内田樹「改憲すればアメリカ以外の国と、アメリカの許可があれば、戦争をする権利を得る」

 改憲で日本が手に入れるのは「アメリカ以外の国と、アメリカの許可があれば、戦争をする権利」であり、それだけである。

何を寝ぼけたことを言っているんだろう、この爺さんは。

改憲して日本が手に入れるのは「陸海空軍その他の戦力を有する権利」だけであって、戦争をする権利なんて手に入れられません。

内田(敬称は付けません)はパリ不戦条約国連憲章も知らないのだろうか。もしかして内田は宣戦布告さえすれば「国権の発動たる戦争」が可能になると思っているのだろうか。

 改憲した後も日米安保条約が維持され、国内に米軍基地が存続し、核武装が禁じられるなら、改憲はただ日本が「アメリカの軍事的属国」であるということを国際社会に向かって改めて宣言すること以上を意味しない。

内田は、「アメリカの軍事的属国」の定義も示さず、事実とレトリックの区別も付けることができないようである。

朝日新聞によると、米軍基地は米軍基地は世界45ヶ国に存在し、最も多くの基地があるのは日本ではなくドイツだという。

 たしかにアメリカの「軍事的属国」であると公言することで、隣国の人々は日本を恐怖し、場合によっては憎悪するようになるかも知れない。その方が「侮られる」よりはましだと改憲派の諸君は信じているのだろうが、私はその判断には与しない。
 敗戦によって日本は「アメリカにとって無害・有益な国」以外のものになる選択肢を許されなかった。敗戦国民にはそれ以外の選択肢がなかった。戦争に負けるというのは、そういうことであるのだから、あきらめるしかない。
 けれども、その屈辱的な国際的地位を今になって自ら進んで選び直し、満天下に誇らしげにカミングアウトするとしたら、それはほとんど「私たちは敗戦国以下の存在である」と宣言するに等しい。そのような名乗りによって、国際社会から敬意や信頼が寄せられる可能性は限りなく低いと私は思う。

内田の主張を整理すると

①憲法9条を改正=アメリカの属国宣言
②憲法9条を改正=日本は近隣諸国から憎悪される
③憲法9条を改正=日本が敗戦国以下の存在だと宣言するに等しい
④憲法9条を改正=国際社会から敬意や信頼を寄せられなくなる

論理飛躍の上に論理飛躍を幾重にも重ねていて、はっきり言って話にならない。まず第一に、9条を改正することがアメリカの属国宣言になるというのは、内田個人の特殊な解釈にすぎず、万人に共有されている認識ではない。

そして、日本がアメリカの属国宣言をすると、隣国は日本を恐怖し(原文ママ)、あるいは憎悪するらしい。ここ、まったく意味が分からないですよね。日本がアメリカの属国のほうが隣国は安心するんじゃないでしょうかね?

「敗戦国以下の存在」とやらも全く意味が分からない。敗戦国の下には何があるんでしょうかね。内田の主張は言葉が足りなすぎですね。

「国際社会から敬意や信頼が寄せられる可能性は限りなく低い」、はあ。その「国際社会」ってどこにあるんでしょうかね。「敬意や信頼」って、具体的に日本の何に対する敬意や信頼のことを言っておられるのでしょうかね。

内田ってさあ、言ってることが抽象的でフワフワしすぎてるんだよね。こんなのが「知の巨人」呼ばわりされてたとか、そりゃ日本が没落するのも当然ですわ。

 本当の対立・葛藤は日米間にある。
 九条はアメリカが日本を「軍事的に無害化する」ために与えた「足かせ」であり、自衛隊はアメリカが日本を「軍事的に有用化」するためにあたえた「武器」である。日本はGHQが敗戦国民に「押しつけた」この二つの制度によって、「アメリカにとって軍事的に無害かつ有用」な国になった。
 アメリカの国益を最大化するという文脈に即して言えば、ここには何の矛盾もない。

内田の誤りの根幹がおそらくここにある。内田は、9条も自衛隊もどちらもアメリカの遠謀によって生まれたと誤解している。

事実はそうではない。日本を徹底的に無力化するつもりで9条を押し付けたのは事実だ。しかし、朝鮮戦争が勃発したことで、やっぱり日本が無力なのは困ると思い直して、慌てて警察予備隊を組織させた。

つまり、行き当たりばったりなのであって、決して「日本を永久にアメリカにとって無害かつ有用な存在にするため」などという計画性はなかった。

だいたい、もしも日本を永久に無害かつ有用な存在する能力がアメリカにあるなら、イラクはどうしてああなった。そして今、中国がまさにアメリカが制御不可能になってしまったので全力で叩き潰しに行ってる最中。

これをあたかも、最初から9条と自衛隊をセットで用いることで、日本を永久にアメリカに逆らえないようにするつもりだった、などと主張するのは、はっきり言って論理的にも間違っているしエビデンスもない陰謀論の類だ。

内田の言ってることは、右派の主張するウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムの陰謀論と大差ない、いやそれより酷い。

少なくとも、1952年以降、アメリカが日本に対して「憲法9条を変えるな」と圧力をかけてきた証拠はない。むしろ、「SHOW THE FLAG」という言葉に象徴されるように、憲法9条と矛盾する(ように見える)要求を、幾度となく日本に対して突き付けてきた。

それに対して、日本は9条を逆手に取って「日本は憲法の制約があるから派兵できない」などと言ってアメリカの要請をかわしてきた。つまり、もはや9条はアメリカにとって「有用」ではない。

「じゃあ今まで通り9条を盾にしてアメリカの要求を拒否し続ければ良いじゃないか」という人もいると思うが、それはあまりに時世を知らない人の考えだ。過去の成功体験は人の判断を誤らせる。

オバマ政権以降、アメリカは海外に展開する軍を縮小している。これはトランプ政権でも変わらなかったし、バイデン政権もアフガニスタンから撤退を決めたように継続している。つまり、アメリカが日本に派兵を要求するような戦争は、今後、世界からなくなっていく。

一方で、例外的に東アジアだけがキナ臭さを増している。特に北朝鮮、尖閣諸島、台湾、南シナ海など。

これに対してアメリカは、日本を矢面に立たせようとしているように見える。

日本はこれを拒否できるのか。

もし仮に中国がアメリカに代わって覇権を唱えるようになったとしても、アメリカは単に覇権を奪われるだけだが、日本にとっては国家存亡の危機となる。

それとも、アメリカと手を切って中国の軍門に下れば日本は安泰だとでも内田は思っているのだろうか。もしもウイグルやチベットや香港の現状を見て、それでも日本は中国に飲み込まれないと思っているとしたらどうかしている。

アメリカであれば、軍事基地を押し付けられ、時々「牛肉を買え、車を買え」などとうるさく言われる程度で済むが、中国の軍門に下れば、全国の神社仏閣は取り壊され、日本語は禁止され、香港の国家安全維持法のような法律で、政府にとって都合の悪い人物をいつでも自由に逮捕・収監する国になる。今現在でも北京には多くの日本人がスパイ容疑で逮捕され収監されている。

日本がアメリカに逆らえなくしてきたのは決してアメリカの陰謀ではない。戦後70年間、内田のような左翼が、日本に対して呪いの言葉をかけ続けてきたからだ。

こいつらは、口では日米安保反対、米軍基地は出ていけ、アメリカの戦闘機を買うな、思いやり予算を廃止しろ、日米地位協定を改正しろ、などと反米ポーズを取るが、その一方で日本は戦争を反省しろ、謝罪しろ、防衛費を増やすな、軍拡するな、憲法9条を守れ、と呪いの言葉をかけ続けてきた。

日本社会党は1990年頃まで非武装中立論を主張していた。そんな、とんでもない政党が長年、野党第一党の地位を占めていたのだ。そりゃ自民党一党体制になるのも当然だわ、政権交代したら日本が滅ぶんだもん。流石に現在の立憲民主党は非武装中立などという現実離れしたことは主張しないが、安全保障政策のベクトルは当時の社会党とそんなに大きな違いはないように思う。だから立憲民主党に政権は任せられない。

民主党の頃は、まともな安全保障政策を持っている議員もたくさんいたが、2015年の集団的自衛権を巡る対立が原因で、彼らはほとんどみんな民主党(民進党)を離れてしまった。代わりにすり寄ってきたのが日本共産党。もしも立憲民主党と日本共産党の連立政権が生まれたら、日本は滅亡するだろう。

しかし、内田樹もある意味、戦後教育の被害者でもある。この世代こそがまさに、9条=平和憲法だと吹き込まれ、呪いの言葉をかけられ続けてきた世代なのだから。しかし、こうした循環はどこかで断ち切らないと、永遠に呪いの言葉が拡大再生産され続けてしまう。

それは内田世代には耐えられない苦痛なのかもしれない。なぜなら過去の自分を全否定されてしまうことだから。だから、このような論理破綻した詭弁を弄するのかもしれない。しかし、どんなに詭弁を弄しても、詭弁が正論になることはない。

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