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No.5 あーみん発作におそわれた午後

真夏の買い物はつらい。酷暑の中、ふらふらと100均のお店やドラッグストアを梯子し、その都度日傘をさしてはたたみ、たたんではさし、暑いところと涼しいところをたらい回した身体の温度はもちろんバグる。それに比例して頭もバグる。
そして最終向かう本丸、スーパーマーケット。そんな体で今晩の献立を考えながら大量に並べられたお野菜やらお肉お魚などと対峙するのは正直キツい。極彩色のお野菜を見ては目がチカチカし、肉のグラム数を見てもそう。このグラムなら○人分で……とか本当にシンプルに面倒くさいが、そこは貧相ながらも培ってきた経験に丸投げ。もう感覚だけで「これくらいだろ」をあてにして、頼りない心持ちで必要なものをカゴにいれていく。
そんな気力だけでカートを押していた私の目の前を、不意にキャップを目深にかぶった翁が横切る。私と同様にカートを押し、そのカゴの上には本日の特売品であった大根一本分を垂直に差すようにいれるのではなく、カゴのフチに真横になるように乗せていた。それを見た瞬間、だらけていた私の頭に自然と思い浮かんだのが「いや、大根そんな真横にしてフェンシングの剣ちゃうねんから」
→「え、なんかコレ、見覚えがある」
→「あ…!『こいつら100%伝説』で危脳丸がたくあんでフェンシングしてたやつ……!」
もう、終わりである。漫画のワンシーンがブワーーーーッとフラッシュバックし、危脳丸が姫の命をねらう間者をやっつけなければいけないのに手元に武器がない!大ピンチ!!そこで苦し紛れに胸元から出てきたのが、ひょんなことから知らぬ奥さまに頂いた、一本のたくあんである。仕方なくそれを剣がわりに攻撃するも、そこはたくあん。間者の刀でキレ~~~~にスパースパーと一枚一枚切られていく美味しそうなたくあん……。はい、もう終わり。
笑いの発作が突如として込み上げ、大根から必死に目をそらしても終わり。「ヒィ~~~」ってなってる危脳丸と突き出されたリアルな一本分のたくあんのディティールが脳を占拠している。笑うしかない。
(こういう時本当にマスク、ありがてえ~~)

そうして(?)発作にやられた体を引きずりながらスーパーを後にし、電車に乗り込み、帰路につこうとした時もまだ、ダメ。最寄り駅に降り立った安心感からかまたもや不意にフラッシュバックする一本のたくあん。マジで軽く吹き出してしまったオレ……「オレの体、どうなっちまったんだ?!」照れ隠しに早歩きで階段を下り、改札を出、信号待ちをしていたらようやっとひと息つけた。
久々に真っ向からやってきたあーみん発作を噛み締めていた。
いつもは何となくクセのあるあーみん節セリフが日常生活でふわりと思い出され、頭の中で静かにニヤッとする程度だったのに、今回はヤバかった。まさかこんないい歳こいても、あーみんの笑いのかたまりに攻撃され、フラフラになるとは……おそるべしあーみん、そして一生その十字架を背負って生きていくんだ……それがあー民のいきる道……いや、嬉しい…
とかくだらねえこと思いながら焼けるアスファルト踏みしめながら帰ったとさ。

しかし、マジな話「こいつら100%伝説」は死ぬまでバイブル。
何言ってるのか分からない方がほとんどでしょうが、是非とも岡田あーみん御大の「こいつら100%伝説」をこの機会に読んで欲しい。
あなたのその期待を裏切らぬ世界が待ち受けている事でしょう。そこから先はもう自己責任でお願いしたい。

たくあんフェンシングのエピソードは2巻に収録されています


それくらい、あーみんのワールドは中毒性が高い。一冊一冊がパンドラの匤のように。この私のように何のきっかけでほこりのかぶった記憶の引き出しから突然、笑いのトラウマが飛び出すやも分からないので……

小学生コミックあるある、表紙テープで貼りがち(あとは名前書きがち)


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