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第269回、コード将棋王 攻殻機動隊戦 Ver2.0


コード将棋王の第三局は「コード:攻殻機動隊」によって行われた。

コード:攻殻機動隊は、数あるコード将棋の中で、最もスタンダードな遊戯である。コード将棋が次世代の近未来将棋として、広く世間に認知をされるきっかけとなった物であり、日本では「攻殻機動将棋」という名称で、多くの人々に親しまれていた。

ベースとなっているのが、サイバーパンクアニメの金字塔と言われている、「攻殻機動隊」であるのは言うまでもなく、この攻殻機動将棋は、海外でも「サイバーパンク ショウギ」として、アニメ同様に広く認知をされていた。

「対局、始めっ!!」


双方共に、まずは様子見といわんばかりに、将棋の駒を進めていく。

このコード将棋に追加をされているルールは、二つあった。
一つは、自分の駒を透明化させる事ができる光学迷彩であり、もう一つは、相手の駒を自分の駒にする事ができる、ハッキングである。

これまでのコード将棋王を読んで頂けている方は、おわかりかと思われるが
コード:攻殻機動隊は、コード:マトリックスと、コード:ボンバーマンの両方の特徴を兼ね備えた、コード将棋なのである。

しかしこの将棋が多くの人に愛されるのは、それだけが理由ではなかった。
光学迷彩とハッキングが可能な駒数が、双方共場に出ている駒の二つのみと特殊能力をやり過ぎない、適度なゲームバランスにある。

遊戯としての完成度が非常に高く、多くのコード将棋が、絶えずバージョンアップを繰り返されているのに対して、この遊戯のコードは、Ver2.0以降、今日まで更新をさていない事にも、それを伺い知る事ができるのである。

「さてと、そろそろ本気を出して行くとするかの」

そう言うと対戦者は、自分の駒を二つ迷彩化させる。これにより盤面上から対戦者の駒が二つ、視認できなくなるのだった。
駒を二つ迷彩化させる事で、対戦者はハッキング能力を使用できなくなるが迷彩とハッキング能力をどのように使い分けるのか、この遊戯は二つの能力の使い方に、棋士の性格と戦術の取り方があらわれるのだ。

「爺さんは、光学迷彩派かい。確かに光学迷彩は、恐ろしい技だ。敵の駒がどこから狙って来るのかわからないのだからな。だが、そんな光学迷彩にも一つだけ欠点がある。それは駒を動かす時に、棋士が駒に触れる手の動きで駒の位置がわかってしまう事なんだ。一瞬の事だから殆どの場合まず致命傷になる事はないが、自分には瞬間記憶能力がある。駒を動かす度に、自分はその駒の位置を、どこまでも把握し続けられるんだぜ。
おっと手を使わずに、音声で駒の移動指示をしようとしても無駄だぜ。俺は言葉の指示でも、駒の在りかを把握し続けられるのだからな」

「ふっ、その事に何の策も考えておらぬワシだと思ったか?貴様の瞬間記憶能力への対応策は当然の事ながら考えておる。
この最新のゴーグル型の視覚誘導装置によってな」

そう言うと対戦者は、何やらサイバー感漂う怪しげなゴーグルを持ち出して目に装着するのだった。

「このゴーグルは、コード将棋協会から正式に認められている、視線を読み取って、駒の移動する方向を指示する事ができる、最新の装置なんじゃ。
それによりほれこの通り、手で駒を動かさずとも、言葉を口に出さずとも、自分の駒を、好きな方向に動かす事ができるのじゃ。
今ワシは、迷彩化した自分の駒を、視線誘導で動かした所だが、貴様には、その動きが全くわかるまい。駒の動きを予測しても無駄な事だぞ。駒は進めば進める程、その予測範囲が広がり、把握をしきれなくなるのだからな」

サイバーゴーグルを付けた事により、いかにもな様相となったその対戦者は高らかに笑うのだった。

「確かにこれでは、あんたの動かす迷彩化された駒の位置はわからない‥
ちくしょう、今迷彩化された駒は、どこにあるというんだっ!!」

挑戦者は、珍しく焦りの様子を見せていた。

「ほれほれ、ワシの駒は、今確実にお前の王将へと近づいておるのだぞ。
お前には、全くわからないだろうがな」

大きなゴーグルのせいでその表情はよく見えなかったが、対戦者の口元には明らかに笑みがこぼれ出ていた。

「王手っ!」


そう言って対戦者が高らかに、勝利の宣言をする。

「勝負、あったな」

勝ち誇った顔でそういう対戦者に向かって、挑戦者は静かに答えた。

「確かにな‥ だが爺さん、負けたのはあんたの方だぜ」

「貴様っ、何たわけた負け惜しみを言っておるのだっ!」

「爺さん、そのふざけたゴーグルを外して、自分の目で盤上をよく見てみるんだな」

対戦者がゴーグルを外して盤面を見ると、王将を取ったはずの場所には、歩駒が置かれていて、迷彩化した自分の駒はその歩を取っていたのだった。

「これは、一体‥」


「あんたのそのゴーグルの視覚情報をハッキングしたのさ。爺さん、あんたはハッキングをされたゴーグルで、ずっといもしない王将の場所を目指して自分の駒を進めていたんだ。
そして俺の駒は、ハッキングされたそのゴーグルでは見えなかっただろうが既にあんたの王将を詰んでいるんだぜ」

「そんなまさか‥ ワシが負けたというのか‥」

「電脳戦で俺に勝とうなんて百年早かったな。おっと失言だった。百年後に爺さんは、生きてはいないか」


ー以降12月25日20時 Ver2.0に改変ー

この勝負の勝敗には物言いがつき、長きに渡る審議の判定待ちとなった。

相手の視覚を奪うゴーグルのハッキング行為は、ルール違反か否か、それはコード将棋の想定の範囲に、含まれていなかったのである。

今回は、サイバーパンクな世界で、近未来的なゴーグルをして将棋をする老人で生成をしました。
あいかわらず将棋は、適当な生成をされていますけどね。

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