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タコノマクラの発生

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本日のウニ:タコノマクラ⑦後期原腸胚

本日のウニ:タコノマクラ⑦後期原腸胚

だいぶ久しぶりになってしまいましたが、タコノマクラの正常発生シリーズ第7弾の後期原腸胚です。受精してから34時間経過したものになります。前回の記事同様に色素細胞が外胚葉上皮の中を遊走し全身に散らばっている様子が見て取れると思います。この写真は背腹軸方向から見ているものになりますが、色素細胞は背側の外胚葉のみに存在しており、腹側には一切見られません。これは我々が育てているバフンウニやハリサンショウウ

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本日のウニ:タコノマクラ⑥初期〜中期原腸胚

本日のウニ:タコノマクラ⑥初期〜中期原腸胚

受精後24時間経ったタコノマクラの胚です。ここでも前回の胞胚から一気に時間が経ってしまっていますが、1日中見張っているわけにはいかないので少し間が空いています。植物局側、つまり体の後方から原腸が少しだけ陥入し始めています。また、これに先立って将来骨片を作る一次間充織細胞が胞胚腔内にたくさん移入し歩き回っています。バフンウニの胚に比べて中が非常に見やすいですね。さらに、お気付きの読者はだいぶ”玄人”

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本日のウニ:タコノマクラ⑤孵化前後期

本日のウニ:タコノマクラ⑤孵化前後期

タコノマクラは初夏に性成熟して卵と精子を放出します。そのため、飼育は室温で行うことになります。今回紹介するのは室温で6時間程度飼育した桑実胚(morula)ー孵化前胞胚(unhatched blastula)になります。タコノマクラの発生の中で最も好きなステージがこの桑実胚になります。理由はわかりませんが。。。細胞が非常に透明でレンズから最も離れた場所でもすごくキレイに観察することができるからかも

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本日のウニ:タコノマクラ④16−32細胞期

本日のウニ:タコノマクラ④16−32細胞期

だいぶ間が空いてしまいましたが、タコノマクラ の16細胞期です。バフンウニよりも圧倒的に透明であるため、このくらいの細胞数から各割球にフォーカスをあてるのが難しくなってきます。どちらが奥でどちらが手前かの区別がつきにくいです。ただし、割球間の結合が少しだけルーズであるため、図の上から中割球、大割球、小割球と分かれているのを非常に観察しやすい種です。大割球と小割球を生み出す植物局側の細胞4つだけ、不

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本日のウニ:タコノマクラ③4−8細胞期

本日のウニ:タコノマクラ③4−8細胞期

第2卵割を終えた4細胞期のタコノマクラ胚です。相変わらず透き通っていて核まで綺麗に見えますね。バフンウニのようにしっかりとしたパターンを示さない個体もいるため、写真のように少し卵割面がずれているものも見られます。この辺はバフンウニの4細胞期と比較してみてもらうと楽しいかもしれませんね。また別の機会に出しますが、ハリサンショウウニの4細胞期はもっと衝撃的です。

さらに第3卵割を終えた8細胞期です。

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本日のウニ:タコノマクラ②2細胞期

本日のウニ:タコノマクラ②2細胞期

受精後1時間半ほど経過した2細胞期のタコノマクラの胚です。透明さは相変わらずで、2つの細胞とも核がはっきり見えます。発生初期に細胞が割れることで生じる娘細胞は割れた後に細胞の成長を伴わないため、その期間の細胞分裂は特別に、「卵割(らんかつ)」と呼ばれます。卵割によって生じる細胞は「割球(かっきゅう)」と呼ばれます。以前紹介したバフンウニや今回紹介しているタコノマクラの割球はお互いに接着しているうえ

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本日のウニ:タコノマクラ①受精卵

本日のウニ:タコノマクラ①受精卵

久々にウニの発生シリーズの更新です。今回はタコノマクラ Clypeaster japonicus の発生です。タコノマクラはバフンウニなどの正形類いわゆるウニ型のウニ達と違って、平べったい形をしています。これらの仲間は不正形類と呼ばれています。スカシカシパンやブンブクなども不正形類に分類されます。親に関してはまた後ほど。

写真は受精後1時間の受精卵です。大きさは直径が100 µmよりちょっと小さ

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本日のウニ:タコノマクラ⓪親

本日のウニ:タコノマクラ⓪親

発生から少し脱線して親個体の紹介を。

タコノマクラはみなさんがイメージする一般的なウニと違い、不正形類と呼ばれるグループに属しています。少し丸っこくてトゲトゲしている正形類のウニは五放射相称の体軸を持っており、前も後ろもありませんが、タコノマクラなどの不正形類ではその体に前後軸が存在しています。写真のタコノマクラは左側が前で右側が後ろになります。上からみるとわかりにくいのですが、ひっくり返すと肛

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