報をFAXでもらっていて、私は通夜・葬儀に行けなかったから弔電を打っていた。
つまり、OO氏はひと言も「俺の…」とか「自分の…」という言い方はしていない。
「父親が…」これは誰の父親でもいいわけです。嘘つきを通り越して、詐欺師の話し方みたいな気がしてきた。何度も言うがこれっぽっちも信用できません。

●8月26日
OO氏から留守電にメッセージ。
「大変遅くなりましたが、振り込みました。少なくて申し訳ないですが、遅くなってお待たせしたし、いろいろ経費としてかかったでしょうから5千円プラスしておきました」とのこと。ちょっと上からな物言いと誇らしげなところにまたまたカチンとくる。でも、割引してくれと言われるより全然マシなので黙っておこうと思う。

やっとやっとやっとやっと振込があった。残り5万円+5千円の入金を確認。
Q奥さんに電話して、入気が確認できたことを報告。
OO氏に電話すると留守電。とりあえず、入金を確認したことを告げる。
フリー編集者の友人・Tさんに報告。

心身ともに疲れ果てた。でも今回、たくさんの人に相談に乗ってもらって、迷惑もかけたし、助言もいただいたし、助けていただきました。他人のことは冷静に聞けたり、判断できるのにどうしていつも自分のことになるとどうしていいか分からなくなるのだろう。冷静さも客観性も全くなくなってしまう。この世の終わりみたいな気になる。
今回のこともどうしていいか分からなかったし、ものすごく不安だったし、怒りで眠れないほどだった。そんな時、「こうすればいい」とアドバイスしてくれる人がいるだけで、気持ちはすごく楽になった。
相談に乗ってくれたり、代わりに情報を集めてくれたTさんやF社のMさん。
「そんなヤツは許せない!絶対に全額支払ってもらいましょう!」と代わりに怒ってくれたキューピーさんとQ奥さん。様々な指示やアドバイスをしてくれて、本当にありがとうございました。

少額裁判をしようと考えていました。少額裁判の傍聴もしてみました。でも、もうこの時点で疲れ果てています。心も体も壊れました。もう限界です。これにて、すべて終了にしようと思います。

おわりに

世の中からしたら大した金額でもないのに、キチンと支払われなかっただけで、一人の生活や人生の時計がうまく動かなくなることがあります。
「もしもあの時…」なんて話は今さらです。

でも私は意外とあっけらかんとしている部分もあるので、1本お仕事が仕上がるたびに「やっぱ私って天才!」なんて声に出して笑っています。
そう、私は昔っから仕事はできるんです。大学出てないわりに良い文章を書くんですよ(自画自賛)。
以前友人であった芸人占い師・ゲッターズ飯田氏の占いで「魚住さんは書いていれば良いんです。『書く』ことで運気が上がる人です」と言われたし。

さて、最後にもう一度言います。法律関係のことはとても面倒臭いです。非常に大変です。でも、泣き寝入りしたくないなら、つかれた大嘘に怒っているなら、その怒りをパワーに変えて、全額取り返すべきです。

もう一度、明記しておきます。無料の法律相談です。

★日本司法支援センター「法テラス」(国が設立した法的トラブル解決の総合案内所)
https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/faq/faq_2/index.html


それでは、また。

還暦まで、あと11日

この連載エッセイ[連載/ボクっ娘のなれの果て、還暦を迎える。]は還暦後も続いていきます。

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