ギャルは今も昔もエモーショナル。


ホワイトベリーの夏祭りが流れていて、聴覚と嗅覚から夏が蘇る。


高校生の頃にツルんだ不良なんて、今や誰も連絡が取れない。

今考えると、見た目が厄介なガキってだけで、悪いことなんてあんまりしていなかった。でも、集まってくるヤツらの大半は、家庭環境がしっかり不良だった。大人になった今思えば、(どうやって子供を育てる気だったんだろう)みたいな親と生活しているヤツが沢山いた。


「朝イチでパチ屋に並ばせられるから、夜じゃなきゃ遊べないけど良い?」

「ママの彼氏が一緒に飲もうって言ってるんだけど、来ないよね」

「夜やって金貯めて、いつかめっちゃ四角いBBに乗るんだ。」

「ホスラブにママのスレ立ってるんだけど、最近全然帰ってこないさ。ワラ」


割とみんな明るくて前向き。でも、ふとした瞬間の憂いが半端じゃなかった。一緒にいて心地よかったのは、その憂いの部分にぐわーっと惹かれたってのもあるのかもしれない。

中でもメイちゃんは最高だった。結構ギャル感強めなのに、真面目な部分が際立っちゃうような愛らしい子。

自分が舐めたチュッパチャプスの棒は道に捨てる癖に、仲間が捨てようとした空き缶はコンビニのゴミ箱まで持っていくのだ。なんで?って聞いたら、

「需要あるうちはゴミじゃなくない?」だって。

一瞬めっちゃ納得したけれど、ちゃんと考えるほどに全然意味がわからなくて。


そんなメイちゃんの髪はいつもパルティのブリーチと汗が混じった匂いがしてくさいのに、ドンキの甘い香水が全部をエロに変換してた。万引きしたリップをちゃんと何度も塗り直すから唇はテカテカで、キスするたびに違うチュッパチャプスの味がした。


夏の終わりの夜。

度々ケータイが繋がらなくなって、センターに問い合わせてもメールも来てなくて、なんだか不安になった頃に「ごめん、ケータイ払い忘れてた」って。

ギャルがケータイ払い忘れるわけないじゃん。僕はメイちゃんほどバカじゃなかったけど、(今日会える?)って送るくらいにはイタかった。「ちょっとなら」という返事に何かを期待するくらいにはクズだった。


メイちゃんは、ムラの無い金髪になっていた。綺麗な色のネイルをしていた。

今まではメイちゃんのこと(すごく大人っぽい)と思っていたのに、ムラの無い金髪と綺麗なネイルがあどけなさを引き立てていた。

不安そうな表情があまりに子供っぽくて、僕まで泣き出しそうだった。


『へへ、大人みたいでしょ。需要あるんだよ、あたし。』


何を話したか、あんまり思い出せないけれど、僕はもうぼんやりとキスをしていた気がする。ブリーチや汗の匂いはしなくて、ボディソープの匂いがした。

あとは、チュッパチャプスとイソジンみたいな味。


もう会えないんだなって思いながら、迎えに来た真四角のBBに乗り込んだメイちゃんを見送ったんだっけ。










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書いた言葉がお金になるなんて、夢物語だと思っています。僕に夢を見せてください。もっと勘違いさせて、狂わせてください。