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午前十時の映画祭 

この催しについて知ったのは、ちょうど昨年の今頃だったのではないかと思います。
以前いた職場で、途中から福利厚生の券をもらうようになり、その券で映画を観たり旅行をしたりする少し安く楽しめるというものだったのですが、なにせもらうようになったのがちょうどコロナ禍になってからだったので一年目はまったく使わないまま終わり、二年目になって、ようやく様子をみつつ映画を観るようになってきたのでした。
それまで映画を観る習慣があまりなかったので、年に一度観ればよいほうというくらいで、よほど興味のあるものしか観る気になれなかったのですが、その券の後押しもあり、「試しにこれも観てみるか」という気持ちが起きてきて、それほど映画好きでもないものの、サービスデイでも価格が1500円のままである、この映画祭の作品も観てみる気になったのでした。

一番初めに観たのは、たしか「イングリッシュペーシェント」だったと思います。紹介文をよく覚えていないのですが、「砂漠で繰り広げられる人妻との恋愛」みたいに書いてあって、あまり興味をひかれなかったのですが、ものは試しと思って観てみると……、あまりの面白さに、びっくりしてしまいました。確かに紹介文はなにも間違ったことを書いてはいないのですが、三時間の映画を数行でまとめようとすることにそもそも無理があります。
冒頭から、アラブのようなアフリカのような、不思議な民族音楽風の女性の歌が流れ、洞窟の中に入り、中の壁に書かれた象形文字がアップで映し出されるやらで、あっという間に別世界に。砂漠の真ん中で遭難して(大冒険をしたのではなく、ちょっと移動したら運悪く砂嵐に巻き込まれて)、そのまま生きるか死ぬかの状況になって、今まで隠していた想いがあふれて恋が始まってしまい、そうしてそれはやがて国の戦争の状況にまで関わっていくような……、というなんとも壮大なストーリーでした。映画で観ないことには、外国の街の様子や、砂漠の砂嵐や、洞窟の中やらをこのようにありありと想像することはなかなかできないことてしょう。本を読むときにイメージをわきやすくするためにも、もう少し映画を観たほうがいいなと思い、今年はこの映画祭の作品をを全部観ようと思いました。

それから、ゴッドファーザーだとか、自分の好みでだったらおそらく観なかったであろう映画を、たくさん観ることができました。
二週間に一回入れ替えがあるので、月に二回は通う計算です。
ついでに、午後や夕方に現代の映画も観る日もあり、にわか映画漬けのよう一年になりました。……家でタブレットで観ると、飽きてしまってなかなか最後まで観られないんですよね……、映画館まで片道40分くらいだから、家で観ればその分たくさん見られるのかもしれないけれど、あの集中できる雰囲気が私には必要なのかもしれません。
さかなのこやアバターなども、この映画祭がなければ、あえて映画館に足を運んで観ようとしなかったかもしれません。
来年も続けるかはわかりませんが、それなりに楽しい一年でした。

……そうして、けっきょく全部を観たわけではなく、マトリックスは一話目に快く寝てしまったので(不眠症の私がゆっくり寝られるのは、それはそれですごいことです、でも家でマトリックスをみてもほかのことが気になって寝れない)、二話、三話は観なかったり(私はアクション映画にはあまり興味がないようです、映画が悪いわけではありません)。忙しくてまあいいやとなった週や(キャバレー観てみたかったな)、怪獣ものはまあいいやとか、そんかこんかで、行かなかった回もありました。

恋に落ちたシェイクスピアや、エデンの東は、二十年くらい前に、大学の視聴覚コーナーでDVDを観たような覚えがありました。昔の映画をみてみたいということで選んだのだと思いますが、当時どういう基準で選んだかはよく覚えていませんが、人気のある映画はずっと人気があるのでしょう。
レインマンは小学生のときテレビで見てよく意味がわからず覚えていなかったけれど、この映画祭で見て、すごくよかった。出るときにハンカチを落としてしまい、拾ってくれた方に、「いい映画でしたね」と言われていたのが印象的でした。

あと、グラディエーターとか、ゴッドファーザーとか、ディアハンターとか、心に残るような場面もありつつ、殺戮場面や残酷な場面がちょっと多すぎるような気がしたのですが……、人間の本質を書こうと思うとああなるのでしょうか、昔は今よりも、ちょっと脇道にそれたら怖い目に遭うような世の中だったのかもしれないけれど……(今も私が知らないだけでそうだったり?)。
残酷なシーンを描いて、人はこれだけ残酷になれるんだから、こうならないように気をつけねばということなのか、今だから観れたけど、二十代のころだったら、もっとショックだったような気もします(神経質すぎ?)。

教養を高めるために映画を観よう、でもないですが、ブレードランナーは、観てからいろいろな本を読むと、けっこうあちこちで名前を聞くような気がするとか、ウォレスとグルミットの最後に羊のショーンが出てきて、おおこれが、と思ったり、何十年も選ばれ続けている映画はそれなりに現代にも影響を与えている映画なんだなと、そういうのを凝縮して観れたのもよかったです。自分で観るものを選んでいると偏るので、たまにはこういうのもいいものです。
あとは、今上映されているレナードの朝が驚きの内容で、やはり紹介文からは計り知れない未知の世界が広がっていました。明日までの上映のようですが。

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