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【読書】十二国記シリーズ「漂舶 十二国記外伝」

 小野不由美さん原作の十二国記シリーズ。中学から高校にかけて、大いにはまり、考え方に大きく影響を受けました。

 仲の良い友人に勧めたところ、私以上に、どっぷりはまり一緒に語り合いました。

 「十二国記」30周年記念ガイドブックに収録されている、幻の短編「漂舶 十二国記外伝」は、『東の海神 西の滄海 (X文庫CDブック)』にも収録されています。

 私は、CDブックに収録されている短編を、友人から借り受けて読みました。

 『東の海神 西の滄海』では、雁国の延主従が物語の主人公です。王となった尚隆は多くの難問を抱えながらも、何とか国のかじ取りを行っていました。課題は多々あるものの、ゆるやかに災害や災厄がなくなり生活が落ち着いてきたことで、民に笑顔が戻ってきます。そのなかで、斡由が起こした反乱は尚隆に大きな影響を与えました。

「民を守り助けるために、父親を殺した斡由」

「罪を犯すことをおそれ、無能な父親を放置して民と国を失った尚隆」

「どちらが、王に向いていたか」


 尚隆は一度、国を失っています。十二の国がある異世界に来る前は、日本の小さな国の領主でした。麒麟に導かれて雁国に来ました。

 斡由は、悪辣な自分の父親を殺して(実際は、幽閉していた)、民に愛される領主として善政を敷きました。尚隆の治世がうまくいかない中、斡由が国をおさめると宣言したんですね。その際、王を選ぶ獣、麒麟をさらい、さらに人質を取りました。

 これだけで、斡由は十分、王になる資格は失っている気がするんですが、なかなか複雑なようです。

 反乱をおさめたものの、その時の迷いや悩みは、尚隆の強く心に残り、百年経っても考え続けています。

 斡由は王に牙を剥いた犯罪者です。斡由は亡くなりましたが、そのお墓は目立たぬ場所にあり、尚隆は定期的に訪れているようなんです。

 その様子が描かれている短編『漂舶』

 静かに斡由と向き合う尚隆を見て、寂しいようなほっとするような気持になります。

 尚隆は、斡由を高く買っているように思えます。善政を敷き、民に慕われていたのは確かです。雁では人材が不足していたので、のどから手が出るほど欲しかったでしょう。

 私は、尚隆びいきですし、斡由の性格を思うと怖いのですが、上に立つ者は潔癖ではいられないんでしょうね。

 久しぶりに、『漂舶』を読んでなつかしくなってしまいました。

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