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お母さんに見られたい

前回、U-NEXTで『AND JUST LIKE THAT… 』を観たことを書きました。その流れで、『SATC』の過去作も観ています。

シーズン6でキャリーがミランダの息子フレディをあずかることになって、片手にフレディを抱き、片手にベビーカーを持って階段を降りてくるシーンがある。
その直後、シャーロットとの電話で「さっき、ほんとうの母親と思われた!」とキャリーが興奮気味で言う。

それを見て、私は「キャリーが母親に見られて喜ぶなんて意外!子供に興味なさそうなのに…」と思ってしまった。

でも、どんな女性でも母親になりたい気持ちをもっていてもいいし、逆にもっていなくてもいいのですよね。

実は、私も母親に見られたい。

姉がシングルマザーなので、叔母として姪っ子をあずかることがある。そんなときは、「お母さんに見えているかな」という思いがずっと頭にある。

こんなことを言うと
育児はごっご遊びじゃないんだから!
と叱られてしまうかもしれない。

でも、私だって、母親に見られる瞬間があってもいい気がするのだ。

普段、姪っ子の相手をするときは、母親である姉が、美容室に行っている間の数時間、近所の公園に行くことが多い。そこには、たいてい保育園のお友達や保護者がいるので、叔母ととしてふるまっている。

そんな中、朝から夜まで丸1日姪をあずかるときがきた。これはお母さんに見られるかもしれないチャンス!

当日、姉の家に到着したときには、姪はまだ朝食の最中だった。
姉はそろそろ身支度を整えて、出発しなければいけない時間なのに。それでも、なかなか食べ終わらない。

ついには、姉に抱えられて洗面台に行き、無理やり歯磨きをされる。姪は歯磨きが苦手なようだ。泣きながら抵抗して、両手で口をふさいだりとなかなか手ごわい。
姉に腹をくすぐられて、クククと笑い始めて、なんとか機嫌よく歯磨きを終えた。
こんな光景が毎日繰り広げられているのかあ…。

姉がガーゼで姪の顔を拭いて、髪型を整え、着替えをさせて、姪の身支度が完了した。

姉を見送ってから、私と姪は、家の中で恐竜のフィギュアでごっこ遊びをした。姪は大の恐竜好きだ。

恐竜の父親たちが保育園にお迎えに行って、それぞれ子供たちとバスで帰る。その設定で何度も遊んだ。

なぜか、私には、足が遅くて力も弱い恐竜のお父さんと、やたらと甘えん坊で、だだをこねがちな子供という設定の親子の担当を毎回あてがわれる。
どんくさい親子は、度々バスに乗り遅れるのだ。
それでも、ジムで身体を鍛えた強くて優しいお父さんが代わりに子供を抱っこしてくれたり、空を飛べるお父さんが親子2人とも、ひとっ飛びで運んでくれたりするので、その親子もちゃんと家にたどりつける。

これは、姪がイメージする「世の中」なのだろうか。どうか現実にも、助け合いやおもいやりが存在する世界にいてほしい。

「公園で遊びたい」と言い始める姪。
よーし!外で、姪を連れて歩いたら、私はお母さんに見えるだろう。

コミュニティバスに乗って、いつもとは違う公園に向かうことにした。
私は、普段は姉が使っているリュックに、姪の着替えやおやつやウエットティッシュやらを入れて、でかけた。
乗り場でバスが来るのを待つ。

バスが到着すると、慣れた様子で姪が乗り込む。前のドアの一番近くの席が空いていたので、そこに姪を座らせて、私はその隣に立った。

バスが動き出した。

なんだか、行先の公園の方角と違う方向に進んでいる気がするけど、このバスで合っていたかしら?
私は不安になり、キョロキョロと外を眺める。

それが伝わったのか、姪が「抱っこ」と言ってきた。心細そうな顔をしている。
姪を抱っこして座ろうとすると、背中のリュックに跳ね返されて、うまく座れず、ショルダーバックがずり落ちてしまった。姪を抱っこしたまま、片手でそれを拾ってモゾモゾと座りなおす。

リュック。普段、使わないので、背負っていたことすら忘れていた。
この慣れない感じ、とてもじゃないけど、お母さんには見えないだろう。

通路をはさんで、右隣に座っていた年配のご婦人が話しかけてきた。
「私は次で降りるから、この席に座りなさい。こっちの方が外がよく見えるから」と。
そして、杖をつきながら、立った。

ご婦人が座っていた席の方が前のスペースが広い。私がうまく座れていないのを見かねて、声をかけてくれたのだろう。

足の悪いご婦人を立たせてしまった。
ご婦人はお母さんなのかな。孫もいるかもしれない。私はありがたくそちらの席に座らせてもらった。

公園についた。まずはベンチでおやつタイムだ。
「〇〇ちゃんね、これ好きなんだー」
と持参した子供用のおせんべいをモクモクと食べる。
「こばちゃんは、大きいんだから、大きい方食べなよ!」と私にも分けてくれた。
バスの中での不安そうな様子はなくなって、いつもの姪に戻っていた。

おやつが済んだあとは、ひたすらかけっこ遊びをした。
「ご、ご!ご!!」と姪に何度も言われて、かけっこ競争の5本ダッシュを繰り返した。日頃、たいした運動をしていない私には、キツかった。

あとから、姉に聞いたが、最近の姪のお気に入りの数字は「5」。しかし、5の意味をわかっているわけではないとのことだった。
それなのに、愚直に5本ダッシュを繰り返してしまった。

「そろそろ帰ろう?」
「あと、ご!ご!最後のご!!」
このやりとりを繰り返して、ようやく家に戻った。

中に入ると、
「お母さん、ただいま」と部屋に向かって姪が言う。
「お母さんは、夕方になって、そのあと夜になったら帰ってくるよ」と私は言った。

姉が用意したお弁当で昼食だ。遅い昼食になってしまった。
姪は「食べたくない」といってごねたが、
「お母さんが用意してくれたお弁当だよ」と言うと
「お母さん、ありがとう」
と言って食べ始めた。

そのあとはまた、家の中のおもちゃで遊ぶ。
何度か「今、夕方?」と姪に聞かれた。
「まだだよ」と答えるたびに、姪は少し落胆していた。

途中で、いいところを見せたくなった私は、「おやつを買いに行こう?」と姪に提案をした。姪は喜んでその提案に乗った。

スーパーでも「ご!ご!」と言われて、5つおやつを買った。

そんな風にしながら、姉が帰ってきたときは、心底ほっとした。
3人で夕食だ。
「こばちゃんに抱っこして、ごはん食べさせてもらうー」と甘えてきた。
かわいい♡
私へのサービスかしら。母親が帰ってきたら、姪にも心の余裕がうまれたのかな。

夕食を終えて、私は姉の家から出た。長い1日だった。思ったよりもうまくふるまえなかったし、クタクタだった。

それでも、私はやっぱり今日はちょっとくらいお母さんに見えたんじゃないかと思う。だって、私と姉はキティちゃんとミミィちゃんばりにそっくりな双子なんですもの!


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