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ホラーなんて書けないよ! 2

1年ほど前に、↓のような記事を書いた。

自分、ホラー作家のようになっているけど、怖い話の書き方とか、ホントはよくわかんないんだよなぁ…と。

その後、怪談アンソロジーに混ぜていただく機会があって、またいろいろ考えることがあったので、あらためて書きだしてみる。

『怪談』というホラーのド直球なテーマに向き合ってみて思ったのは、怖い話を本職で書いている人たちって、「怖さそのものを凝視できる」人なんじゃないかな、と。
心霊スポットに出かけていって、ガタッと音が聞こえてきたときに、ビクつくよりも先に、暗闇の中にじっと目を凝らして見るタイプ、というか。
僕は、怖さから目をそらそうと、ボケはじめちゃうタイプなんだ。映画だと最初の犠牲者になっちゃうやつ。
そのへん、やっぱり自分の適性は、ホラー書きではないんだな…と思うなどした。

いちおうはじめは、そのへん、目を向けようとしてみたんだよね。
『怖い』と『怪談』から発想したものを書こうとしてみた。
でも、それだとうまくいかなかったのだ。
『怖い』から発想して書いたら、どうしても、「今晩のおかずはお父さんの生首よ(ニコニコ」みたいなものになっちゃう。たぶん、僕の中の『怖い』が生きた人間に対してあるもので、超自然的なものへ抱く怖さの皮膚感覚が、薄いからなんだろうと思う。
『怪談』から発想しても書いてみた。いろんな都市伝説を調べて、そこから膨らませて……これは、なんとなくそれっぽくはなるんだけども、どうにも借り物の衣装を着てる感じが拭えなくて、あんまり自分っぽくないなぁと。

悩んでいると、編集さんから、「800字だけど『小さな小説』をイメージしてストーリーを展開をしてみてください」というリクエストを頂いて、「なるほど、ストーリーでもいいのか」と思い。
『怖い』も『怪談』もいったん忘れて、ストーリーを書こうとして書いてみたら、OKとなった。

思ったのは2つ。

1つは、自分は「物語りたい」タイプで、『怖さ』という感情というか、質感というか、そのものに興味を持つタイプじゃないんだな、ということ。
ストーリーの中に怖さがあるのはわかるんだけど、怖さそのものに着眼するやり方をしてもうまくいかないっぽい。

もう1つは、一つの単語に捕らわれちゃうと、ダメなんだなということ。
小説の文章を書くときにも、形容詞や副詞には気をつけろ(それだけで、なにか意味のあることを書いている気になっちゃうから)という言葉があるが、おなじように、「怖い」とか「怪談」とか、わかるようなわからないような1ワードを起点に発想を広げてしまうと、自分の中の想像の幅が浅くなっていってしまう感じがあった。

そんなわけで、怪談集なんだけど、僕はなるべく「怖い」を意識せず書きました。ごめんなさい。とはいえ、僕以外の人がガチで「怖い」なので、僕はまろやかにする立ち位置で、ちょうどよかったのでは…と思ったりもする。

あと、意識しなかったからこそ、自分の根っこにある怖さが出てきたような気もしていて。
僕の中の怖さは、「メトロポリタン美術館」だったのかもと。

「みんなの歌」でやっていたこの歌が、僕は子供のころ怖かったのだよな。特に最後の「大好きな絵の中に 閉じこめられた」が。わかりやすく脅かすでもなく、スッと物語の中に取り残されてしまうあの感じ。
たぶん、そうした感覚が、自分の中の無意識の「怖い」だったのかもしれん……などと、見本誌で読み返してみて思ったりした。


そんなこんなで(?)、『てのひら怪談 見てはいけない』をよろしくお願いします。


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