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耳をすませば

社会復帰まで約1週間。
今日は、曇りで自転車日和。
自然に触れて少しでも不安を軽くしようと
井の頭公園へ向かう。
道中、三鷹の森ジブリ美術館を通り過ぎる。
「そういえば、今日の金曜ロードショーは
耳をすませばだったなぁ〜」

地元の田舎道「カントリーロード」であれば、
自転車に乗りながら頭に浮かんだ曲を大声で歌えていたが、東京に引っ越してきてからは...考えただけで恥ずかしくなってしまった。

井の頭公園に着き、アイスコーヒーを買いベンチに座る。
ひぐらしが歌っている。そのおかげでいつもよりぼーっとできた。

いつの間にか、先日お盆で帰省したことを思い出していた。
帰省中一番よく話したのはじいちゃんだった。
甲子園を一緒に見たり、麦茶を一緒に飲み、
他愛のない馬鹿話でずっと笑っていた。

しかし、帰省最終日じいちゃんの手は震えていた。
「しっかりしろよ!次の仕事しっかり頑張れよ!」
と肩を叩かれた。震えた手のせいで肩が揺れた。

じいちゃんはあの頃の僕のようにまた反抗されると感じたのかもしれない。
小さい頃からとても生意気に育った
僕をずっと厳しく叱ってくれていたのはじいちゃんだった。
しかし、僕にとっては昭和の頑固親父、
なんでわかってくれないんだといつも思っていた。
だから、反抗した。とり返したいけどとり返せない反抗を。

だたこの震えでわかった気がした。
頑固親父の高校球児並み、
それ以上のストレートの『頑張れ』を。

反抗なんてするわけなく気づけば「ありがとう」
と言っていた。

そんなことを思い出させてくれた、
ひぐらしの歌。
あの街に繋げてくれた気がする。

少しいい気分で、帰路につく。
大好きな町中華の店に入り、たくさん食べた。
家につきトイレに駆け込む。
耳をすませば、下の階から『カントリーロード〜♪』
結局、見逃してしまった。

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