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なぜ加盟店は本部不信に陥るのか?①~意思とのギャップ~

今回は、なぜ本部と加盟店の関係がこじれていってしまうのか?についてフランチャイズ契約、現場でのコミュニケーションの観点から私の考えを述べたいと思います。
勿論、本部と上手くコミュニケーションを取り、良い関係を築き、良い商売をされている加盟店も沢山あります。フランチャイズに加盟することで経営が安定し救われたという加盟店も過去に見てきております。しかし、どうしても否定的な立場の人間の意見や存在が大きく目立ちがちです。
コンビニの契約については「本部が加盟店を搾取している」「現代の奴隷制度だ」等と、かなり酷い言われ方をされる事もあります。実際、過去には本部と加盟店の間で訴訟問題も起きておりますし、ここ最近の出来事であればセブンと松本オーナーとの対立(24時間営業問題)がニュースでも報じられました。
本来、フランチャイズシステムとは、本部、加盟店、双方が良いとこ取りのメリットだらけのある意味理想のシステムのはずです。それが何故上手くいかないのでしょうか?フランチャイズ契約、現場でのコミュニケーションから読み取っていきたいと思います。

全ては本人の意思とのギャップが問題である

この「本人の意思とのギャップ」という言葉、様々な場面で私は使っているのですが(ブラック企業の長時間労働の問題にも当てはまる)どのような事かと言いますと、
「同じ事でも本人の意思でやっているのと、他人からの指示でやっているのとでは感じ方は全く異なる」という事です。もう少し具体的に説明すると、

①個人経営のラーメン店店主が、新商品開発として納得のいくスープ作りのために定休日ではあるが朝から晩まで厨房に立ち続け試行錯誤を繰り返し18時間労働をした。

②スタートアップ企業の若手社員が営業部の数値目標達成のため「もっと契約が取れるようプレゼン資料を一から見直そう」と思い、自分の意思で18時間労働をした。

③上司から「今週はどうしても部署内で終わらせなければならない作業があるため自分の作業が終わっていても必ず残業し手伝うように、上長命令です」と言われ1日18時間労働をした。

④オーナーは8時~16時までのシフトだったが、夜勤が体調不良で急遽出勤できなくなり代わりもいないため、17時の退勤後に仮眠を取り、22時~翌8時までのシフトに入った。合計18時間労働をした。

①~④を読んで皆さんはどのように感じたでしょうか?
①は完全に自分の意思で働いているので問題無さそう、②は会社指示の目標とは言え達成のために自分の意思で働いているのでまぁ大丈夫だろう、③は自分の意思ではなく他人からの指示で動いている(一次的なら良いが長期的に続くのであれば辛そう)、④もオーナーの意思とは関係なく本部との24時間契約を守るために働いている(もし慢性的な人手不足に陥ればこの状態が数年続くかもしれないのでかなり辛そう)と私は考えます。
前置きが長くなってしまいましたが、この「本人の意思とのギャップ」が生じている、「他人からの指示で動いている」という場面がフランチャイズ契約上どうしても多くなってしまうのがコンビニ経営です。契約なので当然といえば当然ですが、このギャップが増幅されていくとやがて感情的に嫌になり本部との関係がこじれていく一因になるのだと考えております。この他人からの指示についてもう少し具体的に述べたいと思います。

そもそもコンビニフランチャイズが求めているものとは?

意思とのギャップが生じやすいと述べましたが、そもそもコンビニのフランチャイズ契約が現場に求めている事とは何でしょうか?様々あると思いますが最も重要なのは「全国どこの店舗に行っても同じサービスが受けられる」という事だと考えます。どこの店舗に行っても同じ商品が買える、どこの店舗に行っても従業員が同じ対応をしてくれる、どこの店舗に行っても店内レイアウトが概ね同じであり買いやすい売り場である、という事です。
コンビニフランチャイズは「街灯がほぼ無いようなド田舎の店舗でも人で溢れている新宿のど真ん中の店舗でも同じ話題のスイーツが買える」ことを重視しています。今でこそ個店ごとのニーズに合ったお店づくりを本部も尊重するようになってきておりますが、均一のサービスを重視するという原則はこの先も変わらない事です。それがフランチャイズ最大のメリットの一つだからです。言い換えれば、チェーンとしてのブランドイメージを大きく逸脱するような商売は本部も認めたくないという事です。この本部が理想とする均一のサービスを現場に求める指導が加盟店にとっては「他人からの指示」と受け取られやすいのだと考えます。では、他人(本部)からの指示内容について主に3点、具体的に挙げていきます。

①品揃え
チェーンとして「どこの店舗に行っても同じ商品が買える」という事は売り上げ、お客様の満足度アップや安心、に繋がります。品揃えすべきという商品は本部のPOSデータに基づき「チェーン全体で売れている物」「商品の特性や機能として必要な物」(例えば日用品で言えばボールペン、修正ペン等)が主です。本部社員も売れている物や品揃えとして必要な物は当然売り上げアップに繋がりますし、日々品揃えの指導をしております。それが、品揃えの自由度を奪っているように感じるのかもしれません。一部、個店のニーズに応えるために独自に仕入れて取り扱っている商品(本部が認めた上で)もありますが、売り場の大半はチェーンとして品揃えが必要な商品で占められています。

②営業時間
コンビニはどこのチェーンも概ね24時間営業が基本です。営業時間が同じであることによって「いつでも開いてて良かった」とお客様に安心感を与える側面もあります。今でこそ時短営業への切り替えについて加盟店の要望を本部が柔軟に受け入れるケースが増えてきておりますが、それでも夜間営業していないだけであって、日中は年中無休で営業しています。「今日はシフトが回らないから夕方は店じまいしよう」「今日は用事があるから定休日にしよう」は契約上認められません。店舗のシフトはオーナーの考えで組んでいるとは言え、本部と契約を結んだ24時間営業を維持するためにどのようなシフトを組むか?がベースになっております。

③オペレーション
店舗での作業(オペレーション)は体系的に本部が作成したマニュアルをもとに進めます。レジでの業務や売上金の精算作業だけでなく、清掃の手順や売り場の作り方においてもです。加盟店からのアイディアで本部のマニュアルも変わることもありますが、基本的には決められたことを正しく正確に実行することが求められます。前述したようにチェーンとして均一のサービスを提供するためです。当然、マニュアルを逸脱するような事をしていれば本部社員からの指導が入ります。例えば、「(本部は4分と定めているけど)うちはカリッと揚げたほうが美味しいと思うからレジ前で販売している唐揚げは5分揚げているよ」はNGです。(これはマニュアルというより食品衛生上の問題と言えるので極端な例ですが)
自分で独自にやりたいようにやりたい加盟店にとっては決められたことを正しく正確に実行することは不自由に感じるのかもしれません。

これらは、フランチャイズビジネスとしては本部が加盟店に求める事として決して間違ってはいないはずです。しかし、これらを起点とし本部と加盟店の関係がこじれてしまうのは何故でしょうか?次回その要因を述べたいと思います。

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