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アート、ビジネス、教育の齟齬とコミット

最近、仕事にむかう心境が変わった。7月にミミクリデザインに入社し、BtoBの案件をいくつか引き受けている。

具体的には、人材育成が主だった案件だ。理念創造/浸透もちらほら。中学校や高校で行われるプログラム設計という面白い仕事もある。

一方、個人のほうでアート系の仕事もいただいている。ありがたいことだ。

話題作となった演劇『プラータナー:憑依のポートレート』において「演劇×グラレコ×ファシリテーション」の学びの場をつくったり、そのほかにもワークショップの設計を請け負っている。

さらに、子どもに関わる仕事もある。

育児や子どもに関するトークや講演、ワークショップの設計依頼をいくつかもらっている。最近あまり書けていないが、「赤ちゃんの探索」にももっと書きたいことがある。

こんな風に、ビジネス、アート、子どもの3点をいったりきたりしながら仕事をするスタイルが、今年から本格的に始まった。これはぼくにとてもいい影響をもたらしている。

ビジネス、アート、子どもに共通する「恐れ/好奇心」

ビジネス、アート、子どもの世界を行き来することで、一つの共通の前提を発見できた。それは「多くの人が未知の状況を恐れ、同時に好奇心を持っている」というものだ。

子どもは未知のものに対して好奇心を持ちながら、どう関わっていいかわからず尻込みすることがある。

ビジネスパーソンは、自分の想いをぶつけるように事業に取り組むことを恐れることがある。

アートの観客は、作品やアーティストが考えていることを理解できず忌避することがある。

こうして考えてみると、多くの人が未知の状況への「恐れ」を抱いていることがわかる。もちろんぼくも未知のものは恐い。

しかし「恐れ」は同時に「好奇」の対象でもある。「怖いもの見たさ」「嫌い嫌いも好きのうち」などというが、怖いものに対して心のどこかで興味をもっている。あわよくば触れてみようとする。

このような「恐れ/好奇心」のあいだで葛藤する人にとって、ぼくの専門である「ファシリテーション」は有効に機能する。未知の世界に踏み出すための足場をつくり、そっと手を引き、やがて1人で歩いていく後ろ姿を見送るのがファシリテーションの仕事である。

ビジネス、子ども、アートにおけるミスマッチ

そしてもう一つ、「共通の前提を見つけた」こと以外にも発見があった。アート、ビジネス、教育の三者のベクトルがバラバラになってしまっていることだ。

ビジネスは今、社員の創造性を豊かにして問題解決をしようとしている。既存事業の改善や新規事業の創出には、豊かな発想が求められる。

子どもの世界もしかりである。子どもに様々な教育機会を与え、創造性を豊かにし、未来を発展させてほしいと大人たちは願っている。

つまり、ビジネスの世界でも、子どもの世界でも、創造性教育が必須の課題となっている。

しかし、アートの世界ではどうか。

美術館や劇場、文化系財団のマネジメント力次第なのだが、大人気のプログラムもあれば、ほとんど人が集まらずに集客に苦戦している場合もある。人が集まりにくいアートのワークショップは、いかんせん「何をするのか」「何に役立つのか」がわかりにくい

そのため、教育機会を求めているビジネスや子どもの世界に対して、アートは提供できるものがあるはずなのに、うまくマッチングされていない。

なぜマッチングできないのか。どうすればよいのか。

今日はそのことについて考えてみたい。その事例として一つのプログラムを考えてみる。

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