マッチングアプリ交遊録 Vol153
マッチングアプリをかれこれ3年ほど続けた。
そして、かれこれ150人程の女性に会った。
食事だけで終わることも、
千載一遇、一夜で終わることも
夜の関係が継続することもあった。
とりわけ大きな出来事は、
昨年、苦節2年半、漸くマッチングアプリで
彼女ができた。
そして、2021年のクリスマスの日に、
交際約4ヶ月で別れた。
文字にするとギュッとして、
中身の無い出来事のように、
思えてしまうのは、
単に筆力の無さなのかすらも
わからないままマッチングアプリを続けている。
でも3年も続けるって凄くない?
なんて言ってくれる人どこかにいますか?
いたら、いいねしてください。
Vol 153 理想と現実とトラブルのない世界
賢くて、背が高くて、エロくて、
少し変わってること。
欲を言えば、デザイナーが良いな。
贅沢を極め、3年。
ペアーズの登録費、ポイント購入費に加えて、デートの食事代、ホテル代にかけたお金は、100万は超えているだろう。
なんせ、家賃5万の部屋に住んでて、物欲もないのに、クレジットカードの借金が80万もあるのだから。
ふとした時に感じる虚しさに
耐えられなくなった出張帰りの新幹線。
虚無感を紛らわせるべく、スマホ画面を撫で回していたら、不意打ちでいいねが届いた。
編集者で古着好き。
背はさほど高くはないが160cm。
中肉中背でどこかエロティックな雰囲気を纏っていた。
いいねを押して勢いを落とすことなく、メッセージを打ったら、秒で返信が来て、とんとん拍子で会うことに。
下北に20時という約束を取り付けて、スマホを閉じ、目を閉じる。
「今日はGWだし、気持ちの良い風が吹いている。相手も少なからずバカンス気分があるはずだから、羽目を外したい。」
品川駅に着いて、山手線の窓から溢れる夕日に照らされるまで猥雑な思いに満たされていた。
家に帰って荷物を置く。
日中外仕事でかいた汗を流す。
20時までは時間があったから、近所のよく行く古着屋でだべることにした。
服を買わないのに顔を出し、店員と他愛も無い話をして時間を潰すいつもの店。
マッチングアプリ事情も詳らかに話している。
「今日は、下北で会うんすよ。なんか良い店ないすかね?」
「またマッチングアプリかよ。ざこやとか?時期的には外席も気持ち良いんじゃない?でも今日絶対下北混んでるよ。代田橋のが良いんじゃない?家に行きやすいしな。」
無論、古着屋も我が家も代田橋にある。
「なるほどその手があったっすね。」
勢い落とさずLINEをしたら、二つ返事で代田橋に来てくれるという。
時間をつぶして代田橋のホームに向かうと、Aさんは立っていた。
写真と少し違うじゃねえかよ。と言いたくなったもののそれはこちらも同じ。となると、今宵はフェアな立場だな。
3年前の写真をプロフィールに設定しているからか、割と最近待ち合わせでえ?みたいな顔をされることが多い。
まあそりゃそうだ。
あの時は社会のストレスもないし、実家で健康的な飯を食えてたから今より痩せていた。
それに3歳も若い。
でもそれを詐欺と言うのなら写真加工だって同じだからね!
という、強いスタンスで臨んでいる。
そんなこんなで代田橋名物沖縄タウンへ向かう。ゲトーな街がアホみたいに混んでる不可解な事態に翻弄されつつ、歩き、駅から離れた沖縄料理バルにようやく腰を落ち着けた。
話すと、経験豊富で本も好きだし、ラジオも聴くし、映画も観る。趣味嗜好がドンピシャに合って会話が弾んだ。
聞くと友達とラジオをやっていて、下北に作業部屋を構えているらしい。
ん?下北に作業部屋?これはいけるのか?
と邪な気持ちで、2軒目の下北にあるバーまで歩く。
Aさんが下北に部屋を借りてから気になっていたと言うバーはBGMなしの怖いくらいに静かな店だった。明らかにマッチングアプリで初対面の人間同士が行く場所ではない。
「バカ、なんで音楽かけないんだよ。」
短髪丸メガネシャツのマスターに申し立てたくなったが、これもまたマッチングアプリで初対面の人間が取る行動でない。
無言。そして無音の時間が永遠に感じた。
質問を投げかけて、何回かラリーが続き無言、そして無音。
飲み物を頼んで、届くまで無音。
一層強い酒を飲んで力を借りるか?
と思ってウォッカのソーダ割りを三杯飲んだけど、無駄に緊張感のある空間のせいで一向に酔わない。
気付けば東側に住んでいるというAさんは終電を逃していた。
気付いてたんだけど、言わなかった。
もう一層、「作業部屋覗いていいですか?」と単刀直入に言ってみようか。
いや、でもマッチングアプリで初対面の男を神聖な作業部屋にあげないか。
と、チキってたら、出張の疲れで眠気が来た。
やばい帰りたい。もう酒もきつかったので、店を出ることにした。
あわよくば帰り際に作業部屋にあげてくれないかな。という邪念を抱えて歩く。
スイスイと歩が進み、まずい雰囲気が流れ出した。なんせ今日、ボーナス前で死ぬほど金ないのにほとんど奢ってる。貧乏根性は俺をそう易々と家路につかせてくれない。
「近くにディープなバーがあるから行きませんか?」
チープなワードで誘ってしまった。
そして、
「もうお酒飲めないけど、いいよ。」
この時点で勝敗は決していたのかもしれない。
店に着くと宣言通りAさんは烏龍茶を頼んだ。疲れと酔いと大音量の音楽と変なテンションでここにきて三杯もビールを飲んでしまった。
隣の席では20代前半の男女が抱き合ってキスをしている。
一層勢い借りて、抱きついてキスしてしまおうか。と酔いの力に任せようとしたが、「マッチングアプリで初対面の男がそんなことしてきたら、警察に通報する。」ことも辞さない。そんな強い意思を持った女性に見えたからやめた。
トラブルピーチ。
良くも悪くもトラブルが訪れないGWが折り返した。
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