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テツガクの小部屋4 エレア派

エレア派にはクセノパネス、パルメニデス、ゼノンの三者が属する。この学派の思想は、現象においてみられる生成、消滅、運動、空虚、数多性をすべて仮象として否定し、世界にはただ一者しか存在しないとした一元論であり、しかもその一者を不変不動とした絶対的な静止哲学である。

クセノパネスの思想のポイントは、ギリシア宗教の神人同形同性説に対する批判にある。ギリシア宗教における神はきわめて人間的であって、ホメロスやヘシオドスによって描かれた神々は、人間が可死であるのに対し神々は不死である点を除けば、その姿に関しても振る舞いに関しても人間とほとんど異ならないのであった。クセノパネスはホメロスによって描かれたこのような人間化された神観を痛烈に批判した。

クセノパネスの構想する神は、その姿においても思惟においても、死すべきもののいかなるものにも少しも似ていないのであって、一であるとともに全体である不動な一者なのであった。神は「全体として見、全体として聞き、全体として思惟する」のであって「労することなく、心の思いによってすべてのものを揺り動かす。」神は「常に同じところにとどまり、少しも動かない。ある時はここ、ある時はあそこというように、歩き回ることは彼にふさわしくない」という。

このようにクセノパネスは神の非擬人性、唯一性、全体性、静止性を主張し、神的存在を不変不動な一者として構想した。そこから彼も、一者を説いた思想家の一人として、エレア派に含めて扱われるのが哲学史の慣例となっているが、しかしその根拠はパルメニデスのように存在論的ではなく、ギリシア宗教の擬人観に対する懐疑から漠然と神を一なるものとして構想したにすぎない。クセノパネスのエレア派との関係は外面的である。

参考文献『西洋哲学史―理性の運命と可能性―』岡崎文明ほか 昭和堂
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棒線より下は私の気まぐれなコメントや、用語解説などです↓(不定期)

今回は少々退屈だ。といってはクセノパネス研究者に怒られるか。次々回は有名な「ゼノンのパラドックス」だ。乞うご期待。

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