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かるがも団地『秒で飛び立つハミングバード』感想

はじめに

こんにちは。うりくらです。
先日、かるがも団地『秒で飛び立つハミングバード』千穐楽最終公演、およびディレイ配信を観劇しました。(配信での販売期間は終了しています)。

劇場での観劇後、120分フルで感情が揺さぶられて、帰路は言葉にし難い不思議な心地良さを覚えました。

現在は上演台本のみ販売中となっています。
私も今回初めて購入させていただきました。

こんな自分が一丁前に感想noteなど上げていいのかと葛藤しつつも、今回はやはり自分の想いを届けたいと思い、投稿します。生暖かい目でお読み頂ければ幸いです。

以下、感想になります。



遠回りが近道になる

私が劇場での観劇で最も印象に残ったのは、袖山さん演じる仁科さん、そして一嶋さん演じる東先生でした。
私もまた、長期間にわたる休職・退職を経験した人間です。2人の、憂い、迷い、ときに怒る表情が、これまでの自分を見ているようで胸が締め付けられる思いでした。
袖山さんは、冒頭のアラームを何度かけても起きる気にならない場面や、他人の幸せを素直に喜べない気持ち、自分が最も輝いていたスキー部時代に触れたくない描写など、1つ1つを丁寧に表現されていました。
一嶋さんの演技で印象に残っているのは、弁当屋さんで店頭に立っている時、ヒヨドリを見つけた瞬間の微笑です。心が潤いを失っていても、好きだったものを見つけるとつい顔が少し綻んでしまう。まだそれほど時間は経っていませんが、そんな自分を重ねて、懐かしく思いました。
私もとても運が良かったこと、またご縁に恵まれたこともあり、精神的な窮地を脱して、休職期間を必要な時間として自分の中で整理できました。
作中の台詞でも触れられていましたが、休み続けても、適切なタイミングなんてものはなくて、最後はやはり自分の意思で殻を破ることが大切だと感じています。

この感想を書き進めているうちに、休職後初めての面接に臨み、内定を頂きました。「採用」の二文字を見たとき、思わず叫んでしまいました。
紛れもなく、いま青春です。


気の強い人

今回、氷室さんを演じる助川さんの演技を観るのは初めてでしたが、2022年かるがも団地新年会のコーナーでお見かけして以来、楽しみにしていました。
観劇中、仁科さんとのやりとりで「氷室さんのズバズバくる感じ、たまらん……。」と内心思っていたので、自分の思いが見透かされたような台詞に笑いを堪えるのに必死でした。
身近な人からよく、「うりくらくんは自我が強い人だと振り回されちゃうから、優しい人の方がいいよ?」と忠告をいただきますが、完全に図星です。振り回されて痛めつけられても、イベントでみなさんの笑いに変えて昇華できれば儲けものですね。(その節はお世話になりました。)
助川さん主宰の「知らない星」Youtubeを拝見すると、温厚な助川さんがそこにはいらっしゃいます。今回の役とのギャップに、改めて役者ってすごいな、と素人ながら思いました。


Platonic love

今作では、陽と晃希のアベック、そして畠中先生から絵莉子先生へと2つの恋が描かれています。(ほかの関係を恋、とカウントするかは意見の分かれるところですね。)

同棲中のアベックということで、身近なエピソードを1つ。
先日、私の知己と彼女さんが同棲している自宅へお招きいただきました。友人と彼女さんが2人で話している様子は微笑ましく、長年連れ添った夫婦のような空気感が流れていました。成り行きで彼女さんと2人で、これまでの馴れ初めやお互いの悩みを話すことに。彼女さんから、もう付き合って数年になるのに、追い抜くように友人が結婚していく焦りを抱えつつも、彼(私の友人)には話せない葛藤を告白されました。「同棲するしたらしたで、いろいろあるよな」と陽と晃希を思い起こしていました。

話を戻すと、陽と晃希がまとう空気は、先に挙げたような、ほど良く甘いカップルそのものでした。大嵜さんと武田さんの、言葉と言葉の間であったり、距離感であったり、視線の交わし方であったり、様々な要素が組み合わさって生み出されるのだと解釈してます。


一方畠中先生の恋はというと。
職場での恋は、「同僚の目が気になる」「別れたら後処理が面倒」と私の大親友が声を大にして言っていました。けれど、周りを気にしてやめられるなら最初から好きになってないんですよね。

家入さんの演技は、どこか頼りないけど男らしくいようとする、年下男子のまっすぐな気持ちが台詞や表情に表れていて、微笑ましかったです。年上女子に好意を持つ男性って、こんな風に見えるのかと客観的に眺めていたところで、この台詞。

「知らない間に、モチベになってたんだな。」

何気ない台詞ですが、すごくリアルが詰まった一言です。
こうしたシーンを、過不足なく表現できるのも、藤田さんと役者の皆さんの素晴らしい共同作業がなせる技だと思います。

それを受け止める絵莉子先生は、またまた純粋無垢で。
「あざす!」とか一見言わなそうなのに、自然と台詞が入ってきたのは、(同時視聴スペースでも触れられていましたが、)そこまでの場面の積み重ねと、柿原さんの演技力によるものだと思います。


信頼

私が一番見ている役者さんというと、おそらく宮野さんになります。
『なんとなく幸せだった2022』のコーヒー坊や、『意味なしサチコ、三度目の朝』でのアイドル(は主役を食うインパクトでしたが)、など枚挙に暇がありませんが、作品にパンチを効かせるような、一歩間違えれば劇薬にもなり得る役。藤田さんが宮野さんに預けて、爽快に演じきるこの関係が、おふたりの間の信頼が感じられて本当に大好きです。

ボケの応酬

毎度かるがも団地の演劇を見ると、「藤田さんの頭の中を覗いてみたい」という欲望が頭をもたげます。ヤホー漫才で人気を博した某漫才師顔負けの、畳み掛けるような小ネタやボケは私のツボで、物語の本筋もさることながらコメディ部分も同等に楽しみです。

好きすぎて家で口ずさんでます。リアルでも同棲や入籍の話ばかり聞くし。
今度目の前で彼氏紹介されたりしたら、虎になりますね。トラウマだけに。

溢れんばかりの「キラめき」

順番が前後しますが…。
これまで学生や20代前半を中心に描いてきた脚本の藤田さんが、今回(初めて?)アラサー間近の人びとを題材にされるということでした。あらすじを見た瞬間、これはなにか自分の中できっかけになるかもしれない、と直感で思いました。

結論から申し上げると、この直感は正しかったです。
迷っていた私は、最後の一押しが欲しかった。

舞台の上の皆さんの眩しさに、救われました。


1作で何度もおいしい

今回は、
1度目 劇場にて、千穐楽最終公演
2度目 同時視聴スペースを聴きながら
3度目 ディスプレイで視覚で物語を楽しむ
4度目 イヤホン装着で、音響を楽しむ

と計4度、観劇しました。

スペースを拝聴して思ったのは、やはり専門の知識を踏まえた着眼点や裏側エピソードは魅力的で新鮮です。私は演劇経験のない全くの素人なので、自分の人生経験に引きつけて見たり、これまでの(他ジャンルも含めて)作品を踏まえての理解に終始してしまいます。肩肘張りすぎない同時視聴がかるがも団地の皆さんの良いところだと思うので、このままの空気感で、次回もスペースがあったらいいなといちファンとして楽しみにしてます。

また以前から、音響にもこだわっている旨をお話しされていましたが、今回は時間に余裕があり「音響メイン」で1回まるまる楽しむことができました。
劇場では感じ取れなかった、晃希と陽の職場でのハイライトシーンの環境音や、それぞれの家の窓枠の音の違いなど、随所でこだわりを発見できて、次回以降も継続していきたい試みになりました。

おわりに

この作品を、もし学生時代の自分が見ていたら?
心に響くことはあっても、仁科さんや東先生に感情移入することはなかったと思います。
今回の観劇で、「そういうことがあってもいいんだな」と自己肯定できたのは、これまでの日々が無駄ではなかった証拠です。
縁あって、かるがも団地の作品が享受できることに感謝しつつ、感想とさせていただきます。



次回は待望の

すでにSNS等でも告知されていますが、5周年記念企画と銘打ち、次回の第7回本公演、第8回公演の予定がすでに発表になっています。

第7回公演の舞台は、私にとって第二の故郷であり、大学時代を過ごした南大沢。
今からワクワクが止まりません。

それではまた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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