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わかりやすい試合解説を求めて

●フェンシング競技エペ種目の解説

フェンシング競技及びエペ種目については露出が向上し、試合の様子が静止画及び動画にて見られるようになってきた。
しかしながら、”この人たちは何をしているの?”という部分については専門用語を多く用いて解説するしかなく、サポーターには伝わりづらいのが現状だと思う。
そこで今回、専門用語を可能な限り避けつつ、
得点が発生した「決まり手」の瞬間のみに着目し試合を紐解いてみる。

基本的な行動はシンプル

試合が始めると、お互いが前後に動いたり剣のやり取りをすることで牽制し合い、相手の動きを誘い合う。これをプレパレーション=preparation(準備動作)と呼んでいる。
この読み合いの後に発生する事象としては
●どちらか一方が先に突く動作(攻撃)を繰り出し
●もう一方はこの攻撃に対して
 ⑴突き返す(カウンター)
 ⑵相手の剣を止める→突き返す(防御)
 ⑶足で距離を切り回避する

これらに概ね絞ることができる。
今回は得点が発生した「決まり手」のみを収集するために今回⑶は除外とする。
またリアクション側の対応が遅れ失点した場合は「反応遅れ」と記載した。

●スイスW杯個人戦を振り返って

先日2022年11月11日〜11月12日に開催された
ワールドカップ(スイス・ベルン)における2試合をピックアップした。

①加納選手(日本) VS GAROZZO選手(イタリア) 

ベスト4がけ 結果:9−8で加納選手の勝利

該当の試合は06:27:00~06:45:00あたり

分析シート(KANO_JPN vs GAROZZO_ITA)

上から順に時系列で各選手の「決まり手」となった行動をまとめたもの。
本大会日本人最高成績の加納選手がメダルを確定させた試合である。
まず注目すべきは加納選手が防御を選択せずに攻撃に特化していることである。
これに対し、GAROZZO選手は防御を中心に組み立てている。
序盤は加納選手が攻撃を仕掛ける構図が多く、これに対してGAROZZO選手は上手く対応しリードを広げた。
中盤から加納選手が攻撃にカウンターを混ぜ始めることによって行動の失敗ケースが極端に改善され、同点に追いつくことに成功。
最後は1本勝負による決着となったが、これも加納選手が先に仕掛け、GAROZZO選手が防御する形になるも失敗に終わった。
一定時間得点が発生しない場合に課される”ペナルティー”も上手く使いつつ、
試合時間の使い方をはじめ、お互いの得意な部分を熟知し合っている故の
非常にレベルの高い試合になっている。

②ANDRASFI選手(ハンガリー) VS 加納選手(日本)

準決勝 結果:15−11でANDRASFI選手の勝利

該当の試合は00:40:00~00:55:00あたり

分析シート(ANDRASFI_HUN vs KANO_JPN)

加納選手と本大会金メダルを獲得したANDRASFI選手の準決勝。
終始ANDRASFI選手がリードを守って逃げた形になっているが、そんな状況でも防御に徹することなくしっかりと先に攻撃を仕掛け続けている。
また行動選択の点から見ても、カウンターの数が少ない。けれども、序盤4点目にカウンターを選択、成功させている為、相手はカウンターの可能性を消すことができずに迷いを生じさせられる。
加納選手も決して劣ってはおらず、攻撃を中心に組み立てているが
序盤の3連続失点とカウンターの失敗率が目立つ。
その後ROUND2は6ー6、ROUND3は5−4と互角の内容になっているため序盤の試合の作り方を修正すれば次回もっと良いスコアになると予測する。
前段のGAROZZO選手との試合でも前半にリードを取られていたので今後の試合での注目ポイントとして追いかけてみたい。

●今回のまとめ

「決まり手」だけに注目しても、得点の推移だけでなく
少し戦術や試合の内容について触れることができたと思う。
次回以降の試合についても今回同様の方式や
新たな視点で試合を紐解いていきたい。

Es.relier 宇山 賢