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遺産相続1 母との突然の別れ 


発端は
ある日母が入院したと連絡が来た
ところから始まった。

80代の母は年相応には元気で自分の事は
全て自分で出来るし、バスに乗って
町まで買い物に行くこともしばしば。
穏やかな人懐こい性格で
総して可愛いおばあちゃん
と言われるような人だ。

そんな母がベッドから落ちて背中を骨折
したという。病気ではなかったことに
少しだけ安堵した私は、今はまだひどく
痛がっているという姉に、一週間後に
面会に行くことを伝えた。

そして一週間後。
骨折だから食事制限はないよね。
たまにはゆっくりお喋りでもしよう。
好物の高級みかんを買って病院に向かった。

ところが

そこで私が見たものは
ベッドの上で苦しみのたうち回る
母の姿だった。

えっ!
えっ!
なにこれ? どうゆうこと?

慌てて医者を呼んだ。
骨折なのに
何故こんなことになっているんですか?
詰め寄る私に医者は、一瞬骨折?という
疑問符を浮かべ、あ~そうか
みたいなノリで

昨日から腸閉塞になっててずっとこんな
状態なんですよ

って、いやいや今にも死にそうなくらい
苦しんでるじゃないですか。このままで
大丈夫なんですか?

私の剣幕に押されてやっと現状を理解したような医者は、ようやくあれこれと処置を施し
何とか母と意思の疎通が出来るようには
なった。
姉に電話してこの状態を説明するも腸閉塞
なんて聞いてない、と言うばかり。

全く状況が掴めないまま、次の日も病院へ行き
改めて医者から診断と治療法についての
説明を受けた。

そもそも此処はリハビリが専門の病院で
専門外の患者をもて余しているのがヒシヒシと
伝わって来た。

その日のうちに有名な総合病院へ
の転院をお願いした。

総合病院へ移ったところで状態は全く改善
せず、そこでも私は一人で医師から
説明を受けた。

腸閉塞で亡くなることはまぁ無いと思うから
大丈夫でしょう

若い医師の言葉は何とも曖昧で不安を
覚えた。
覚えたのに…
いつもなら
もっと自分の直感を信じたのに…

私は
薬が効いて眠るように横たわる母に
また明日来るからね、と声をかけ
帰路についてしまった。

母は
その数時間後に亡くなった。

悲しみは日増しに大きくなり
納得のいかないモヤモヤした感情が
怒りにも似た重い鉛のような感情が

私の心を覆い尽くしていった。


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