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【詩】あとは歩くだけ

地図を片手に道を探した
コンパスの針はくるくる回って使えない

頼みの綱の空は晴れない
曇りどころか靄に包まれて真っ白け

風のない重たい空気は
体にのしかかるようだった

「こっちだよ」

ささやき声を無視した

靄はもったりと重くなり
大きな雲がのしかかっているようだった

「こっちだよ」

真っ白な世界で
声のする方とは違う方へ向かった

のしかかる雲に稲光がまじる
靄ではなく黒雲に変わっていく

「こっちだよ」

チリチリと肌を焦がす光から
逃れたくて声の方へ向かった

肌を焦がす光がなくなる
雲は白くなり体が軽くなった

「こっちだよ」

「こっちだよ」

「こっちだよ」

真っ白な視界が晴れていく
足元に道がすうっとのびていた

雲が晴れて青空が見える
太陽の明かりがあたたかい

コンパスの針が道の向こうを示す
地図を見ればすぐにわかる

もう声は聞こえなかった

コンパスもいらない
地図は楽しみのために見ればいい

まっすぐのびていく道を歩くだけ
ただ楽しめば良い



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