カモニカ谷だより

北イタリアの小さな村の暮らしをお届けします。山あり湖ありのカモニカ谷の歴史や地元の美味…

カモニカ谷だより

北イタリアの小さな村の暮らしをお届けします。山あり湖ありのカモニカ谷の歴史や地元の美味しいレストランのこと、古い家での生活などを書いていきたいと思います。

最近の記事

カモニカ谷に春が来て・リトリートvol4

「すみれにあう」という作家・清川妙さんの瑞々しいエッセイを初めて読んだのは高校生の時で、父が誕生日のお祝いにくれた本の中にあったと思います。何十年も前に手にした清川さんの随筆は、落ち着いた書体とさりげなく美しい挿画があいまって、見過ごしながら生きていたささやかだけど美しい世界への道しるべとして心の中で灯りつづけています。  忘れられない3月11日の翌日、カモニカ谷では春の太陽があたりを隅々まで照らし、雨の中で重くうなだれていたすみれも忘れな草も梅の小さな花弁も輝いています。

    • キジトラ猫マメオくんの得意技

      雲と霧は、その場所によって呼び名が変わるだけで、同じものなのだそうです。冬のカモニカ谷では、雲と霧の境界線が曖昧になります。ふと、自分も家ごと雲の中にいるような錯覚に陥ることもあります。そんな季節は、なんとなく出不精になり、人も動物も運動不足になりがちです。運動不足ですめば良いのですが、そのせいでギックリ腰になってしまうこともあるのです。 壁紙を新しくするんだ、とはりきって急に刷毛を持ち出した夫、そのすぐ後お昼ごはんを食べに行った食堂で、椅子に座ろうとした瞬間凍りついた夫、そ

      • カモニカ谷で「リトリート」冬じたく編

         カモニカ谷では、紅葉も進み、日を追うごとに山のカンヴァスの色が美しく変わっていきます。  三日間に渡ってカモニカ谷のわがやで行われた、リトリート。今回も、充実した楽しい美味しいひとときで、あっと言う間に過ぎてしまいました。初日は午前中に集合して、まずは、移動中毛布にくるまれていた麹を、電気毛布でしっかりつつみ直してセット。この麹を中心に、リトリートが始まります。今何度かな? と気にしながら、麹時計が刻まれていきます。  お昼ごはんは、九州出身の方がだんご汁のレシピを実演して

        • カモニカ谷で「リトリート」

          カモニカ谷の山頂部分に、初雪が降りました。日に日に紅葉も進み、冬の入り口です。 この週末、イタリアに暮らす素敵な日本女性4人の方が、我が家にいらっしゃって、リトリート(数日間日常から離れた環境で心と体をリラックスさせ癒すこと)されます。今年の3月から始めたこの楽しみ、今回でもう3回目を迎えます。 ある方からこのお話をいただいたのは、コロナウイルス対策による様々な規制がやっと解けた頃だったと思います。当時は、病気そのものの恐怖に加えて、厳しい規制のもと自由が少しずつ奪われていく

        カモニカ谷に春が来て・リトリートvol4

          キジトラこねこがやってきた

          顔見知りの茶トラ猫(オス)が、小さなキジトラ猫を連れてやってきたのは、6月のはじめ。「うちの子、よろしくたのみます」とでも言うように、私の顔をじっと見てから、しっぽをひとふり、キジトラを置いて、ふっといなくなってしまいました。え、なに今の。ぼんやりしていると、キジトラがびゃあとなき、なんだなんだと、わがやの先住猫たちもやってきます。そうこうしているうちに、ごはんの時間になり、キジトラもびゃあびゃあと主張するので、おすそわけをもらいます。 あれあれ、なんかおかしいぞ。 そして翌

          キジトラこねこがやってきた

          八月のひと皿

          きついカーブを何度も曲がりながら山道を登っていくと、突然目の前に山小屋のような作りのトラットリア(食堂)が現れる… カモニカ谷で暮らすようになって、そんなことがなんどもありました。店の前には車が何台もとまっています。食堂の扉を開くと、店内は、小さい入り口からは想像できないほど広く、素朴な木のベンチとどっしりしたテーブルが、常連さんたちも旅人も暖かく迎え入れてくれます。 そんな山深い食堂で出会ったひと品。ビゴーリ・アイ・フンギポルチーニ。ビゴーリというのは、うどんのような太いパ

          イタリアで見る古代の印

          北イタリアはミラノから、車で東に1時間半ほど走ると、カモニカ谷(Val Camonica)に着きます。この谷には、イタリア初の世界遺産ヴァル・カモニカ岩絵群があります。アルプスに連なる谷の岩面に刻みこまれた絵には、約1万年前からの人々の暮らしや文化、戦いの様子など、人間が生きた証が刻まれています。 この厳かな神聖な場所、実は、とっても気軽に訪れることができるんです。谷筋に沿っていくつか観察スポットがありますが、最も有名なのが、カポ・ディ・ポンテ(Capo di Ponte)

          イタリアで見る古代の印