白い彼女とわたしの出会い
わたしが彼女に出会ったのは、寒さが身に染みて物寂しさを感じ出した冬頃だっただろう。
夫と一緒に新しく住む予定の街を散策しながら少し歩いた所にあるショッピングセンターへ向かった。
そしてなんとなくそこにあるホームセンターに入った。
わたしはホームセンターへ行くといつも行く場所がある。個々に仕切られた小さな部屋にいるガラスの向こうの小さな子たちを眺める。
寝ている子や一人で遊んでいる子、こちらに興味があるように見てくる本当に小さな、でも確かに生きている子達。
端から順に中の子たちを食い入るように眺めていた。そしてわたしは白い彼女の前で立ち止まった。
彼女はわたしを見て二足で立ちガラスに手を当てて足踏みをしていた。白くて小さな尻尾は可愛く揺れていた。
「待ってたよ」
そう言われた気がした。
「この子」
それが白い彼女との出会いだった。
他の子に比べて彼女は少しだけ大きかった。ここに長くいるのだろうか。こんなに可愛くてこんなに愛らしくて、そしてこんなにも麗しいのに。
彼女のプロフィールが書かれている紙が貼ってある。その横に大きく書かれた数字は他の子たちに比べて少し小さい数だった。
彼女を見ているわたしを彼女も見てくれていた。ガラス越しに言いようのない何かを感じた。
いつもはしばらくして
「じゃあ、またね。元気でね」
と言ってその場から離れるのに、できなかった。この子から離れる事ができなかった。しばらく悩んでわたしはこの白い彼女を家族にすることに決めた。
いつも「この子だ!」と思うけれど家族に迎えるまでにはならなかった。けれど彼女とは「この子だ!」と確信めいたものはなかったのだけれど、とにかく離れがたかった。それが答えだったような気がする。
考える暇はなかった。今ここをこの場を離れたら彼女があっという間にどこかへ行ってしまったらと思うと耐えられなかった。
家族を迎える予定など全くなかった私たちだが、新しい生活に彼女も参加する事を夫も賛成してくれた。
その夜、わたしは布団の中でまだ名前もない新しい家族の彼女が小さな部屋で眠っているのを想像しながら呟いた。
「おやすみ、いい夢見てね」
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