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やんごとなき犬っころ

かの犬っころが亡くなってから4ヶ月が経つ。
常より皆に愛され、愛嬌を振り撒き、そして勇敢に闘って亡くなった。
誰もがその犬っころの勇姿を讃え、その死を嘆き悲しんだ。
彼の闘いの舞台となった松の木の下には彼の業績を伝える為の碑が建てられ、松の木と共にこれからも永劫守り残されていくこととなった。
かの犬っころの記憶はいつまでも語り継がれるだろうか。
この地の人々の心に残り続けるだろうか。
未来のことはわからない。
だが私もかのやんごとなき犬っころに救われた者の一人として生涯感謝の念を絶やさないことを誓おう。

私は散歩の途中でふと足を止めた。
愛犬を4ヶ月前に失ってからも毎日散歩に行っていた癖が抜けず、今は一人で同じコースを歩いている。
そのお決まりの道中の遊歩道の途中に唐突に松の木と古ぼけた碑があることに気が付いたのだ。
いつも通っているコースだったのに今まで全く気に留めることもなかった。
その碑はどうやらその昔、この辺りにあった村に野盗が現れた際に村人を守ろうと勇敢に闘った一匹の犬を讃えるもののようである。
数百年経とうともその犬に対する村人たちの感謝の念はこの松の木と碑と共に残り続けているのだろうか。
何となく少しだけ軽くなった心持ちで私は帰途についた。

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