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みんな違って…

今日Xを散策してたら、胸の中にあったもやもやを見事に掬ってくれるような言葉を発見した。表現はそのままではないが要点は以下のようなもの。

「多様性を認める社会」の構築にあたって最も必要なのは「みんな違ってどうでもいい」の精神だ。

言葉の雰囲気として概ねそのような言葉だった。これだ、となった。一見すると冷たく響く表現だ。だがそこが良いのだ。真実を突いている。多様性を認めるというのはつまり、それぞれが自分にとって心地よい正義を自分のために貫いて、他者がそれを認めなくていいし、「まぁみんな自由に(勝手に)やれや」という世界を構築するということだろう。
当然、自分勝手な正義同士は矛盾しているから、近づけば衝突する。そう。衝突すればいい。したいなら。
そして衝突したくないなら、衝突しなくてもいい。衝突を避けるために離れてもいいし、あるいは自分の主義を少し曲げても言い。いずれにしても「自分の心地よい正義」が衝突しないことであるなら、衝突しない方法を模索してもいい。

「みんな違ってみんないい」ではもやもやが晴れなかったのは、なにか「考え方を変えれば理想郷が生まれますよ」とでもいうような夢想が、この言葉から感じられたからだ。
「みんな違うことを許容する」ということはつまり「他人のことはまぁどうでもいい」という大変ドライな個人主義へと突き進んでいくことを内包しているのだ。そして日本はその方向へ進んでいる。良いとか悪いとかではなく、良いこともあるし悪いこともあるだろう。ただそういうふうに変わって行っているというだけだ。 

おそらく、インターネットが普及して様々な考え方が瞬時にリアルタイムで共有できる時代の波が、日本人の強固な同調圧力と言う精神性を崩しつつあるのだろう。ネットが無ければ、小さなコミュニティの持つ過剰な同調圧力の異常性は外に漏れない。しかし今はつぶやきが簡単に広がり、ブームになり、ニュースになり、多様な表現で切り取られる。良くも悪くも、コミュニティの圧力は性質を変え崩れやすくなっている。そして交わりは希薄で個人的になっている。(それでも国民性として同調圧力は根強く残っているけど。)企業もコンプライアンスが謳われ、ハラスメントハラスメントとにぎやかだ。

時代の波はあっちへこっちへと向きを変える。そこには悪しき習慣を打ち崩す解放感があり、同時に古き良き習慣が崩れ去る寂しさもあるだろう。

それで、みんな違ってどうでもいいから、従わせたい人は従わせたらいいし、従いたくない人は戦ったり、あるいは離脱すればいい。さらに、それでもなんとか折り合いをつけながら近づいて、曲がりなりにもチームになって、ともかく「一緒の目標に向かって手を取り合って進もうぜ」と思う人たちが集まれば、それをするのもまたその人たちの自由だ。

ここで、また変な角度から切り込んでみたい。2017年にゼクシィのCMで強い共感を集めた言葉がある。それが以下だ。

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」

結婚に結び付けなくてもいいけれど、敢えてこの流れで結婚に結び付けてみると論点がはっきりすると思う。
それぞれの選ぶ生き方があっていい。それはその人だけの正しさであって良くて、同時に「他人のもつその人だけの正しさ」も「どうぞご自由に」と許容しなくてはならないというある種の無関心を前提としている。
でも、その「ご自由に」を手放して、「敢えて不自由を抱えて手をつないでいくことも面白そうだ」と二人が思うなら、結婚と言う道に進んでみてもいい、ということだ。不自由なこともあるけれど、面白いですよね。結婚。中に入ってみれば、工夫と協力次第で新しい種類の自由が創出できますし。

物事はそれほどシンプルではないことも多いけれど、それでも時々「この道を選んでいるのは自分自身なんだ」ということを確認すると、自分の立ち位置が定まるのじゃないかな。

ともかく、どんな生き方をしてもいいのだ。もしうるさいことを言ってくる人がいたら、そういう人とは距離を取るといい。「だまれくそじじい」と言っていい。

そして自分は何を大事にしたいのかをよく考えてみる。それは他の人の承認は必要ない。

そして、大事にしたいのが妥協しながらも誰かとともに歩むことであるなら、それもまた良い。選びとった道を歩きながら、妥協することで生まれる楽しい局面もあるんだなということに納得できるなら、それはまた素晴らしいことだと思う。
やってみなきゃわかんないことってあるからね。

結論
(1)『みんな違ってみんないい』は机上の空論。
(2)「みんな違ってどうでもいい」が実際。そうしないと、多様性は立ち行かない。
(3)でも、『あなたと私が違うのは嫌だ。あなたと一緒が良い』と折り合いをつける道を自分で選ぶのもまた良い。
(4)時々、自分で選んでいるという実感を確認すると良い。

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