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屋根の下 4話〜記念の夜〜

〜4話 記念の夜〜


次の日おっちゃんは親方に話してくれた。


どうなるのか
おっちゃんはちゃんと聞いてくれるのか

ソワソワしていた俺は気づいたら
工事現場に向かっていた。



「断られるかなー。」

まだ中学卒業したての小僧だし
右も左もわからない。
でも稼いであれ買って…これ買って…

なんて不安と期待の入り混じった気持ちになっていた。



その日の夕方
おっちゃんが仕事終わるのがものすごく遅く感じた。



やっとおっちゃんの姿が見えた。


「おっちゃん!!どうだった?」

「おー!良いってよ!しばらくは日給8000円だって!それでもいいなら!って」

「8000円?そんなにもらえるの?」

「おいおい。8000円なんかで満足するな!
って言っても何もできない段階で8000円はいい給料だな!まぁ頑張ってみろ!」

「うん!頑張る!!」

「あと…おっちゃんって現場で呼ぶのは良くない。これからは田代さんって呼びや!」

「田代さん…おっちゃん田代って言うの?笑」

「何がおかしいんだよ。田代さん!な!」

「わかった!」

「お前さんは名前なんて言うんだ?」

「安室未来!安室でいいよ!」

「なんかなー。安室って呼びにくいし、若干田代と似てるから未来にしよう!」

「なんだよそれ!笑。まぁ未来でもいいよ!」

「あ、あと。現場では敬語使えよ!…未来!」

「うん!…いや…はい!!…か。笑」

「まぁ普段は気にしなくていいよ!」

「はい!!ありがとう!ございます…笑」

「ところで未来、これからどうすんだ?家がなきゃ仕事にだって支障出るぞ?」

「そうだ…どうしよう…」

「まぁ、いい!俺ん家にとりあえず住め!」

「いいの?」

「いいよ!1人より楽しいだろ!」

「うん!ありがとう!」


明日から始まる期待と不安を背負いながら
"我が家"に向かって歩いていた。


もちろん銭湯によってから…


「スッキリしたなー。未来!そういえばお前作業着は?なんかあるのか?」

「あ!ジャージなら!」

「お前よー。職人の卵かもしれねーけどジャージはみっともねーぞ?作業着はしっかり!ビシッと!カッコいいの着とけよ!俺が祝いとして出してやる!作業着買いいくぞ!」


おっちゃんは未来を連れて半ば強引に作業着屋さんへ連れていった。


「へー。こんなにいっぱい作業着ってあるんだー。」

「そうよ!この中からな?好きなブランドとかよ?好きな形。ズボンはニッカがいいのか?それともジーンズがいいのか?とかな?
自分の色を出していくんよ!」

「へー。あ!おっちゃん!俺、ズボンが膨らんでるやつがいい!」

「未来。それをニッカって言うんや。履いてみや。」

「んー。なんか微妙…笑」

「まだ未来は顔が幼いからなぁ…笑。全く似合ってねーけどこれから似合っていくんじゃねーか?」

「おっちゃんはいつもジーンズっぽいやつなんだね!」

「おー。俺はなぁ…やっぱりスタイリッシュな方が好きなんだよなー。それこそ昔はニッカだったぞ?」

「スタイリッシュって…笑。おっちゃんなのに…笑」

「あ?なんか言ったか?」

「いや!別に!何も言ってません!笑。
んじゃ俺もおっちゃんと同じやつにするよ!スタイリッシュなやつ!」

「なんかお前バカにしてねーか?笑。
まぁそれが無難だろ?2、3枚は買っとこう」

それからおっちゃんに言われるがまま
腰袋に安全靴、インナーに雨合羽。

良くわからないけどたくさん買ってもらった。


「全部で48000円になります!」

「え!めちゃくちゃ高いやん!ゲーム5本は買えるよ!?」

「バカ!恥ずかしい!これは最低限の物だけや!ここから好きな道具とかで金がかかってくる。こんなのもは初期投資や!」

「そうなんだ!おっちゃん!ありがとう!!頑張って働いて返すね!」

「たわけー!出世払いでいいわ!頑張って働いてくれよ!」


と言ったおっちゃんの顔は今までで一番嬉しそうな顔をしていた。


俺は作業着や道具を買ったことで一気にテンションが上がってしまい
作業着を着たまま寝床についてしまった。



とうとう明日から社会人となる記念すべき一夜となった…



続く。

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