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スイミーの教訓

小学校の国語の教科書に載っている物語の中で、いちばん多くの人の記憶に残っているのはどの作品か。
年代によって違うとは思うが、おそらく『スイミー』がトップクラスの人気を有するのではないだろうか。

実際、「ねとらぼ」が2021年に行ったアンケートでは『スイミー』が首位だった。

なぜ『スイミー』は多くの人の心に残るのか。
理由はいろいろと考えられるけれど、わかりやすいストーリーと、読んだ後に得られる教訓の多様性に魅力があるように思う。

主人公のスイミーは真っ黒な魚で、仲間は皆赤い体をしている。
彼は仲間と協力し、大きな魚影を作って天敵のマグロを追い払う。
単純明快なストーリーだが、そこからさまざまな教訓が導き出せる。

「みんな違ってみんな良い」
「適材適所が大事」
「一人では微力でも仲間と協力すれば大きな力を発揮できる」

作者のレオ・レオニはユダヤ系の父を持ったオランダ人で、戦間期にイタリアに移住したが、ファシストから迫害を受けアメリカに亡命したという経歴の持ち主だから、もしかしたらこの作品には「人種差別反対」というメッセージが込められているのかもしれない。

けれど、そういう文脈を意識せずに読んでも、『スイミー』の読者は自分の人生に必要な教訓を得られるだろう。
優れた文芸作品というのは、えてして読者にこのような「読みの幅」を許してくれるものではないだろうか。

たとえ作者の意図とは離れていても、それぞれの読者に価値ある読後感を提供してくれる。
そんな「幅」のある作品を、俺も短歌でつくっていきたい。

スイミーを授業で読んだ水曜の
きゅう食は白み魚のフライ

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