直近の経済概観:ネット企業と半導体は沈み、オフラインは伸びた

2022年の10-12月決算が出そろった。業界を横断的に見た結果、2020年のコロナ禍でブーストがかかった企業は反動減で失速した一方、当時は抑えられていた消費がサプライチェーンの回復で盛り上がった格好である。

失速してきたAmazon
Amazonはコロナ禍で一気に売上を伸ばし、同時にリモートワークの浸透とDX化の恩恵を受けてAWSも快進撃が続いていた。しかし、22年4Qは北米でこそインフレ調整前で13%売上増となったものの、北米以外では売上減、AWSも過去最低の成長率(それでも20%の増収だが)となった。
2021年末のAmazonは、過去にない物流増に対応するために倉庫を手あたり次第確保していたことを考えると、1年で一気に状況が反転した印象がある。株価もこの1年あまりの間に半値となった。

出所:アマゾン決算資料

半導体は大幅減だが、年後半から持ち直すのか
ビッグテックやスマホメーカーに莫大な半導体を供給してきたメモリ、ロジックメーカーも状況が昨年から暗転した。メモリ半導体で世界トップのサムスン電子の同部門売上は、昨年から38%減である。
メモリ半導体はロジックと異なり、価格が在庫水準の影響を受けやすい。そのため市況が悪いと売上数量と価格低下のダブルパンチを食らう製品である。
アマゾンだけでなく、マイクロソフトやグーグルも従業員のリストラなど守りの体制を固めているため、年後半から持ち直すという業界の楽観には同意しにくい。

出所:サムスン決算資料

クルマは制約から解き放たれた
トヨタは2021年、半導体不足によって生産停止に追い込まれた。そのときたまっていた受注残を今消化しているところであり、販売台数は2桁増となった。一方で原材料費の増加が著しく、4-12月の累計純利益は18%減の1.9兆円となった。

出所:トヨタ決算資料

高級消費財も好調
Hermesやルイヴィトンのような世界的な高級ブランドも、コロナ禍の消費抑制や直近のインフレを跳ね返すかのような好調ぶりである。以下のようにHermesの売上は世界全体で増加した。財布のひもが硬い日本ですら、為替影響を除くと15.7%の増収であり、世界全体では23%増となっている。
インフレ下では、高級品はある種のインフレヘッジとしても利用されるが、そのことも増収を後押ししたのかもしれない。

出所:エルメス決算資料

今後の示唆
このほかにスーパーのウォルマートもアナリスト予想を上回る決算となったが、一方でホームセンターのホームデポは23年の売上を横ばいと予想する。確かに現在は悲観されていたほど悪い状況ではないものの、では好景気に戻るとは考えにくい。
なぜなら、①経済の体温である金利が未だ高いままであること、②コロナ禍で給付されていた現金や、日本のゼロゼロ融資のような放漫な金融政策のツケがきていることが理由だからである。
アメリカではコロナ禍の現金給付の結果、これまで貸出がなされなかったサブプライム層の信用スコアが上がったため、彼らに金融機関が喜んでカネを貸すようになった(当時アメリカの金利は低かった)。
しかしインフレでFRBが一気に金利を引き上げた結果、2007年のような焦げ付きが出始めている。2008年のような金融危機にはならないにしても、この放漫な金融政策と借金の返済がなされると、そのぶん消費に回るカネはもちろん減少するだろう。
となれば、たとえ今堅調であろうとも、経済は失速することになる。株価は楽観的な水準であるため、不況入りした際のダウンサイドは大きい。


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