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需要低迷で収益大苦戦、見通しに光明も中国審査が追い打ちの可能性。マイクロン・テクノロジー決算(2022年12月~23年2月)

四半期末と月末が重なった3月31日、アメリカの株式市場は、シリコンバレー銀行破綻を受けた銀行不安の拡大懸念が後退していることや、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止め期待が高まってきたことなどを背景に、全面高で取引を終えました。

そんななか、半導体大手マイクロン・テクノロジー(以下、マイクロン)の株価は4.4%下落と、相場の流れに逆行する結果となりました。

その理由は、中国がマイクロンからの輸入品に関してサイバー・セキュリティの審査を開始することを発表したことです。マイクロンは売上高の約11%が中国本土向け(香港除く)ですので、影響が大きいと市場はみたようです。

最新の決算状況

四半期売上高が半減

マイクロンは3月28日に2022年12月~23年2月期の四半期決算を発表しました。概要は以下の通りです。

(100万ドル)       売上高   営業利益   純利益 1株当たり利益
 2021年12月~22年2月期   7,786    2,546     2,263    2.14㌦
    2022年 3~ 5月期   8,642    3,004     2,626    2.59㌦
    
2022年 6~ 8月期   6,643    1,521     1,492    1.45㌦
   
2022年 9~11月期   4,085    ▲209    ▲195    ▲0.04㌦
2022年12月~23年2月期  3,693   ▲2,303   ▲2,312    ▲1.91㌦

売上高は36億9300万㌦で、前年の同じ期と比べ52.6%減と半分以下となりました。22年9~11月期(▲46.9%)に続き、2四半期連続の大幅な減収です。
もっとも、需要の減少は想定されていて、会社は売上高の見通しを36~40億㌦と公表していました。アナリストの予想平均も37億㌦でしたので、ほぼ予想していた通りの結果となっています。

22年12月時点の会社側見通し(決算資料より)

過去最大額の赤字計上

支出面では、コスト増に加え、約14億㌦の在庫評価損を計上したことで、粗利(売上総利益)の段階で赤字となっています。
人員削減により人件費を圧縮し、設備投資や販売関連費用も削減しましたが、営業利益は23億300万㌦の赤字となりました。

金利の収支と税金を差し引いた純利益は23億1200万㌦の赤字、調整後(Non-GAAP)の1株当たり利益(EPS)は1.91㌦の赤字でした。

営業利益、純利益ともに、記録が確認できる1996年度以降、四半期ベースで最大の赤字額となりました。

カテゴリー別の動向

売上高を事業ユニット別にみていきましょう。
マイクロンは、決算のプレゼン資料と四半期資料(10Q)で事業ユニット別の売上高を公表しています(リリースにはありません)。

分類は以下の4つです。
・Compute and Networking Business Unit(CNBU)
・Mobile Business Unit(MBU)
・Embedded Business Unit(EBU)
・Storage Business Unit(SBU)

CNBU

CNBUは、クライアント、クラウドサーバー、エンタープライズ、グラフィックス、およびネットワーキング市場に販売されたメモリ製品のユニットになります。同社の事業の中で最大のユニットです。
DDR4、DDR5、LPDDR4、LPDDR5 DRAM製品のほか、グラフィック向けのGDDR6グラフィックス製品を中心とした製品構成となっています。

DDR4 SDRAM
GDDR6X

ユニットの売上高は前年同期比60.3%減の13億7500万㌦と非常に厳しい結果となっています。

MBU

MBUは、スマートフォンを中心としたモバイルデバイス市場に販売されているメモリ製品のユニットです。主にLPDDR4、LPDDR5、およびマネージドNANDソリューションで構成されています。

e.MMC NAND Flash

ユニットの売上高は9億4500万㌦で、前年同期比49.6%減と半減しました。

EBU

EBUは、自動車向けや各種産業向け、および消費者市場に販売される組み込みメモリとストレージ製品のユニットになります。
自動車市場向けは自動走行や運転支援ソリューション用を中心に、各種産業の向けはIoT市場、消費者市場向けは高機能デジタル商品や仮想現実(VR)/拡張現実(AR)などの用途に、ディスクリートおよびモジュールDRAM、ディスクリートNAND、マネージドNAND、SSD、NORと広範な製品を提供しています。

LPDDR5 DRAM

ユニットの売上高は前年同期比32.3%減の8億6500万㌦となりました。

SBU

SBUは、各種市場向けに販売されるSSDやコンポーネントソリューション、ストレージ製品のユニットです。

SSD Portfolio

ユニットの売上高は5億700万ドルで、前年同期比で56.7%減少しました。

今後の見通し

現在の事業環境について、サンジャイ・メロトラ(Sanjay Mehrotra)CEOは「半導体メモリ・ストレージ業界は過去13年間で最悪の不況に直面しており、価格環境も例外なく低迷している」と述べています。

マイクロンは、設備投資を削減し供給量を抑えるとともに、15%の人員削減をおこない、さらなる営業費用などのコストカットも実施しています。

今後の展望については、DRAMやNANDの供給の伸びが需要の伸びを下回っているため、徐々に需給バランスは改善するが、在庫が高水準のため当面は収益面で厳しい状況が続くとみています。

一方で、中国がゼロコロナ政策を脱し再開したことは明るい材料とみています。しかし、冒頭に記したような中国当局の検査となると、楽観視はできないと思われます。

3~5月期も減収、赤字見通し

マイクロンが発表した3~5月期の収益見通しは以下の通りです。

売上高:35~39億㌦(▲59.5~▲54.8%)
EPS:▲1.65~▲1.51㌦

3~5月期の収益見通し(決算資料より)

この四半期からは大きく減少するものの、3~5月期も約5億㌦の在庫評価損を想定しているため、粗利率は引き続きマイナスとなる見込みです。

ただ、これでも市場の予想よりは高かったということを材料に、翌29日の株価は7.2%も上昇し、半導体株上昇をけん引しています。

決算不振でも市場予想上回る見通しに反応し株価急上昇

とはいえ、厳しい状況はしばらく続くことから、23年8月通期でも売上高は激減し、利益は赤字となるのは避けられない状況です。

まとめ

・2022年12月~23年2月期の売上高は前年同期比52.6%減と半減
・在庫評価損14億㌦計上し、粗利段階で赤字に
・営業利益、純利益ともに23億㌦の赤字、四半期の赤字額は最大
・3~5月期も売上高50%以上減少、赤字継続見通し
・人員15%削減。期待の中国再開も当局の審査で楽観視できず


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