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春幻

 土曜日は、たくさん届いた苺の冷凍作業をした。つやつやと赤く、まるまるとした苺の粒は、新鮮でそのままぱくっと食べるのがいちばん美味しいに決まっているのだが、ひとりなのでいっぺんにたくさんは食べられない。大切にいただくために一定量は冷凍保存することにした。数パック分をきれいに水洗いして、ひとつひとつへたを取り、半分にカットして、小分けにして保存袋に入れて三温糖を加えよくまぶす。きっちり封をして冷凍庫に収める。冷凍庫が、以前届いたブルーベリーと苺でいっぱいになった。

 この週末は、夥しい花見客が出ているようなので、桜を誉めにいくのはやめておこうと思う。人混みは苦手だから。散り際に、誰も来ないようなところにひとりでこっそり愛でに行きたい。来月は、北上する予定なのでそちらでも機会があるかもしれない。今日はいつもどおり、お買い物がてら散歩をするだけだ。お野菜を買いにゆく。春きゃべつと新玉ねぎ、あと、独活が食べたいな。

 そういえば別宅の裏庭に大きく育ったミモザの樹があるのだが、まだ花が咲いているだろうか。そろそろ様子を見に行かなければ、と思いつつ後回しになっている。もちろんミモザだけではなく、家屋や敷地全体のチェックということなのだけど、今週こそ実行しよう。それとは別に、ベランダで薄緑の新芽を伸ばし始めたウンベラータの植え替えもあるし。

 今年も春が来たということなのだろう。季節は巡る。たとえ運命が断ち切られたとしても、なんらおかまいなく。

 藤田嗣治の歪な子どもの絵のメモ用紙に書いたお買い物リストをポケットに入れて、ひとりてくてくと歩いていたら、目の前に満開の桜の樹が現れた。私に何か語りかけてくるので、立ち止まってしばらく見上げていた。

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