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連載:地域のイノベーター見聞録

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街づくりは、仕掛けるのも、盛り上げるのも、実行し続けるのも、やっぱり「ひと」。 「地域のイノベーター見聞録」は、さまざまな地域で、新たな活気を与え、街づくりにつながるチャレンジを… もっと読む
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現役&元市役所職員のActions——まちを変えるきっかけづくり|地域のイノベーター見聞録〈美濃加茂版〉Vol. 4 渡邉峻哉/美濃加茂市役所経営企画部 秘書広報課 + 酒向一旭/やまのはたへ(元・美濃加茂市役所職員)

はじめに 冬も終わり春がやってきましたが、まだまだ肌寒い日が続きますね。美濃加茂の冬は明け方にひどく冷えた日でも、日中の気温は10℃弱と、厚手のコートとマフラーを装備すれば十分なくらいでした。引きこもりがちになることもなく、まちを歩いたり、新しい飲食店にトライしてみたり、そこで人と知り合ったりと、春夏秋と変わらず楽しく生活することができました。 美濃加茂に来てからの1年弱で、noteで取材した方に限らず、自身のお店を営まれている方からまちへの想いをお話いただく機会に恵まれま

「飲食」がもたらす体験の強さ──浅草橋で昆虫食を提供する「ANTCICADA」|地域のイノベーター見聞録 vol.7

取材:齊藤達郎・今中啓太(NTTアーバンソリューションズ総合研究所)、小野寺諒朔、福田晃司 文:福田晃司 写真:八木元春(料理写真は福田晃司) 人口増加による食糧危機などを背景として「昆虫食」が徐々に注目を集めています。その端緒は、国際連合食糧農業機関 (FAO)が2013年に発表した昆虫食の食料活用における将来性に関する報告書。実は栄養価が高い昆虫は私たちの栄養摂取源として有望とのことです。今では、無印良品でも昆虫を使った製品が販売されています。 一方で、昆虫と言えば、

手間をかけることに価値を見出す——シモキタ園藝部の「緑を通じてみんなでつくっていくまちづくり」|地域のイノベーター見聞録 vol.6

取材・文:齊藤達郎/今中啓太(地域想合研究室) 小田急線の東北沢駅~下北沢駅~世田谷代田駅間の地下化によって生まれたおよそ1.7kmのエリアが「下北線路街」として整備されているとのことなので現地に行ってみた。緑があって心地の良い空間であることは間違いないのだが、多くの人がイメージするであろう都市部の公園とは異なった印象を受ける。今回は、なぜこういった印象を受けるのかを探るため、シモキタ園藝部共同代表の一人であるランドスケープデザイナーの三島由樹さん(株式会社フォルク)にお話

人口が増え続けるまち美濃加茂——住みやすさの理由を住民目線で考える|地域のイノベーター見聞録〈美濃加茂版〉Vol. 3 藤原涼太郎/ミュージックバー「dominant」

はじめに 4月より美濃加茂に住み始めて半年以上が経過しました。毎日を楽しく過ごしていたら、あっという間に紅葉のシーズンが訪れていました。というのも、美濃加茂市では週末になると、そこかしこでイベントが開催されているのです。「今週は/来週は、あそこへ行ってみよう」と予定を立て始めるとキリがないくらいに。美濃加茂は忙しくない週末がない……これは、私が見つけた美濃加茂らしさのひとつです。 例えば木曽川沿いにある「リバーポートパーク美濃加茂」。市が設置する都市公園で、川遊びやBBQを

中山道太田宿で約15年、コーヒー店とアート活動を続けてきたふたりが見据える、まちのこの先|地域のイノベーター見聞録〈美濃加茂版〉Vol. 2 篠田康雄・小川友美/コクウ珈琲・NPO法人 きそがわ日和

はじめに 2023年8月5日(土)木曽川緑地ライン公園で夏の花火大会「おん祭」が開催されました。例年3万人超の見物客が訪れる、美濃加茂最大のお祭りです。 「おん祭」開催地の河川敷から一本北側の道へ入ると、旧中山道太田宿があります。私が4月に美濃加茂に越してきた日は、太田宿周辺に店を構える9店舗の合同展示「MARGINALIA」(下記フライヤー参照)が開催中でした。どんなイベントなのだろう? と歩いてみると、目を引くアートギャラリーがあり、物販店舗でも作品の展示が行われてい

「ひと」のアクションの積み重ねが、まちをつくっていく|地域のイノベーター見聞録 【番外編】

取材・文:今中啓太/齊藤達郎(地域想合研究室) 1. 地方都市でのコワーキングスペース+デジタル田園都市健康特区、MaaSを仕掛けた2拠点居住のイノベーター(長野県茅野市) 昨年の11月末、筆者今中が以前からいろいろと教えを乞うている矢部俊男さん(20年以上前からセカンドハウスのある長野県茅野市と東京で2拠点生活を送りながら、日本各地で地方創生に取り組むスーパーマン。大手デベロッパー勤務)に、「街づくりって短い単語ですが難しいですね」とご連絡したところ期待通りに「チノに来て

10年後のまちの風景を想像すると、美濃加茂でカレー屋をやる方がワクワクする|地域のイノベーター見聞録〈美濃加茂版〉Vol. 1 高木健斗/カレーショップ「らんびー」

見聞録〈美濃加茂版〉を始めるにあたって 私は今、岐阜県美濃加茂市の美濃太田駅の近くに住んでいます。2023年の4月に越してきて、気づけば3ヶ月が過ぎようとしています。中部地方に住むのは人生で初めてです。 移住ではありません。妻が隣の白川町(美濃太田から車で1時間弱)に転勤になったので帯同しました。知らないまちに住めばきっと新たな出会いがあるはず、そう思うとワクワクします。それに、もしも友達ができなくても妻が一緒なら不安なことはありません。 猫を飼っています。だからわれわれが住

コミュニティの豊かさこそがwell-being向上につながる。「第一生命の歴史が込められた多世代が集うまちづくり」|地域のイノベーター見聞録 vol.5

取材・文:齊藤達郎/今中啓太(地域想合研究室) 東京都世田谷区給田(きゅうでん)にある「第一生命相娯園グラウンド」。ここで第一生命保険株式会社が、SETAGAYA Qs-GARDENと称してまちづくりを行っている。敷地面積約9ha。スポーツ施設、ファミリー向け分譲レジデンス、クリニックモール、学生向けレジデンス、健康増進型・賃貸シニアレジデンス、地域コミュニティ施設等が配置されている。特定のエリア内で多世代の住民を対象とした開発は珍しい。 この場所で、第一生命が多世代を対

廃校の跡地、有効な活用って?「金沢市の人づくりの施設」を探る。|地域のイノベーター見聞録 vol.4

取材・文:齊藤達郎/今中啓太(地域想合研究室) 近年、少子化の流れを受け小中学校の統廃合が増加し、その跡地を中山間地域では宿泊施設として、都市部では官民共働型のスタートアップ支援施設として利活用するなどの話題を目にするようになった。 文部科学省によると、平成14(2002)年度から令和2(2020)年度までに廃校となった公立の小・中・高等学校等は約8,500校あり、そのうちの約7,400校は施設が現存している。これら現存している施設の約74%が社会体育施設(プール、体育館

パンと幸福と人とまち。「無人駅にできたパン屋さん」|地域のイノベーター見聞録 vol.3

取材・文:齊藤達郎/今中啓太(地域想合研究室) 各新幹線の延伸やリニア中央新幹線の新設といった高速鉄道網の整備により都市間時間距離が短縮され大都市居住者やワーカーの利便性は向上している。昨今こうしたことに関する話題は事欠かない。 その一方で、人口減少の激しい地方在来線の廃線や他モビリティによる代替、駅の無人化も少しずつ進み利便性もさることながら安全性の問題も指摘されている。 そのような中、JR西日本が2021年10月に完全無人化した駅を、にぎわい創出の拠点に再整備するとい

日帰り登山だけじゃない。「高尾活動サポート施設」を探る。|地域のイノベーター見聞録 vol.2

取材・文:齊藤達郎/今中啓太/小野寺諒朔(地域想合研究室) 世界一の登山者数を誇り、日帰り登山の代名詞ともいえる高尾山。登山経験ゼロでも、安全に配慮すれば気軽に親しめる。登頂すればお茶屋で蕎麦が食べられるし、下山後は居酒屋で打ち上げ、新宿までは約1時間。どう見ても日帰りコースである。 そんな高尾山の玄関口である京王電鉄高尾線の高尾山口駅の駅前で「高尾活動サポート施設」というスローガンを掲げ、体験型ホテルをはじめた友人がいる。なぜ日帰りの山でホテルを? 高尾活動って何? 今

ワーケーション? 実際どうなの?|地域のイノベーター見聞録 vol.1

取材・文:齊藤達郎/今中啓太(地域想合研究室) コロナ禍以降、リモートワークとあわせてよく聞くようになった「ワーケーション」。 リゾートや温泉地といったバケーションで訪れたいところに出かけて、あえて日常の延長線上のワークをするってどうなんだろう? と、常々感じていたところ芸術活動をしながら新たなワークプレイスづくりに取り組んでいる友人が小田原市根府川でワーケーションを始めるとのこと。 根府川といえば、小田原文化財団「江之浦測候所」。壮大な杉本ワールドを体験しに行ったこと