和夫一家殺人事件

ネットで聞いたことがある人もいると思うが、「和夫一家殺人事件」で検索すれば詳しい事は出てくると思うが、簡単に説明すると、慶尚道で朝鮮人孤児たちを引き取って面倒を見ていた日本人夫婦が、日本が敗戦した直後に、我が子のように育てていた孤児たちに惨殺された、という事件だ。

金完燮(キム・ワンソプ)という人が2002年に出版した「親日派のための弁明2」という著書に、この事件について書かれている。

もう、そんな昔なのかと、ちょっと驚いてしまった。

この本が出た当時は、韓国人が反日教育を批判したってことで、結構話題になった。ただし日本語版が出版されたのは2004年。約40万部を売り上げてベストセラーになったらしい。

一方、韓国では2003年に有害図書指定を受け、事実上の発禁状態に。キム氏自身も有罪判決を受け、さらには傍聴人から暴行を受けるなど、散々な目に遭ったらしい。現在、彼がどこで何をしているかは不明。

ところで、最初にこの事件の内容を聞いた時、正直言って違和感を覚えた。というのも、和夫の苗字がどこにも書かれてないから。

普通、日本でこういう事件があった場合、だいたい苗字で「〇〇さん一家殺人事件」みたいに報じられることが多いと思う。あるいは、地名で「〇〇市一家殺人事件」みたいな。いずれにしても、被害者の名前が下の名前で呼称されるのは、被害者が小さな子供の場合を除けばほとんどないのでは。

もしかしたら、韓国では苗字だと同姓が多すぎるから下の名前で呼ぶのが一般的なのかもしれないが(よく知りませんが)、だとしてもフルネームが分からないのは気持ち悪く感じる。

それよりも問題なのは、これだけ凄惨な事件であるにも関わらず、他にソースが一切ないということだ。

しかも、和夫は慶尚道地域の日本人地主という設定なので、もし実在する人物であれば、被害者の特定や照合は容易なはずである。

さらに

和夫一家の亡骸は釜山に大事に改葬され、日本人の墓参りは今も絶えないという。

という記述がある。これがもし事実なら、被害者は完全に特定されていることになる。

被害者が特定されているのに、なぜ同書のほかに一切ソースがないのか。

また、同書には

(以下の「和夫」に関する文章は、二〇〇一年八月に私宛てに届いたメールの内容をもとに執筆したものだが、その後、私のメールアカウントが政府により閉鎖されてしまったため、出所が確認できなくなってしまった。受け取った原本は、韓国人が反省して作成したとなってはいるが、「和夫君」「和夫さん」など、韓国ではあまり使わない日本式な呼び方が混じっており、最後の部分に朝鮮人に対する軽蔑に満ちた文章〈削除した〉が含まれていたことなどから、韓国語のできる日本人が作成した可能性もある。後に、私はこの文章を「親日派のための弁明」という名前のインターネットサイトに掲示しておいたが、読者の中にはこの事件について聞いたことのある人がいた。だとしたら、実際に慶尚道(キョンサンド)地域で発生した事件かもしれず、終戦直後の状況を把握できる珍しい資料であるため、あえて本書に掲載することにした)

このような記述もある。要するに、信頼に値する情報ではないと著者自らが言っているのだ。著者が意図的に嘘を付いているのではないとしたら、そのリテラシーの低さに呆れるほかない。

この話は、後にジャパニズムという右翼雑誌で漫画化もされたらしいが、ロクに検証もしないで安易に拡散するから「右翼はデマばかり言う」と言われてしまうのだ。


日本人が実際に朝鮮人から何をされたのかを知りたいのであれば、このようなデマ本ではなく、当事者が書いた本を読むべきだろう。

ヨーコさんは北朝鮮では幾度となくピンチに見舞われているが、38度線を超えてからは比較的安全であったことがこの著書からもわかる。そもそも、もしも慶尚道が和夫一家殺人事件が起こるような治安状態であったなら、釜山から日本に向かう船も安全ではなかったのではなかろうか。

こちらの本は私は読んでないが、これも満州引揚者の体験記のようなので、一応紹介しておく。

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