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理想とする「親密さ」の違いが生じるメカニズム(じぶんのタイプを知る)


こんばんは。

生きづらさを脱却するのに、「まず自分のタイプを知ろう!」シリーズの続き。(これも4月中旬に出る予定の本に載る文のタタキです。)

「パートナーとうまくいった試しがない」というひとが多いのですが、「お互いが理想とする親密さのレベル感が全然違う」ことが原因だったりします。

今日はそのおはなしです。


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次に紹介する「タイプ」は「愛着スタイル」です。

イギリスの精神科医ジョン・ボウルビイ氏が提唱したもので、周囲の人たちとどんなつながり方を望むか、どのくらいの親密さが自分にとって快適と感じるのかを左右する傾向のことです。主に幼少期の養育者の人との関わり方によって形成されますが、それ以降の対人関係の影響(いじめやトラウマ、人生を変えるような人との出会いなど)でも大きく変化し、パートナーなど親密な人間関係の作り方に大きく影響します。

愛着スタイルは、大きく次の3つのパターンに分かれます。

①安定型
他人と仲良くなって、頼ったり頼られたりする関係を築くことに抵抗がないタイプです。
基本的には「性善説」の大人であり、情緒も安定しています。「自分のせい」と「相手のせい」をしっかり切り分けた健全な境界線を持った人間関係を結びやすい傾向にあります。
「母親的な役割」をもった人が、常に安定的な愛情を供給してくれた育ち方をした人は安定型になると言われています。

②不安型(愛着不安型)
常に相手から見捨てられるのではないかという不安の感情をもっていて、常に周囲に気を使い、相手の反応に敏感になりがちなタイプです。
親密さを求めますが、拒絶されることを極端に恐れるため、パートナーには強い依存関係を好みます。不安が故に束縛や支配、相手の愛情を試すなどの行為をしてしまったり、関係がうまくいかないのはだいたい自分のせいだと考えがちです。
また、好意的な振る舞いを受けた相手を理想化しやすく、すぐに「恋愛モード」に入りやすいという特徴もあります。養育者の愛情が安定せず、優しい時もあれば冷たくされることもあるといった不安定な環境で育てられると不安型になると言われています。

③回避型(愛着軽視型)
人との積極的な交流を避け、ベタベタせずに距離を置いた対人関係を好む一匹狼タイプです。
他人のことを基本的に「脅威」だと考えており、人間関係で起きる葛藤を事前に避け、遠ざけたいと考える傾向にあります。人との交流で得られる「つながり感」「あたたかさ」に対する意識が希薄で、「ホームドラマ」的な絆の物語などはいまひとつピンときていないことが多いです。辛いことがあっても助けを求める、相談することをあまりしません。パートナーとの関係も、愛情はあるものの「薄い」ことが多く、距離感を持った関係を理想だと考えています。養育者としての役割がいなかったり、いたとしてもあまり気にかけてくれず、情緒的なやりとりに乏しい環境で育つと回避型になると言われています。

②+③「恐れ・回避型」
不安型と回避型の特徴を併せ持っているタイプの人もいます。
「見捨てられたくない」「周囲の人の反応に敏感」
「親密な関係は怖くて面倒」「対人関係を避けて、一人でいたい」
という一見矛盾する2つのタイプの同時に抱えているので、対人関係が非常に不安定なものになります。


不安型や回避型のような不安定な愛着スタイルは、安定型に比べてストレスに弱く、心身の不調をきたしやすくなり、生きづらさを抱えやすいことが知られています。
前に紹介した「メランコリー親和型性格」や「HSP」の特徴が、こうした「愛着スタイル」の影響を受けていることも多いのです。


各タイプの理想とする人間関係を図示するとこんな感じになります。

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不安型は「一体化したい!」と思うくらいまでに親密な依存関係を望みます。こうした関係は、一体化している時の高揚感が激しい一方で、もし破綻した時には自分の半分以上が奪われるような苦しみが生じます。(ザ・ハンドのようにごっそり持っていかれる感じ)

一方で回避型は、ひとつの人間関係にあまり執着をしません。助けを求められたり、弱さを開示されたりすることに窮屈さに感じ、離れたくなってしまいます。責任や深いコミットを求められる間関係を結ぶことに消極的で、「孤独な旅人」のような生き方を好みます。決して愛情や思いやりが無いわけではないのですが、それが「薄い」ことに対して、「自分は冷酷なのではないか」「みんなが手放しで肯定する愛情や絆というものを、無条件に肯定できない自分という存在がおかしいのではないか」といった自己否定的な苦悩を人知れず抱えている方も多いです。


また、相手とどれほど仲良くなりたいかという欲求を「親密ニーズ」と呼んでいますが、図でも明らかなように回避型と不安型の「親密ニーズ」の違いがもっとも激しく、両者の折り合いをつけるのに苦労をします。恋愛であれば、お互いにとって最も苦痛のある組み合わせになります。(特に不安型にとっては地獄みが深い)


この愛着スタイルの考え方の良い点は、どの愛着タイプも「病気」ではない、ということです。安定型が他のタイプよりも「生きやすい」のは確かですが、だからといって安定型だけが「良いもの」「目指すべきもの」だと言いたいわけではありません。自分の愛着スタイルを知っていれば、対人関係において予測可能なトラブルを避け、生活の質を高めることはしやすくなります。


重要なのは、それぞれのスタイルや行動特性をもつには、それなりの正当な理由があることをまず知ることです。子ども時代の環境は誰にも選べませんが、生まれた環境にうまく適応するためそれぞれの愛着スタイルが生じることは自然なことなので、「誰かが悪い」ということではありません。

ただ、この愛着スタイルの違いは人間関係をつくる上で非常に大きな影響を及ぼすこと、とりわけ、パートナーシップのような親密な人間関係をつくっていく際には、問題が生じやすいことは知っておきましょう。

それぞれが理想とする関係のあり方、親密ニーズが違うということを理解した上で、どちらかのニーズを押し切るのではなく、どのように対処して折り合いをつけ、お互いによってよりよい関係を育てていくかという点だと思います。


また、この愛着スタイルは、後天的な関わりで変化します。
具体的には、4年間で平均25%の人の愛着タイプが変化すると言われています。生育環境が安心ではなかったかもしれませんが、その後の生き方や出会いによって、「生きづらさ」から脱却した人もいます。

いろいろ見てきて思うのは、人の生き方が劇的に変わる節目には、やっぱりそれに相応しい人(「SSRカード」と呼んでいます)との出会いを引き当てているなあ、ということです。

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Dr.ゆうすけとサクちゃんが「自己肯定感とはなんだろうね?」と語ります。(2018年3月分〜)

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