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入学式の日、満開の桜のした、気になるあの子を思い浮かべても

🌸この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です🌸
#クロサキナオの'2024 Spring Festa!

ども、ゆーしんけんです。

今回は「春」についてのエピソードを書いてみました。私が子どもの頃の話になりますが、どうかお付き合いください。


バラエティ番組やトーク番組で、お笑い芸人がアイドルや俳優に「初恋はいつ?」と聞くことがありますよね。

タレントがそれを受けて「幼稚園のときに~」と答えようとしたら「そういうのいらないから」とツッコんで笑いを取る流れです。

私はあのやりとりを見てあまりいい気持ちがしません。もっというと「またかよ。もううんざり」というのが正直なところです。

じゃあ幼稚園のときに「初恋」を経験する子どもはいないってこと?と思ってしまいます。

そりゃあファーストキスとかはしないだろうけど、片思いに終わるかもしれないけど、幼稚園の頃だって恋する気持ちはあるんじゃないでしょうか。

「なんでそんなに真面目にとらえちゃうの?」という声が聞こえそうですが、これには理由があります。


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幼稚園のとき、同じ組にクガちゃん(仮名)という女の子がいました。

当時の幼稚園児にしては髪の毛は長めでおしゃれなタイプ。目がくりっとしていて可愛いけれど、頭の回転が速く口が達者で気が強い。よく言えば活発で聡明な女の子でした。

一方、私は“悪ガキ”とまではいきませんがわんぱくなタイプで、クガちゃんとはいつも口げんかをしていたものです。

もう昔のことなのでハッキリとは思い出せませんが、たぶん子どもの言い合いなので「バーカ!」「バカって言う方がバーカ!」「あっかんべー」みたいな感じだったのではないでしょうか。

卒園後は同じ小学校に通いましたが、家は離れていたのか一緒に通学した記憶はありません。あの時代は男女が並んで歩くだけで周りから冷やかされたものです。たぶんそれもあったと思います。

2年生までは同じクラスで、相変わらず顔を見れば悪口の言い合いになっていました。

3年生・4年生のときはクラスが違い、ほとんどしゃべることもなく過ぎました。

5年生でまた同じクラスになったのですが、ほどなくしてクガちゃんは病気のためしばらくお休みすることになったのです。

5年生のときかあるいは6年生になってから、久しぶりにクガちゃんが登校してきました。ただ頭には毛糸の帽子をかぶっており、長い髪の毛を見ることはできませんでした。小学生のことですから、私はほかの男子生徒と一緒に毛糸の帽子をからかったと思います。

しばらくすると、クガちゃんはまたお休みすることになりました。

ある日、担任の先生からクガちゃんが病気で亡くなったことを知らされました。

クガちゃんの死を自分がどのように受け止めたのか、周りがどんな反応を示したのか覚えていません。女子は泣いていたと思います。

私はその後も、いつものように小学校生活を送って卒業しました。

地元の公立中学校に進学が決まり、4月になって入学式に出席するため男子数名で歩いて行きました。

中学校に向かう途中で、歯科大学のキャンパスにある桜並木の道を通ります。

入学式の日は快晴で桜が満開でした。私は見事な桜の花とひらひらと舞う花びらを目にして感動しました。

「綺麗だなぁ」

そんな素直な気持ちで桜を愛でる自分を新鮮に感じていると、ふとクガちゃんの顔が頭に浮かんだのです。

なぜそのタイミングでクガちゃんのことを思ったのか不思議でした。でもようやく気づいたのです。

「ああ、俺ってクガちゃんのことが好きだったんだな」

クガちゃんと口げんかばかりしたことを思いながら、なんでもっと普通に話せなかったのか悔やみました。

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中学校の入学式から数十年が過ぎましたが、もし「初恋はいつ?」と聞かれたら「幼稚園のときに…」と答えることでしょう。


私は「春」にまつわるエピソードが少なく、お花見とか歓迎会とかはだいたい飲んでどんちゃん騒ぎして二日酔いで苦しんだ思い出しかありません。そんななかで一番印象に残っている「桜」と「恋の話」を書かせていただきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。



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