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John Wick4やSHOGUNにも出演。進化し続ける日本のアクションがハリウッド作品に革新をもたらす

今回インタビューさせていただいたのは、カナダのバンクーバーでスタントパフォーマーとして活躍されている田﨑直輝さんにお話を伺いました。田﨑さんは10代の頃から国内外を問わず多くの作品でキャリアを積み、2021年からはバンクーバーと日本を拠点に映像作品に携わっていらっしゃいます。ハリウッドと日本のスタントの違い、アクションの魅せ方や作り方、日本スタイルのスタントが世界で注目され始めていることなど、本業で活躍されている方だからこそのお話がたくさんあります。心の底から本当にスタントが大好きだと語ってくれた田崎さんの生き方や想いを少しおすそ分けしてもらった記事がこちらです。

主な出演作
スタント・スタントダブル
SHOGUN /JOHN WICK 4/TheLegend andButterfly/シン仮面ライダー/
劇場版パワーレンジャー /仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER等

モーションキャプチャー
ニーアレプリカント(ゲーム)/ベヨネッタ3(ゲーム)/ ULTRAMAN(Netflix)/BLADE RUNNER:Black Lotus(アニメ)等

出典:artistcastingexplorer.com

スタントパフォーマーから見るハリウッド作品の裏側


——まず最初に、田﨑さんはアクション俳優ではなくスタントパフォーマーという理解で合っていますか?

はい、僕はスタントパフォーマーです。例えば日本では芝居もできてアクションもできる人っていうのがたまに求められるんですよね。だからスタントパフォーマーが選ばれて芝居をせざるを得ないケースもありますけど、でも僕は俳優ではないですね。

——私はX(旧Twitter)でバズったバンクーバーご当地ヒーローを見て田﨑さんの存在を知ったのですが、動画も作っていらっしゃいますよね?

そうですね。本業はスタントなんですけど、動画編集やVFXも学びたいなと思っています。将来は監督もやりたいのでカメラも勉強しています。

——とても意欲的に活動されていますね。そのモチベーションはどこから来るものでしょうか?

僕はカナダでプロダクションを立ち上げ、アクション映画を作って日本からスキルのあるスタントパフォーマーを呼んでここでみんなでやりたいなって思っています。

——俳優を志してバンクーバーに来ても、他のアルバイトをしながらビザが降りるのを待っていらっしゃる方がたくさんいます。それを見据えて、ご自身で起業されたんですよね。

はい。僕が運良くここで成功して、自分のプロダクションから俳優さんにビザを出してあげられるとなった時に、日本の人達もみんな北米の方が待遇が良いのは気がついていますし、ハリウッド作品は自分のキャリアにも大きな影響があるし、頂く報酬も大きいじゃないですか。そうすると今まで海外での活動に興味がなかった人も興味を持つと思いますし、それ自体は良いと思います。でも、僕がやりたいのは、昔海外に挑戦したけど英語の問題やそれ以外の理由で日本に帰って活躍されている方達の2回目の海外挑戦っていうのを応援することで、もちろん僕より全然先輩で技術がとても高いので彼らから多くを学ぶことができますし、先輩方もやりたいことに挑戦できてお互いにレベルアップして良い作品を作ることです。

——そのビジョンってどのくらいから持ち始めたんですか?

それはカナダに来てからですね。ここでハリウッド作品に関わったんですけど、ハリウッドのスタントのレベルは決して突出しているわけではないんです。

——え?!そうなんですか?

僕はそう思います。スタントと言っても高いところから落ちるとかいろんな種類はありますが、その中でも俳優さんと戦ったりする「ファイト」のレベルは全く高くないです。
ただその反対に、ハリウッド作品は編集、ライティングやカメラのスキルがすごく高いので、編集やアングルが素晴らしい映像を作る大きな要素になっています。

語弊がないように、もちろんハリウッドにも素晴らしいプロの方がいらっしゃいますが、それは決してハリウッド全体で見たスタントパフォーマーのレベルが高いということではなく、日本のスタントの方が全体的にレベルが高いなと僕は感じました。そこで日本からスタントパフォーマーの方達を連れてきた方がより質の高い作品を作れるけど、ビザの壁があるからじゃあ自分が会社を作ってビザを出してあげられるようになればいいのかなっていうのがきっかけですね。

——お話が少し戻りますが、最初にアクション俳優かスタントパフォーマーかとお伺いした際にはっきりとスタントパフォーマーと仰っていましたが、そこには明確な線引きがあるんですね。

そうですね。

——私はすごくそこが興味深くて、スクリーンの中で役割を演じるということについては同じじゃないですか。でもスタントパフォーマーと俳優が違うというのはどの部分でしょうか?

例えばアクション俳優でもスタントパフォーマーでも良いんですけど、僕たちが暗黙の了解で感じているのは、アクション俳優さんはやはりアクションができる「俳優」、でも僕らスタントパフォーマーはアクションやスタントが本業なので、芝居よりもスクリーン上でかっこよく戦っているのが観客に伝わることで成立します。

——スタントパフォーマーの方はスクリーンの中で役者の代わりにアクションをすることがあるわけじゃないですか。その場合は、俳優さんを見ていらっしゃるのかそれとも監督さんの指示で演じていらっしゃるのか、どこを演技のポイントにしていらっしゃるのですか?

まず、スタントダブルっていうのが役者の代わりにスタントやアクションをすることです。その場合、大前提として体格が似ているからとかいろんな理由で選ばれて、現場に入る時はその俳優さんに成り切るんです。だから現場で俳優さんのことを考えたり観察するというよりは、その前にしっかりと自分に落とし込んで俳優さんに成りきってから現場に入ります。それも1つの役作りですよね。僕の先輩ですごい人とかは、体格も現場に入る前に調整して歩き方も似せて、現場に入ってからは細かい所作を調整しつつ、監督の指示や求められていること以上のものをそこで発揮できたら、スタントダブルとしての役割をちゃんと全うできたということなのかなと思います。

——スタントパフォーマーさんはアクションをするだけではなく、その俳優さんに成り切らないといけないんですね。

もちろんです。しかもその裏では俳優さんのケアをしないといけないですし、例えばアクションの練習をするときに「ここ大丈夫ですか?変えた方が良いですか?」などいろいろ相談して俳優さんが絶対的にやりやすいように作ったりとか、現場の安全性を守るために動きます。

——そういうのって現場で叩き込みで学ばれたんですか?

そうです。だからとにかく俳優さんに怪我をさせないで現場を終わらせることが僕らの使命ですね。

——今「僕ら」とおっしゃったのは、スタントパフォーマーさんのルールというかポリシーですか?

少なくとも日本ではそういう風にやっていて、日本では常に俳優さんと一緒にいてケアするという形でやっていましたね。

写真提供@田崎さん

——スタントパフォーマーさんは、映像だとお顔はあまり出さないですか?

最近は顔が出る機会も増えましたね。

——あ、そうなんですか!

スタントアクターと言ってスタントする役者さんも増えてきて、僕もハリウッドの作品だとそういう形でやらせていただきました。最近はそういう特別な枠があるんですよ。
映画でも、スタントが見せ場となればスタントパフォーマーが演じることも多いです。ただ、そのポジションって若い俳優の方だったり俳優の下積みをやっていてエキストラで頑張っている方達よりも長い時間スクリーンに映ったり注目されることがあるので、複雑な気持ちになります。アクションを求められているからこそ得られるチャンスではあるんですけどね。そんなわけで最近は顔が出てますね。昔はヤクザものが多くてヤクザをスタントパフォーマーがやって「オラー」って叫ぶだけだったのが、最近はもうちょっと活躍の場が展開されているように感じます。

——それは日本でですか?

日本もですし、北米はもっと展開されて顔が出ている人もそれなりにいらっしゃるんじゃないかな。

——例えばハリウッドの役者さんでスタントダブルを使っていると公表しない方もいらっしゃるんですかね?

真相は現場に入っていないとわからないですけど、スタントパフォーマーを本番で使っていなかったとしても現場には必ず彼らがいると思います。例えば、某大人気アクション映画で主演の方が高いビルの間を飛ぶっていうアクションがあったんですけど、それで彼は膝を折っているんですよ。でもあれって絶対彼だけでやったわけではないんです。スタントパフォーマーは絶対にリハーサルをしますし、セッティングもします。だからスタントを使っていないと言っていても現場にはチームとしてスタントが入っています。役者さんの安全確認のために僕たちがリハーサルで何回も飛ぶんです。

——そんな裏側のお話もあるんですね。ここまで「スタント」というワードがたくさん出てきたんですが、スタントってたくさん種類がありますよね?

そうですね。車のスタントや高いところから落ちるスタント、火だるまになるスタントもあります。でも最近主流なスタントっていうと高いところから落ちるか、ファイトのスタントのことを指している場合も多いかと思います。僕はどっちも得意ですけど、ファイトの方により特化しています。


素直さと継続は力なり

写真提供@田崎さん

——スタントパフォーマーとしてのキャリアはどのように始まったのですか?

スタントに興味を持ったきっかけですが、昔から仮面ライダーとかは好きだったんですよ。高校2年の時にアルバイトしたいなと思って、その選択肢の1つがヒーローショーでそこに応募しました。

——ご自身の中でもスタントやアクションに惹かれるものがあって、そこで思い切ってヒーローショーに挑戦してみようと思ったんでしょうか。

その時はあまり深くは考えていなかったんですが、死ぬ前に1回はアクションをやってみたいなという気持ちはありました。今思えば、高校生の時って自分が将来何をやりたいかを考える時期じゃないですか。僕ももしかしたらそういう時期だったのかもしれないです。学生の時はアーティストになりたいという夢があったりロボットを作ったりいろんなことをやってはみました。その一環でたまたまスタントに触れて、それが自分にハマったという感じですね。

——スタントがご自身の中でバチっとはまったのはどんな瞬間だったんですか?

最初の1年はヒーローショーだったんですよ。だから始めた当時は映像作品には全く関わっていなかったんですが、そのヒーローショーの現場にかっこいい先輩がいて、その人を超えたいなって思ったんですよ。その時はすでにアクロバットが得意だったこともあり、絶対超えてやる!って思ったのがここまで続ける最初のきっかけだったかもしれませんね。

——アクロバットは元々体操のご経験があったりしましたか?

いいえ、全く経験がなくてヒーローショーを始めたのと同じタイミングで練習を始めました。その時に感じたのは同世代の方達の中では自分が1番本気で取り組んでいたと思いますし、上手くなりたいという気持ちも強かったと思います。僕としてはスタントをやる!と決めたのでそれをやり遂げようと思って、毎日欠かさず練習をしてバク転も1週間でできるようにして自分でゴールと期限を設けてやってました

やるべきことを全部きちんと継続していたら、大きな仮面ライダーのショーがありX(旧Twitter)を中心にアクロバットと仮面ライダーのおかげで一気に認知度が上がったタイミングがありました。その時に撮影プロダクションの方から声をかけてもらったりもしましたし、僕をスカウトしてくださった社長さんとは今も良い関係を築かせていただいています。

——スタントパフォーマーは映画産業の中でも特に体が資本ですが、日々のケアは何をされているんですか?

僕が日本で所属していた事務所ではバク転を300回やってから練習に入るというルールがあり、しかも稽古場まで少し遠かったので片道2時間自転車を漕いで、バク転300回やって練習してまた自転車で帰るという生活をして鍛えられているので、体がすぐに壊れるということはないと思います。それでも先輩に教えてもらったことは素直に実践するタイプなので、若い時から柔軟しておいた方が良いと教わり、ストレッチなど些細なことですが継続的にやっています。

——8月から日本にお仕事でも戻られるそうですね。

はい。カナダの映画産業がストライキで動いていないこともあり、今年の8月から10月に一旦仕事で日本に帰りますが、日本で仕事をしながらスキルアップをしてそれをまたカナダに持って帰って来れたら良いかなと思います。

日本のスタントが世界で注目され始めている

——田﨑さんの殺陣も映像で拝見しましたが、すごく映えてかっこ良いですよね。殺陣のスキルを上げようと思ったらどんな修練をするんですか?

例えば日本刀を使った殺陣をやりたい時に、殺陣を上手くなりたいから伝統的な刀の扱い方であったり型を覚えようとするんです。型を覚えること自体はすごく良いことだと思います。ただ、型は型なのでそれをそのまま映像に持っていくと全然かっこよくないんですよ。

——迫力に欠けるイメージでしょうか

それもありますし、例えば日本刀を扱う海外作品の中で所作を担当するチームがいて「刀はこう持つべきだ、手はここにあるべきだ」と言われることもあるんですが、カメラで見るとかっこよくない場合もあります。しかも、その映像を通して「日本の殺陣」が間違って伝わり、それが正しいものとして広まってしまう可能性すらあるわけです。現場で人の目で見る分には良いかもしれないですが、カメラを通す以上アングルなどいろんな要素が総合してかっこいい見え方か、そうでない見え方になってしまう。それこそまさに型や所作は正しいかもしれないけど映像向けではない場合もあるということですね。

あとはこっちにきて「俺はマーシャルアーツを何十年やっていて、刀の使い方も知っている」という人に実際の殺陣やファイトをやらせてみると全然スタントとして上手じゃない。というのも彼らはそれぞれの格闘技でプロフェショナルかもしれないですけど、スタントは全く別です。スタントをやるときにそれぞれの格闘技の基礎知識や動きは大切です。でもスタントをやりたいんだったらそれらを踏まえた上で「スタントの練習」をしっかりやらないといけないと思います。

——格闘技で強いことと、強く見せることは別ということですね

それを最近いろんな人に伝えていて、カナダのスタントパフォーマーのレベルが高くないと僕が感じるのもそれが1つの原因ですね。「格闘技経験◯◯年=スタントの上手さ」では全くないんだけど、それを理解せずにやるから映像で映えないんです。

あと実は日本でやっているスタントのスタイルが世界でも注目を受けています。それは「るろうに剣心」という実写作品がNetflixで配信されたりワーナーブラザーズになって世界配信されたこともあり、るろうに剣心の殺陣のスタイルをやりたいっていうハリウッドの人たちが増えたんです。でも実際はできないんですよ。なぜならそういうスタントスタイルの練習を彼らがしてきていないからです。だからこそ日本のスタントのレベルが高いっていうのはみんなが認知していますし、僕にとっても良いタイミングなのかなと感じています。

写真提供@田崎さん

——日本のスタントが注目されているタイミングだからこそ、例えば大きな作品で間違ったものが伝わってしまうとそれが日本クオリティとして認知されてしまうわけですね。

そうです。質問の答えに戻りますけど、殺陣を上手くなりたい時に従来の型のみを練習してもそれイコール殺陣のスキルではないということです。スタントでさらに難しいのが、スタントの上にキャラクターをつけないといけないんです。例えばちょっと頭がおかしい役であったり、不気味な役っていう要素や立ち振る舞いをアクションに反映させていくんです。だから個人的にスタントパフォーマーっていうのはすごく面白いなって思いますし、奥が深いなと思います

——殺陣でオリジナルの型があってそれをスタントというフィルターを通して迫力があるように見せていると思うのですが、とにかく派手にやれば良いということでもなくリアリティも求められるものでしょうか?

最近はリアリティを求められています。最近はっていうのはおかしいですけど、殺陣でも以前は刀が当たらないよう自分から頭2個分離れた所を狙ったりしていたんですけど、今だと本当に避けなきゃ当たるっていう所まで攻めたりします。殴りも一緒ですね。だからスタントパフォーマー同士でやるとよく当たったりします。でも僕らはコントロールできるので怪我にはならずにコツンと当たる程度ですけどね。本当に危険そうに見えるシーンを作るために、当たりそうなところまで攻めてどんどんリアリティが追求されていますね。

——アクションで相手がいるシーンでは、当日リハーサルで初めて会うスタントの方もいらっしゃるかと思いますが、リアリティを求められて数センチ、数ミリずれると怪我の危険性もある現場で、阿吽の呼吸ですぐにできるっていうのはやはりみなさんプロとしてやっていらっしゃるということですね。

リハーサルが必ずあるのでその段階で、相手のスタントさんがどのくらいできるのかっていうのはわかりますよね。先輩で上手な方であればやっぱりすごいな、頑張らないとなと思いますし、後輩の方だったらこちらが調整することもあります。現場にいる人はプロで出来る人しかいないので怪我の心配はないんですけど、純粋に実力の差はあります。

——ここでおっしゃっていただいた「実力」とはどんなことでしょうか?

これも説明するのが難しいんですけど(笑)例えば殴り合いのシーンでジャブとストレートのワン・ツーでも人によって拳のスピードが違うんです。やっぱり熟練された人はそのスピードが早かったり、逆に若い人で拳は早く出せるんだけどフィルムで見ると腕の先だけ使っているように見えてしまうこともあります。スキルのある方は肩からしっかり打ち出して胸も使って体を捻って拳を出しているので、本当に殴っているように見えたりとかです。それはリアリティですよね。大きく振りかぶっているけど拳も早くて全身を使っているかどうかです。そういうのもテクニックですね。

——こういうお話を聞くと、次にアクション映画を見るときに注目する点が増えてより楽しむことができます!

上手くなりたいから練習する。上手くなると楽しくなってもっと練習したくなる。

田﨑さんがハリウッドを目指すきっかけになった大先輩と (写真提供@田﨑さん)

——バンクーバーで生徒さんにアクションを教えていらっしゃるということですが、彼らと関わる中で文化の違いや考え方の違いを感じた場面はありましたか?

僕はなるべく比べないようにしているんですけど、どうしてもハングリーさや焦りがないなと感じてしまう時はあります。例えば、練習を2時間やったらそれで満足してしまうんです。僕は自分が上手くなるためにもっと練習するし、教える側の人間が向上心を持って取り組んでいるんだから、あなたたちももっとやらないとって日本にいた時なら思っていましたね。ハングリーさが全くないわけではないんですが、もっとハングリーで良いんじゃないかなとは思う瞬間はあります。

——相手が変わろうとしない限り、無理矢理に変えることはできないですからね。

そうです。だから僕は元々2時間だったトレーニングを4時間にしちゃおうって思うんです。そうすれば彼らももっと練習できるなって。ただし、それと同時に彼らの体のケアもしないといけないですけどね。たまにイライラすることもあります(笑)生徒は一般の方ではなく、仕事としてスタントをしているしスタントが好きでやりたいと言っている人たちなので、上手くなりたいのであればもっと自分を追い込まないといけないのにそれでもやらないのは違うんじゃないかなと思っちゃいます。

——正直ですね(笑)

プロダクションを作りたいってお話したと思うんですけど、カナダでもハリウッド作品は撮影されていますが、やっぱり本場ハリウッドでやるって決めてアメリカでスタントをするときに「このスタントチームはクレイジーだな」って思わせるには、まだまだ僕らはそのレベルに達していないんですよ。だから一緒に練習してレベルを上げていかないといけないんです。そしてスタントは1人じゃ出来ないので、今は一緒に練習できる絶対的なパートナーを作り上げているところですね。

John Wickのスタエルスキ監督と (写真提供@田崎さん)

——日本の作品にもハリウッド作品にもスタントという形で実際に関わっていらっしゃる田﨑さんのお話を聞くまでは、ハリウッド作品はあらゆる全てにおいて世界でも突出して優れているのかなと思っていました。今まで正面からしか見ていなかった「ハリウッド作品」というものを違う角度から知ることができてとても面白いです。

もちろんアメリカは人口も多く、売り出し方も派手だし予算もたくさんあって華やかではありますが、スタントに関しては個人レベルでいうと日本で今やっているプロの方が100%上手いと僕は確信していますし、そういった人たちが英語を話せてビザを持ってこちらに来ればもっと良いものが作れる自信があります。

——ちなみに他のアジアのスタントってどうですか?

いや、中国はレベルがすごく高いですし韓国も最近はすごいです。だからスタントではアジアが本当に注目されているんですよ。アジア人の身体の作りも関係しているのかなと思っていて、僕らアジア人っていうのはしなやかな筋肉を持ち合わせているんですけど、ロシアやアメリカの方達っていうのはがっちりしているし、見た目も硬そうな筋肉であったり動きが遅いんです。昔は単純な殴りや派手さが求められていたのでそれでも全く問題なかったんですが、今は派手であっても繊細さや細やかな動きっていうのが求められています。細やかな動きができるということは、進化していろんなことができるのでオリジナリティが出せるということです。単純な動きしかできないと技術は伸びづらいですし、それもハリウッド作品のスタントレベルが伸び悩んでいる原因の1つじゃないかなと個人的には思います

——田﨑さんはプロダクションも立ち上げたわけですし、2、3年後に北米作品のスタントといえばで真っ先に名前が上がるようになっているかもしれないですね。

それは野望ですね。僕はこのまま行くとカナダ人の仕事が減ると思っています。僕は実力主義なので上手い人が仕事をとるべきだと思っています。人を怪我させたり故意に貶めようとするやり方はだめですけど、そうじゃなければ人間性よりも実力が評価されるべきだと思っています。カナダの方で上手い人がいればもちろん一緒にやりたいという気持ちも強いです。仲良しで友達だから作品に呼ぶっていうのではより良いものは作れないと思っているので、であれば日本から上手い人を呼んでより良い作品をたくさん作っていきたいです。

——日本のスタント界隈の皆さんはバンクーバーでハリウッド作品が多数撮影されているのをご存知ですか?

先輩方は知っていると思いますよ。若い方だと知らないかもしれないですけどね。ハリウッド作品がカナダ、ニュージーランド、イギリスで多く制作されているっていうのはあまり知られていないですよね。

——そういえば、カナダの前にドイツに行かれていたとのことですがそれもお仕事ですか?

そうです。ドイツはジョンウィック4の撮影に参加していました。その時に出会った先輩のおかげでカナダのハリウッド作品にも呼んでいただいてチャンスをいただいたって感じです。

——キャスティングディレクターはハリウッドの方だったんですか?

キャスティングディレクターはアメリカの方で、スタントコーディネーターとその下のアシスタントコーディネーターがカナダの人だったので、作品に参加できたんですね。ジョンウィックは世界的にも有名ですけど、そういう作品にもどんどん挑戦して関わっていきたいですね。


スタントパフォーマーは天職

写真提供@田﨑さん

——バンクーバーに住んでみていかがですか?

いやもう全く好きじゃないです(笑)だって何もないじゃないですか(笑)公園しかないですよ。

——そうですね。人によって意見が分かれるところかもしれませんが(笑)

都会じゃなくてもいいですし、僕は散歩したり自転車に乗るのも好きですが、例えばここで死ぬのは嫌だなって思うんですよね。別の国に行けばもっと良いものも見れるだろうなと思いますし、1年半バンクーバーにいてカナダに満足したのかもしれません。あとはカナダのスタントパフォーマーの友達がいるのと、今はストライキですが上手く行けば仕事もあるのでここに残っているという感じです。

——カナダの非公認戦隊キャラクターも作っていらっしゃいましたよね?それがきっかけでこうしてインタビューをオファーさせていただいたわけですが。

すごく気に入る作品になりました。こっちでヒーローショーもやりたいなと思っていて、日系イベントでそういうお話もいただいています。まだまだこれからお話をしないといけないですけど、上手くいけばそこで初お披露目になるんじゃないかなと思ってます。

——ヒーローショーという文化をカナダに紹介するということですね。

そうです。それをやってカナダのスタントパフォーマーたちにこれが日本のアクションだよっていうのを伝えたいですね。こっちの人はライブじゃなく映像専門なので、アクションでも編集で動きを早く見せたりするんです。それも良いことなんですけど、それに頼りすぎるんじゃなくてライブアクションで高いクオリティのものを見せたいですね。

——ライブアクションは子供はもちろん、大人が衝撃を受けるんじゃないですかね?

もちろんアクロバットもやりますし、かっこいいショーを作ろうと思っています。

——スタントで1番楽しい瞬間はどこですか?

スタントに関しては全部楽しいですね。アクションを作っているのも楽しいですし、コーディネーターになると演じるのは僕じゃないですけどそれも楽しいです。思い描いたシーンを作れた時も楽しいですし、僕がプレイヤーとして演技するのも楽しいです。

——天職ですね。

はい、向いていると思います。だって好きですから。全部好きだし嫌なことはないですね。

練習前のバク転300回トレーニングもその先にやりたい練習があるから継続してやってこれたんだと思います。僕は最近もっとアクションが好きになってきて、それで夜中に目が覚めたりします。やりたいこと、やってみたいことがたくさんあって、本当にアクションが大好きです。全部が楽しいから生きてるなーって実感します。こんなに質の良い練習もできたから、今日はもう満足だと思いながら1日を終えるのが僕の理想ですね。

——今すごく良い表情でお話してくださっていますね。読者の皆さんにもお見せしたいです。本日はありがとうございました。これからもいろんな作品で田﨑さんの活躍が見られることを楽しみにしています。

はい、ありがとうございました。

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