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ギタリストに10バンドも必要?MXR M108S ten band eqレビュー

EQ、イコライザというのは、使い方が非常に多様なため、難しいエフェクターです。
EQは歪ませたり、遅らせたりと、分かりやすく音色を変化させるためのものではないので、その点も分かりにくさを加速させています。

しかし、実際はその使い方の多様さゆえに持っておいた方が良いエフェクターの筆頭だと思ったりしています。

その使い方とは、
①ほかの楽器(特に主役となるボーカル)との帯域かぶりを避ける。
②ハウリングする周波数帯を見つけ、そこを下げることでハウリング回避。
③ローをカットすることで音抜けをよくする
あたりがよく聞く使い方ですね。

こういった使い方をするEQですが、やはり有名なのはMXR M108S ten band eqでしょう。
しかし、ギターには6バンド(MXR M109S six band eq)で十分、10バンドも必要ない、という声もあります。

その辺も検証してカバーしながら、新たな使い方を考えてみたいと思います。

ギタリストの目線からのレビューなので、ベースについては書いていません。


EQとしての素性

ともあれ、まずはEQとしての素性から。

MXR M108S ten band eqといえば、EQの大定番、あの黒いやつM108の後継機種です。

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これ。

M108との違いは、
①ノイズリダクションが付いた
②トゥルーバイパス化
③アルミシャーシによる軽量化

の3つ。
M108で言われがちだったノイズが多い、バイパス時の音にクセがある、重い、というみっつの弱点を克服しようとした形でしょう。

操作できる周波数は、
31.25Hz(超低音、ギターやキャビのハコ鳴り感)
62.5Hz(まぁ超低音、ベースの低い音のあたり)
125Hz(ギターの低音、ブリッジミュートしたときのズンズン感)
250Hz(ギターの低音、5,6弦の音程感がわりとこのあたり)
500Hz(ギターのいわゆるローミッド、ジャズギタリストが上げがち)
1kHz(ギターのいわゆるミッド、おいしいミッドといわれがち)
2kHz(ギターのいわゆるハイミッド、ジャキジャキ感)
4kHz(ギターのいわゆる高音、上げるとシャッキリしてくる)
8kHz(ギターのいわゆるプレゼンス、キラキラ感だけど上げすぎ注意)
16kHz(超高音、ピックのアタック時のノイズとかこの辺)
です。
カッコ内は私の印象です。

以上のつまみは±12dB操作できます。
BOSSのGE-7は±15dBなので、少しだけ狭めですが、それでも十分で、マックスまで使えば大きく音色が変化します。

以上に加えてゲインとレベルがあります。
これらをすべてフラット、中央に合わせるとほとんどバイパス時から音が変化しません。
かなり素直なEQといえるでしょう。
この辺は、18V駆動でヘッドルームが大きい、という点も効いているのかもしれません。

ちなみに、18V駆動とはいえゲインとボリュームを上げればクリップしますが、クリップさせてもあまりいい音ではありませんでした。
回路にも悪そうなのでやらないほうがいいと思います。

やはりノイズリダクションが効いているためか、ノイズが気になったりすることはありません。
ただし、ことさらにノイズリダクションを操作できるわけじゃないので、なにがどう効いているのかはさっぱり分かりません。


MXR ten band eqの難点

まず、ぼちぼちデカイこと。
とはいえ、10バンドなら大体こんなもんです。

18V駆動・電池不可なので、ボードに入れるときに注意が必要です。
18V対応のサプライは増えているので、そんなに問題にもならない気がしますが。
もちろん、18Vアダプター付きです。
が、サウンドハウスは並行輸入らしく、クラシックプロのアダプターが付いていました。
恐らく、並行輸入の純正品だとPSEマークがついていないのでしょう。


ギタリストに10バンドは必要なのか?

結論からいえば、ふつうは10バンドも必要ありません。

まず、アンプの側からみれば、31.25Hzや16kHzは、多く場合ギター用スピーカーの特性として削れてしまっています。
また、62.5Hzもコンボアンプとかだとがっつり削れているケースもあります。
もちろん、全く再生されないわけではないですが、再生力はかなり乏しくなっています。

ギターの側からみれば、6弦解放の基音は82.407Hzなので、31.25Hz、62.5Hzは正直きれいな弦振動として表れてくるものではありません。
この辺の周波数は、いわゆるゴーストノート的なサウンドで出力される帯域です。

つまり、普通にアンプにつなぎ、普通に演奏している限り、エレキギターに10バンドも必要ありません。
100Hz~3.2kHzのM109S six band eqとか、BOSS GE-7で十分です。


誰に必要なのか?

もちろん、それでも必要なギタリストはいるかと思います。

①ジャズやブルース、レアグルーヴ的なファンクなどでハコもの、特にフルアコを使う人。
というのも、31.25Hzはいわばハコが鳴っている音になります。
そのため、フルアコなどのハコ鳴りの出方を調整することができます。

特にジャズなんかでフルアコを使う方だと、アコギ用のアンプを使用される方も少なくないかと思います。
アコギ用のアンプはエレキ用に比べてワイドレンジなため、31.25Hzや16kHzを動かした際の音の変化も分かりやすく表れてきます。

また、レアグルーヴ系のファンクでカッティングするなら、16kHzを上げるといい感じにチープなサウンドになって面白いと思います。

②ファンク・ロック系で、歪ませたうえでカッティングする人。
というのも、カッティングした場合、普通に音を出すよりよほどワイドレンジです。
特に歪ませた場合、倍音も増加しています。

そのため、31.25Hzなど超低音を操作するとカッティングの迫力が、16kHzを操作するとカッティングのギラっとしたサウンドが結構変わってきます。

③ループパフォーマンスをする人、特に弦を叩いてパーカッション的な音を出す人。
よくYOUTUBEみてると、パーカッション的な音とバッキングの音が周波数かぶりを起こして団子になってる人がよくいます。
これは特に、エレキギターのおいしい所をプッシュするような設定にすると、全体のレンジが狭まって団子になりがちです。
なので、パーカッション・サウンドを出す際に、EQをかけて周波数かぶりを避ける工夫をすべきだと思います。
その時、パーカッション的なサウンドを出すときは31.25Hzはがっつり上げておくと、キック・サウンドを出すときの迫力が大きく変わってきます。

以上のすべてにおいてエレキ用のアンプを使う場合、超低音、超高音の再生力はかなり低いので、ガッツり12dB使って上げ下げしたほうが良いでしょう。
というか、エレキ用アンプを使うなら-12dBのオフ、フラット、+12dBのオン、の3つだと考えてちょうどよいくらいだと思います。

アンプ使わずにダイレクトインしてれば、ローエンド・ハイエンドもがっつり使えるので、新たな地平が見える、と思うのですが。


さらなる使い方

さて、ここからさらなる使い方を考えてみましょう。
(以下はあまり10バンドである必要はありません。)

良く聞く使い方として私が挙げたのを、改めて見てみましょう。
①ほかの楽器(特に主役となるボーカル)との帯域かぶりを避ける。
②ハウリングする周波数帯を見つけ、そこを下げることでハウリング回避。
③ローをカットすることで音抜けをよくする
非常にDTM的で、消極的だとは思いませんか。

せっかくです。
エフェクターボードに仕込むんだから、もっと積極的なエフェクトとして使いましょう。


①ローファイ化
よくイントロで聴くあれを再現することができます。
500Hz~2kHzあたりだけをブーストし、後はなだらかな坂になるように、しかし極端に下げると、ローファイなギターになります。
また、lofi hiphop的な音を考えた時、そこにゆったりしたサイン波のバイアス・トレモロをかけておくと、素晴らしいサウンドです。
その後段でシマーリバーブをかけたりすると、ローファイ・ギターが天に飛び立ちます。

②歪みの音を倍に増やす。
歪みの音を増やしたいとき、歪みを購入する前に、EQを持ってるなら組み合わせてみましょう。
この際、ポイントはかなり極端な設定にすること。
ビビらずにがっつり上げ下げしましょう。
例えば、極端なミッドブースト気味にしておく、ベースブースト気味にしておく、などなど……。
そうすると、今持っている歪みの数×EQのオンオフで歪みの種類が2倍に増えます。


おわりに

以上、お分かりいただけたかと思いますが、10バンドも必要ないけれど、やっぱりあると色々できて便利。
それがMXR M108S ten band eqです。

たぶん、EQ欲しがっている人は、なにがしかの使い道がまずあって、それからEQを欲しているわけでしょうから、あんまりレビューしてもあれかもしれないんですがね……。





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