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宿題出すのやめてみた

この1年間、宿題を出すのをやめてみた。
具体的に何をやめたのか。
どのようにやめたのか。
代わりに何をしたのか。

きちんと言語化して記録に残すことで、自分の実践を整理したい。

はじめに

宿題について悩むことが多かった。
これまで、宿題についてどんなマインドだったか?
全員揃わない。書いてあるだけで、内容が伴わない。
教師はイライラ…
「〇〇君、宿題出してないよ。」と、ミニ先生が現れる。
これは、子どもの人間関係にも悪影響。

きちんと学習できる子は、宿題も出せる。
ちゃんと学習してほしい子は、宿題がでない。

そもそも、宿題って?本当に必要なの?
必要だという家庭のみに宿題を出せばよいのでは?

こんな思いが膨らみ、やめてみることにした。

やめたこと

①音読&読書


(旧)1か月に1枚、カードを配付。
   児童は毎日記録→カード提出
▲やっていないのに記録して提出。出すことが目的化していた。
(新)Teamsの音読を活用。10日に1回、課題を出す。
   結果(%)をカードに記録して提出。
〇音読をやったかどうかが確実に分かる。
 高得点のために、何度も音読をする子が増えた。

②漢字書取


(旧)毎日1ページ記入→提出
▲1ページ書いてうめることが目的化して、内容を覚えていない。
 学級の人数が増えると、業務量がただひたすら増える。
(新)完全廃止。
   週に1度、ミニ漢字テストを実施。事前にテスト範囲を知らせる。
〇ミニテストのために自分で考えて漢字の練習をするようになった。
 漢字ドリルで覚えることができる子は、書取帳はいらない。
 反対に、書取帳で書きたい子は自分の意思でしっかり練習する。


③計算プリント


(旧)ほぼ毎日、算数プリントを配付→提出→担任が丸付け→配付
▲算数が苦手な子は、難しいからという理由で白紙で提出。
 答えを配付すると、答えを書き写しただけで意味がない。
 業者のプリントだと費用がかかる。自作だと労力がかかる。
 やらない子、忘れる子のために紙を印刷すると無駄も多い。
(新)自作のプリントを作成。必要だと申し出る子のみに配付。 
   Teamsにも投稿(問題&解答)
   ⇒年度途中からこれも廃止。
   ミニテストを実施。プリントを参考に出題。
〇資源の節約。
 自分で解答が確認できるので、教師の丸付けの手間が減る。
 そもそも、選択制の課題のため、やる意思を持って学習する子が増えた。

やめる前に…

児童との面談、保護者にアンケートを実施しました。

子どもと保護者が家庭学習の在り方について向き合う

学校から課題が出なくても、自力で学習できる子もいます。
学校の力を借りたい子もいます。


家庭学習の記録

「ウチの子、本当に学習しているの?」と感じる家庭もあります。
私たちも家庭のことは分からないので、気にしています。
真面目な教師のマインドとして
全部把握していたい!
というものがあります。
分かりますが、ここは我慢です。
そこで使用するのが、家庭学習の記録シートです。

5週間分記録できます。1年間で7枚+長期休みという感じでした。

【使用方法】
①1週間分の家庭学習について記録する。(何を、どのくらいやったか)
②保護者に見せる(ノート、プリント、タブレット画面)
③できたこと、次の週にやることを記録
④保護者はコメントを記入
①~④を月曜日に提出。担任はカード確認後、印を押して返却。
(余裕があれば、コメントする。)

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ほら、宿題を止めると良いことばかり起こるでしょ。

子どもの思い

今まで言われたことをやっているだけなので、自分で量や方法を考えて学習するわくわく感があります。
習い事の関係もあり、自分で学習を調整するようになります。
…と想像していました。
さらに、子どもの思いに迫るため、2学期にアンケートを実施しました。

【宿題がなくなって、良かったと感じること】原文ママ
・自分で考えてやることで、やらされるという感じがなくなっていいと思いました。
・「これをやって」と縛られることがなくなって自分から進んで、自分にあってる量をできるようになりました!

・家庭学習で自分の気になった教科を学ぶことができ様々なことに興味を持つことができた。また、家庭学習になったことで普段の宿題の時間を中学の予習に回すことができ、とても勉強しやすくなった。気持的な面では、「明日までに宿題を終わらせなきゃ...」ということがなくなったため気分がすごく楽になった。
・課題が出されて、前はただこなしていただけと今の私は思っていたので自分で考えて自主的に家庭学習をすることで、今日はここまでと自分にあった取り組み方ができるところだ良かったと思います。成長したところは、ミニテストで前よりもいい点数が取れているので自分で考えてやっていたから自分に合っている学習の仕方なんだと思ったところです。
・自分にあった勉強の復習(難しく感じたところ)をじっくりと学ぶことができること。ミニテストに向けて自分のペースで学習できるところ。出された課題を早めに終わらせることを意識して自分に合う勉強ができること。算数プリントて復習が自分のペースでできること。

【困ったこと】
・たまに、締め切り直前に課題に気付き、焦る。(数人)
・なし!(その他大勢)

宿題がなくなって楽できる!という思考ではないようです。
こちらの意図がきちんと伝わっていました。

保護者の思い

私も小学生の娘がいるので、「宿題」は気になっています。
帰宅すると「今日の宿題はー?」と声を掛けてしまいます。
「まだ?」「早くやりなさい。」と言ってしまうこともあります。
マイナスの言葉かけ…できればやめたい。

家庭学習にシフトすることで、こんな言葉掛けからも解放されるはず。
家庭で親子が交わす会話、ポジティブなものが良いなと考えています。
子どもの目標や方法を尊重し、支えるような言葉掛けを期待しています。
また、家庭学習の記録に残された保護者の言葉が印象に残りました。
「~ができるようにがんばれ!」
「~について一緒に話をしました。」
等、肯定的に家庭学習に関わる言葉、とても嬉しく思いました。
中には、
「〇〇をやると書いているけど、やれていないです。」
「▲▲について、もう少しがんばってほしい。」
というピリ辛のコメントもあります。
しかし、これは家庭で子どもの学習を見ている保護者の方の貴重な言葉。
だからこそ説得力があります。
その言葉を尊重しつつ、「~さん、先生も応援しているよ。」とメッセージを残すことで、教師も後押しできます。

ミニテストについて、保護者にアンケートを実施しました。
これまで、漢字や計算は完璧に理解してほしいと願っていると勘違いしていました。
アンケートでは少し意外な結果が待っていました。
・(本人の実態に合わせて)8割程度理解できていれば良い。
・再テストは、本人が納得できる点を取れればよい。

あくまでも、子どもの実態、思いに寄り添いながらミニテストや再テストを実施してほしいと願っていることが分かりました。
※あまりにも厳しくやりすぎるとかえって逆効果だと思いました。
 子どもは学習が嫌いになり、結果が出ないことで保護者との関係も悪くなるかも…

教師の思い

まず、ノートチェックの時間が圧倒的に減ります。
提出されるノートがどんどん減ります。
事務的な処理をする時間が減るので、かなり気は楽になります。
その時間を次のように活用できます。
・授業の準備
・授業のノートの点検、評価
・委員会や実行委員等の補助
・相談、生徒指導など、子どもたちとの関わり
どれも、子どもに還元されるものです。素敵!
宿題を出さないなんて、楽をしていると思われたらどうしよう…
始めはこんなマインドになりますが、大丈夫です。
宿題を出さないことで、時間をより有効に活用できます。

また、この実践に協力してくれた先生方に思いを聞いてみました。
・保護者に理解を得ることが不安。
→続ければわかってくれます。
 何か課題を出してほしいという人がいたら、出せばよいです。
 (こんな人は誰もいなかったですが。)

・家庭学習にすることで、学習をしない子に対してどうすれば良いか。
→これは難しいところです。宿題にしたところで、その子はやるのか?という疑問もあります。短期的に考えたら、こちらから課題を出すことで基礎的なものは理解できるかもしれません。しかし、課題が出なくなったらそこで止まります。
むしろ、授業でも同様です。子どもたちは先生から出される課題を待っている状態に陥ります。これからの社会を考えると、自分で課題を見出し、解決方法も模索しながら試行錯誤する子を育てる方が重要です。
もちろん、何もアプローチしないわけではありません。ミニテストで揺さぶる。友達と競うようにチャレンジさせる。誰だって「できるようになりたい。」という気持ちを持っていますから、そこを引き出すようにしてあげる方がより有効だと考えています。

長期休みも

家庭学習という考え方は長期休みにも活用しました。
これまで、夏休みは「夏休みの友」のような練習帳を一律で購入して配付していました。(私の地域だけ?)
書き込み、丸付け、直しをして、2学期に提出。
考えなくても良いので、楽だった。
しかし、これでは子どもの思考は止まったまま。

そこで、次のような実践をしました。
・練習帳の購入は自由。購入しなくても良い
(3社、5冊の冊子を提示して、希望者のみ購入。)
・練習帳が届き次第配付(夏休み前にやっても良い)
・2学期に練習帳を提出するかどうかも自由。
(そもそも夏休み中に終わらせなくても良い。)

封筒の作成、配付、集金のまとめ等、事務的な手続きは少し手間でしたが、効果もありました。
なんと、一番ページ数が多い冊子が一番たくさん購入されました。
保護者と相談はしましたが、子どもが自分でこれを選びました。
だからこそ、夏休みの学習も高い意欲で臨むことができたようです。
また、何も購入しない子が1割程度いました。
その子たちは、自分でドリルを購入したり、ノートで学習したり…。
これもOK。

冬休みも同様にしました。

長期休み明け、こちらの事務的な処理も簡単になります。
「〇〇君、~をやってないよ。提出しなさい!」
こんな指摘はなくなります。
だからこそ、長期休み明けでも子どもが学校に行きたくない…みたいなことが減ったと思います。

家庭学習の記録(リアル)

学習した内容、成果をきちんと書けています。質が高い!


保護者のコメント、ありがたいです。


時には保護者から厳しめのコメントもありました。


1年間の振り返り・成果

成果

子どもの意識の変化
宿題を与えられるわけではないので、自分で考えて学習するようになりました。その時に合う方法や内容で学習していました。また、家庭学習で意識づけた「自分で考えてやる」というものが、別のところにも見られるようになりました。学級や学年の活動を進んで企画して、レクや掃除をする姿。委員会活動で新しい企画を提案して、全校の活動につなげる姿。

教師の意識の変化
授業でも、子どもたちの主体性を意識した授業づくりにさらに力を入れるようになりました。子どもが課題意識を持てるようにする、中期的な視点で取り組むことができる課題を選択できるようになりました。また、進んで学ぶ子どもたちを信じて、学習に苦手意識のある子への支援に力を入れることができた授業も多くありました。

教師の負担感減
これはすごく大きかったです。休み時間や放課後に~の丸付けを…ということがなくなります。その分、授業の準備や評価、子どもたちとの関わりの時間に費やすことができました。肉体的にも、精神的にも負担が減りました。

子どもとの良好な関係
~をやりなさい。~ができていないでしょ。このような言葉を掛けることが(ほとんど)ありませんでした。むしろ、「~はどうする?」「〇君は、どんな目標?どうなりたい?」「どんな方法だとできるようになるか考えよう。」と肯定的な声掛けができるようになります。
学習を原因として、教師と子どもの関係が悪化するという事態も、これでなくなるのではないかなと感じました。

課題

単独プレーにならないようにしなければならない
学校という組織で働く中の1人、1学級で実践しているため、周囲との協調性は意識する必要があると思います。これは、決して同調バイアスによってなんでも我慢するべきという意味ではなく、より高い効果を発揮するために、協調すべきであるという意味だと捉えています。
私の学年は、今年度2学級でした。この実践は、隣の学級でも実践してもらいました。事前に内容、方法、マインドを説明し、同じペースで進めました。また、管理職にも説明をして、承認をもらいました。
単独プレーに走ると、途中でうまくいかないことがあった時、助けてもらえないことがあります。良い意味での協調性が大切だと考えています。

個人差・家庭差を乗り越える
この実践になかなか乗ってこれない子もいます。毎週提出するはずの家庭学習の記録を提出できない、保護者からのコメントがいつもない…など。
正直、この子たちは宿題だったとしても、やってこれないようにも感じます。しかし、授業では支援を必要としているはずです。
この子たちをいかに支援していくか。具体的には、
・基礎的な内容の定着
・課題意識、目的意識を高める
・課題をやり遂げる粘り強さ
今のところ、1年では難しいという結論です。低学年のころから、段階的に繰り返し指導すること、授業も合わせて「子どもの主体性」を生かした実践を続けることがポイントになるのではないかと思います。
また、書籍を出版してたり、SNSの発信が多いスーパーティーチャーたちなら、1年で子どもを変化させる実践ができるのだろうなと、心のどこかで思っている自分もいます…

次年度、どうする?

ブラッシュアップした次年度以降に実践できてこそ、本物だと思います。どんな点を改善するべきか。

★他学年との連携
1年生からこの実践はなかなか難しい。段階的にやるべきです。他学年と連携を図り、家庭学習の系統性を意識して学校全体で実践することで、1つずつの質がさらに高まるはずです。
★ミニテストの改善
この実践に乗ってこれない子の中には、学習の効果を実感できない子もいるはずです。やったのにできるようになっていない、テストで思っていた点数を取れない。これでは次の学習の意欲につながりません。
今回は、漢字10問、計算5問のミニテストで実践しました。少し変更して、より狭い範囲で漢字3~5問、計算2、3問などと問題数を減らすことで、よりスモールステップでできると良いのではと考えています。


様々な視点で考えながら、自分なりには今のベストだと思っていたこの実践。さらに良い実践にするために、言語化して出力しました。もっと良い実践にするために、みなさんの家庭学習の実践を聞いてみたいですし、この実践のブラッシュアップポイントがあれば教えていただきたいです。コメント?twitterのDM等、お待ちしています。


【「えがお」を大切に  焦らず、誠実に、前向きに】

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