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体験記 〜摂食障害の果てに〜(17)

膵臓の悪化

 毎日、一生懸命食べていましたが、次第に食べるのが苦しくなってきました。全く消化していないような感じで、気分が悪くなってきたのです。それでも(元気にならなくちゃ。)と、頑張って食べていたら、とうとう吐き気がして、一口も入らなくなってしまいました。気持ちと体の板挟みになって、涙が出てきました。看護師さんが心配してくれて、
「どうして泣くんですか? 少し休んで食べたらいいですよ。」
 と、励ましてくれました。でも、もう一口もお腹に入りません。お腹が痛いような、吐きそうな感じです。
「もう食べれません。ごめんなさい。」
 と、食事を下げてもらいました。
 夕飯の時間が近付いてくると憂鬱な気分になりました。そこへ主治医の先生がやってきて、
「膵臓の値が高くなっていて、このまま下がらなかったら命の危険があります。膵臓は、食べた物を消化する液を出すところで、これを治すには、休ませることが一番です。それ以外に方法はありません。なので、今日から絶食してもらいます。水一滴飲んではいけません。」
 と、言いました。
 とてもショックで、なんと言ったらいいか、わかりませんでした。何故、膵臓が悪くなったのだろう、と思いました。でも、これで無理して食べなくてよくなったので、救われた気がしました。
「食事の代わりに、高栄養の点滴をしますから、食べなくて大丈夫です。その点滴は普通の血管にはできないので、首から入れるようにします。」
 と、先生が言いました。腕などの細い血管では、ボロボロになるので、首の太い血管でなくてはいけないのだそうです。『首から点滴を入れる』なんて、聞いただけで、怖くて痛そうです。
 自分の腕を見ると、点滴のせいで手首から腕半分が黒く変色していました。採血跡が、無数の飛び火のようにボツボツの跡になっていました。酷い手になったなあ、とつくづく眺めました。
 看護師さんが、胃薬を持ってきました。水一滴飲んではダメなはずなのに、どうやって飲んだらいいのでしょう。看護師さんは、
「薬の分だけはいいですよ。」
 と、錠剤の薬を水で溶かし、スプーンで私の口に入れました。飲むのが嫌だったので、ガッカリです。いつも、口直しにブドウジュースを飲ませてもらうのですが、今日からは飲めません。私の一番の楽しみだったのに、とても辛かったです。すると、
「私、悪い看護師さんだから。これが最後」
 と、看護師さんが、ブドウジュースをごくわずかですが、飲ませてくれました。私はこの看護師さんのことを決して忘れないでしょう。

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